- 山本 俊樹
- インテグリティ株式会社
- ファイナンシャルプランナー
対象:家計・ライフプラン
- 吉野 充巨
- (ファイナンシャルプランナー)
- 吉野 充巨
- (ファイナンシャルプランナー)
踊り場に入った日本経済
日本経済は「踊り場入り」を確認した。
政府が発表する月例経済報告において、3月の経済基調判断が、「景気回復は、このところ足踏み状態にある」と表現された。米国のサブプライム問題が昨年半ばから問題となり、今年に入って再び大きく世界金融市場が揺り動かされている中にあっても、政府は1月「景気は一部弱さが見られるものの回復している」、2月「景気はこのところ回復が緩やかになっている」と、「回復している」という判断を崩さなかった。しかし、さすがに株価の低迷、原油高の高騰に加えて、急激な円高という大きなリスク要因が加わったため、今後の企業収益にも大きく影響を及ぼすとの見方が広がっている。
月例報告の発表の後行われた記者会見で大田経済財政担当大臣は、景気は「踊り場的な状態になっている」との判断を示した。2月に比べて設備投資、生産、企業収益の判断が下方修正され、その結果、個人消費、設備投資、生産という重要な3項目の判断が「横ばい」になったことが踊り場的という表現に結びついたようである。
今回の2002年1月から始まった長期景気回復局面において、2002年のイラク情勢悪化、2004年のIT関連資材の生産調整に次ぐ3度目の踊り場となる。
踊り場という表現は、まさに今後どちらの方向に進んでいくのかを見極める時期を意味している。そこで問題になるのが、当然どちらの方向に向かうのか、1.再び回復基調に戻る、2.景気後退局面に入る、このどちらかである。
年後半(北京オリンピック後)には景気後退も
今年に入ってからのレポートでも詳しく見てきたように、今回のサブプライム問題についてはやはりかなり根の深いものになっている。米国経済の停滞・減速は既にいくつかの経済指標から認めざるを得ない状況である。そして、この停滞は長期化する可能性があると考える。なぜなら、今回の問題が米国を中心に発展してきた金融システム(証券化による資金供給手段)が崩壊しかねないものであること、住宅市場は今までの上昇が急だけにその落ち込みからの回復は容易ではないこと、ドルという通貨に信任がなくなっていること、等の理由により、これらの問題からの脱却・回復には相当の時間がかかるものと思われる(1-2年)。
日本経済にとって、米国への依存度が以前よりも少なくなっているといっても、中国で生産した日本の製品が結局は米国にも流れていることを考えれば、やはりその影響は深刻である。また、中国を初めとする新興国経済が順調であることから、日本や欧州の経済への影響は少ないという意見もある。確かに現状は、それら新興国経済に助けられているが、この様な状態が続く間に北京オリンピックも終わってしまい、中国経済にも減速傾向が見られ始めると思われることも大きなリスク要因である。
今後の為替、設備投資動向に注目
さらに、円高の影響である。日銀短観で示された大企業製造業の2008年は増益予想ではあるが、その前提となっている為替レートが109.21円と現状のレートからはかなり円安のレートである。昨年までは、これが逆に相場よりはかなりの円高レートで予想していたために、企業収益予想にも糊代があったが、今年は、今の為替状況が続けば企業収益に大きく影響を及ぼすことは間違いない。
このように、日本経済は「踊り場」に入り、為替や設備投資の動向が実際の経済実態に影響を与えるのが1〜2四半期後ということを考えれば、年後半には景気減速局面に入る可能性が強いと考える。