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村田 英幸
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閲覧数順 2017年02月26日更新

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事業承継と任意後見制度

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第2 任意後見制度

1 任意後見制度の概要

 任意後見とは、本人の判断能力があるうちに、精神上の障害により事理弁識能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約(任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものに限ります。)を締結するものです(任意後見契約に関する法律2条1号参照)。

 任意後見契約は、一定様式の公正証書で作成することが求められ(任意後見契約に関する法律3条)、任意後見契約が成立した場合には、その旨が登記されます(後見登記等に関する法律5条)。

 また、任意後見契約は、代理人をコントロールすべき本人の事理弁識能力が衰えた段階で機能するものであることから、本人に代わって代理人をコントロールする主体として、後見監督人の選任の申立てが必要になります(任意後見契約に関する法律4条)。

 任意後見の効力が開始するのは、任意後見契約の後、任意後見監督人の選任手続の審判がされてからです。手続については、家事事件手続法217条~225条に規定されています。

2 任意後見制度利用の費用

 費用についてですが、任意後見契約作成時に、2万円程度の公正証書作成費用、任意後見監督人選任申立て時に、1万円程度の裁判所実費、鑑定を要する場合には判断能力を鑑定するための鑑定費用5~10万円がかかります。

なお、事前に申立ての際に添付する医師の診断書等の費用(地域や病院によって異なりますが、東京の場合は3~10万円程度です。)は別途、用意しておかなければなりません。

 また、任意後見契約人については、任意後見契約で報酬を定めた場合にはその報酬費用がかかります。

 任意後見監督人には、裁判所への申立てにより、家庭裁判所の定める報酬を受領する権利が与えられています(任意後見契約に関する法律7条4項)。

 

3 法定後見制度との関係

 任意後見制度は、本人の判断能力が十分な場合に契約が締結されることを想定していますが、任意後見契約を締結する時点で本人が行為能力を有することが要件となっているわけではありません。

 したがって、補助や補佐の対象となる者でも、任意後見契約を締結することは可能です。

 また、制限行為能力者の法定代理人が本人のために任意後見契約を締結することも可能です。

 任意後見制度と法定後見制度とでは、任意後見制度が優先されます。すなわち、任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができます(任意後見契約に関する法律10条1項)

 

第3 事業承継における後見制度の活用方法

現経営者は、判断能力が十分であるうちに、後継者と考えている者を受任者として任意後見契約を締結し、自身が考える事業承継方法を伝えておくということが考えられます。そうしておけば、万が一、自分が事業承継対策を行うことができなくなったとしても、後継者によって事業承継が行われるからです。

なお、会社法上の株主総会での議決権行使のような事項も、私見によれば、任意後見契約の対象となると考えられます。なぜなら、議決権行使のような共益権の行使の場合であっても財産権の行使といえるからです。したがって、本人の判断能力が低下してしまったとしても、任意後見契約の対象として定めておけば、議決権行使を任意後見人が行うことで、会社の支配権を盤石とすることができます。

 また、任意後見制度の利用は早期に検討すべきでしょう。なぜなら、判断能力が低下してしまった段階になってしまうと、多くの場合、法定後見制度しか利用できなくなり、強大な権限を有する後見人の地位をめぐって、親族間で争いになる可能性が大きいためです。

 また、法定後見制度とは違い、任意後見制度であれば、例えば、長男との間では財産管理を委任する任意後見契約を、長女との間では療養看護を委任する任意後見契約をそれぞれ締結することが可能となります。そのため、経営者の意思ができる限り尊重されるといえます。

 後継者と考えている者を任意後見人にしなくとも、経営者が信頼する第三者を任意後見人にして、事業承継を遂行してもらうことも可能です。

 その際には、第三者の権限濫用防止のため、財産管理等契約での代理権を一定範囲に制限する等、その内容を工夫する必要もあるでしょう。代理権の範囲は、登記事項の一つとされています(後見登記等に関する法律5条4号)。

 注意すべき点としては、任意後見制度は本人の自己決定権の尊重という観点から、任意後見人に同意権・取消権が与えられていませんから、任意後見契約の効力が発生した後においても、本人のした行為は取り消すことができません。したがって、本人が誤って財産処分をしてしまった場合、それを後に任意後見人が取り消すことはできませんから、そのような危険がある場合には、法定後見制度の利用も検討する必要があります。

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