第2章 事業承継における信託の利用可能性 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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閲覧数順 2017年02月21日更新

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第2章 事業承継における信託の利用可能性

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相続

第2章 事業承継における信託の利用可能性

第1 当事者の倒産リスクの回避

 信託財産は、委託者から受託者に移転し、受託者に帰属しますから、委託者の債権者は、信託財産に対して強制執行等を行うことはできません。

 他方、受託者の債権者も、信託財産に対して強制執行等を行うことはできません(信託法23条1項)。そして、信託財産は受託者から独立していますから、受託者に倒産手続が開始された場合、信託財産は当該倒産手続の対象にはなりません(信託法25条1項)。

 また、受託者の信託財産以外の財産のみをもって履行すべき債務と信託財産に属する債権に係る債務とを相殺することはできません(信託法22条)。

 以上のように、信託の方法を利用することにより、委託者・受託者の倒産リスクから信託財産を隔離することが可能となります。すなわち、信託を利用することにより、当事者の倒産リスクを回避して、事業承継を行うことができるのです。

第2 被相続人の意思の尊重

 被相続人の遺言が存在する場合、その遺言内容に従って遺産が分配されることになるのが通常ですが、相続人が遺産の所有権その他の権利を承継することから、相続人全員の合意があれば、遺言内容と異なる遺産分割を行うことも可能です。すなわち、被相続人が遺言を残したとしても、相続人全員の合意があれば、相続人の意思が優先されます(ただし、遺贈することが規定されている場合には、遺贈の相手方が同意しない限り、遺贈の目的物は相手方のものとなりますし、遺言執行者の定めがある場合には、その遺言執行の報酬額について、遺言執行者から損害賠償請求を受ける可能性はあります)。

 しかし、信託の場合は、信託によって信託財産についての所有権その他の権利が受託者に完全に移転し、受益者が受託者に対し、信託目的に従った管理・処分等を求める権利を有することになります。すなわち、委託者の死亡によっても、信託期間中は信託財産についての所有権その他の権利は受託者が取得していることとなり、相続人は信託財産についての権利を取得することができません。したがって、遺産たる信託財産の管理については、相続人の意思よりも、信託行為の定めによる委託者たる被相続人の意思が尊重されることになります。

第3 遺産の柔軟な分配

 被相続人は、相続人の将来を考えて、条件をつけて相続人に遺産を分配させようとすることがあります。例えば、土地について所有権は長男に取得させるが、その土地から生じる賃料については妻に取得させたいといった場合が考えられます。このような場合、被相続人が遺言を残したとしても、その条件が確実に守られる保証はありません。

 しかし、信託の場合は、信託が終了するまでは、受託者が、その信託の目的にしたがって財産の管理・処分を行い、その収益を受益者に取得させることになります。そこで、委託者が、あらかじめ受益権の内容として設定しておけば、遺産の分配についての条件が守られることになります。

 また、自宅について、妻の生存中は遺産分割の対象となることを回避して妻の居住用に確保しておいてあげたいが、妻の死亡後は自宅を長男に承継させたいといった場合も考えられます。これは、いわゆる「後継ぎ遺贈」と呼ばれるものですが、信託の活用により、これを行うことが事実上可能になります(第4章 第5 受益者連続型信託参照)。

 以上のように、信託の活用により、被相続人は遺産の柔軟な分配を実現することが可能になります。

 

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