第6 寄与分 - 家事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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閲覧数順 2017年08月17日更新

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第6 寄与分

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相続

第6 寄与分

1 寄与分概説

 寄与分とは、被相続人の財産の維持または形成に特別の寄与・貢献をした相続人がいる場合に、その相続人に対し、法定相続分に寄与分を加えた財産の取得を認める制度です(民法904条の2)。

 【事例】において、後継者とされた長男丙が実家に戻り家業を手伝って、会社の発展に大きく貢献したものの、父親と特に雇用契約を締結しておらず、報酬をこれといって受けとっていなかった場合、遺産分割の際、家業をなんら手伝わなかった次男丁と同じ相続分になってしまうことは不公平といえます。

 そこで、相続開始時において被相続人が有している遺産から寄与分を控除したものを相続財産とみなし(みなし相続財産といいます。)、これに各相続人の法定相続分を乗じて、寄与分を加算したものを寄与者の具体的相続分とすることができます。

 これを計算式にすると、以下のようになります。

具体的相続分額=(「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」-「寄与分」)×各相続人の法定相続分+「寄与分」

 

 

 

 

【事例】における後継者とされた長男丙が行った、被相続人甲の死亡前の家業の手伝いが寄与分と評価されれば、この寄与分を引いたものを相続財産とみなし、これに各相続人の法定相続分を乗じ、そこから寄与分を加えることで、長男丙の具体的相続分が算出されることになります。

【事例】における「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」を3億円とし、長男丙の寄与分が2千万円とした場合、長男丙の具体的相続分額は以下のようになります。

具体的相続分額=(3億円-2千万円)×1/2×1/2+2千万円

       =9千万円

 

 

 

 

2 寄与分の確定方法

 寄与分は、まず共同相続人の協議でこれを定める(民法904条2第1項)とされ、協議が整わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所が審判で寄与分を定めることになります(民法904条2第2項)。

 したがって、後継者にとって必ず寄与分が認められるわけではありません。そこで、事業承継の対策をとらなかった場合の最後の手段として考えるべきでしょう。

 なお、寄与分の算定評価の基準時についても裁判例の大多数が相続開始時説によっており、相続開始時説が通説です(北野俊光『遺留分の算定』判例タイムズ1100号379頁)。

 ただし、寄与分は遺産分割の前提問題となるため、寄与分を主張できるのは遺産分割の協議成立または審判確定までという時期的制限があります(家事事件手続法192条参照)。

 

3 寄与分の制限

 寄与分が認定される場合、寄与分は、被相続人が相続開始時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(民法904条の2第3項)とされているだけで、これ以外に上限を制約する規定はありません。

 また、寄与分は遺留分減殺請求の対象になりません。その理由は、減殺請求の対象である遺贈または贈与には当たらないこと、遺留分減殺請求の制度が被相続人の財産処分に対する制限にすぎず、共同相続人間の公平を図ることを目的とした寄与分の制度とは別個のものと解されるためです。

もっとも、寄与分が遺留分を侵害しても違法にはならないというにすぎず、かかる遺留分を侵害するような寄与分額を定めることは多くの場合、妥当な処理とはいえないと思われます。寄与分の認定に当たり、他の相続人の遺留分侵害の有無についても考慮すべきであるとする裁判例(東京高決平成3・12・24判タ794号215頁)があります。

 なお、寄与分は共同相続人間の協議により、あるいは家庭裁判所の審判により定められるものでありますから、遺留分減殺請求訴訟において、寄与分があることを抗弁として主張することはできません(東京高判平成3・7・30家裁月報43巻10号29頁)。

 

4 寄与行為の類型と寄与分の算定方法(北野俊光『遺留分の算定』判例

タイムズ1100号379頁)

 寄与行為には、条文上、次のような類型があり、寄与分の算定は類型に応じた計算式により行われます。実際の事例では、複数の類型にまたがる複合型もあります。

(1)「被相続人の事業に関する労務の提供」

 被相続人の事業に無報酬またはこれに近い状態で従事した場合です。

 被相続人の事業とは、一般に農業、林業、漁業、各種製造加工業、商業等個人営業がその典型とされていますが、被相続人が経営していた会社に寄与した場合であっても被相続人と会社が経済的に密接な関係がある場合には、被相続人の事業に対する寄与と認められます(高松高決平成8・10・4家裁月報49巻8号853頁)。

<家事従事型・従業員型の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=寄与者の受けるべき相続開始時の年間給与額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

 

 

 

<共同経営型の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=(通常得べかりし報酬+利益配分)-現実に得た給付

 

 

(2)「被相続人の事業に関する財産上の給付」

 被相続人の事業に対して、資金や不動産を無償で提供する場合等です。

<不動産の贈与の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=相続開始時の不動産価額×※裁量的割合

 

 

<金銭の贈与の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=贈与当時の金額×貨幣価値変動率×※裁量的割合

 

 

(3)「被相続人に対する療養看護」

 実際に相続人が療養看護する態様と第三者に療養看護させて相続人がその費用を負担する態様とがあります。

<相続人が療養看護をした場合の寄与分の計算式>

寄与分額=介護報酬基準額×療養看護日数×※裁量的割合

 

 

<第三者に療養看護させた場合の寄与分の計算式>

寄与分額=負担費用額

 

 

(4)「その他の方法」

 他に相続人兼扶養義務者がいるのに、特定の相続人のみが被相続人の扶養をした場合には、扶養義務の分担額を超えた部分につき寄与分が認められます。相続人が現実に引き取って扶養する態様と相続人が扶養料を負担する態様とがあります。

<現実の引き取り扶養の場合の寄与分の計算式>

 

 

寄与分額=現実に負担した額

又は

     生活保護基準による額×期間×(1-寄与相続人の法定相

続分割合)

 

 

 

 

 

<扶養料負担の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=負担扶養料×期間×(1-寄与相続人の法定相続分割合)

 

 

※裁量的割合 

寄与分算定に際しては、上記の計算式に抽出された要素がすべてではなく、実質的公平の見地から適宜修正を加えるのが相当とされ、裁量的割合を乗ずることとされます(司法研修所編『遺産分割事件の処理をめぐる諸問題』280頁)。

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