交通事故その3(後遺症編) - 民事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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交通事故その3(後遺症編)

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交通事故
■後遺症編

1.将来の治療費

義肢、義歯等、交換する必要がある場合には、認められます。中間利息を控除します。


2.将来介護費

将来介護費  医師の指示または症状により必要があれば、職業付添い人は実費全額、近親者は1日当たり8000円。中間利息を控除する。
また、交通事故とは別の原因で死亡した場合には、将来の介護費用は不要となるから、賠償の対象とはならない(最判平成11年12月20日、判時1700号28頁)。


3.家屋・自動車改造費用

受傷の内容、後遺症の程度等により、必要性があれば認められます。


4.後遺症逸失利益

(1) 計算方法

  死亡の場合と異なり、生活費控除はしません。

  [1]有職者、就労可能者
  基礎収入額×労働能力喪失率×67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

  [2]30歳未満の若年労働者
  全年齢平均の賃金センサスによる収入額×労働能力喪失率×67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数


  [3]18歳未満(症状固定時)の未就労者

  全年齢平均の賃金センサスによる収入額×労働能力喪失率×(67歳までのライプニッツ係数−18歳に達するまでのライプニッツ係数)

  [4]高齢者(67歳以上)
  基礎収入額×労働能力喪失率×(平均余命―症状固定時)の半分程度までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
この場合の基礎収入額は、現実に収入を得ていることが必要となります。

(2) 基礎収入額

  現実の収入減少が必要なこと、あるいは賃金センサスを用いること等、休業損害で述べたことが当てはまります。

(3) 労働能力喪失率

  厚生労働省の労働能力喪失率表によります。
14級で肢等に醜状痕がある場合には、労働能力喪失率表にかかわらず、逸失利益を認めない例があります。

(4) 労働能力喪失期間

  むちうち症の場合、12級で5年〜10年、14級で5年以下に制限する例があります。

(5) 精神・神経症状

  [1] PTSD、RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)の場合
  PTSD、RSDの場合、自賠責の認定よりも高い労働能力喪失率が認められる例があります。
労働能力喪失期間、素因減額が問題となる例も多いです。

  [2]局部の神経症状が問題となる場合

  労働能力喪失期間が問題となる例が多いです。

(6) 顔面醜状の場合

  男女で異なります。
労働能力喪失率、労働能力喪失期間をそのまま認めず、経年変化により緩和されるとして、減額することが一般的です。
外貌醜状の逸失利益を認めない場合、慰謝料として算定した例も多く見受けられます。

(7) 嗅覚・味覚の場合

  労働能力喪失率表に記載されていない場合もありますが、類推して、認定する例があります。

(8) 脾臓摘出等の場合  

  必ずしも労働能力喪失につながるものではないが、長期的に見て仕事内容に相当制約を受けるものとして、労働能力喪失を認めた例があります。

(9) 高次脳機能障害の場合

  自賠責よりも高い後遺障害等級を認定する例があります。

(10) 植物状態になった場合

  平均余命よりも短い余命を推認した例があります。
   
(11) 後遺障害を負った被害者が死亡した場合

  事故と無関係な原因で死亡した場合、逸失利益の算定に当たり、考慮すべきではありませんし、生活費控除をすべきではありません(最判平成8年4月25日、最判平成8年5月31日)。
ただし、事故と相当因果関係のある自殺等の場合には、生活費控除をすることになり、死亡による逸失利益のみを請求できます(最判平成8年7月29日)。



5.後遺症慰謝料

(1) 被害者本人の慰謝料

  第1級  2800万円
第2級  2370万円
第3級  1990万円
第4級  1670万円
第5級  1400万円
第6級  1180万円
第7級  1000万円
第8級   830万円
第9級   690万円
第10級  550万円
第11級  420万円
第12級  290万円
第13級  180万円
第14級  110万円

(1) 近親者の慰謝料

  重度の後遺症の場合に、近親者固有の慰謝料が認められる場合があります。

(1) 慰謝料の増額事由

  加害者に故意・重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しい速度違反、ことさらな赤信号無視など)、著しく不誠実な態度等がある場合、慰謝料の増額事由となります。