- 河野 英仁
- 河野特許事務所 弁理士
- 弁理士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
執筆者:弁理士 河野登夫、弁理士 河野英仁
1.学会発表は特許出願がすんでから
「特許のことはよく知ってる。学会での発表!心配ないよ。30条を適用してもらえばいいんだ。」という頼もしい上司の言葉はまるごと信用しないこと。
たしかに、学会で発表してしまったあと、特許出願の必要性に気づいた場合は、特許法30条で救済されることは間違いない。出願時に30条の適用を申請し、後日必要な証明書を提出することで、学会発表で発明の内容が広く知られるようになったことに起因する不利益(新規性などが無いとして特許出願が拒絶されること)は受けずにすむ。
しかし、このような救済制度を認めている国はほとんど無く、別の制度で、発表後も1年間は不利益なしに出願できるようにしているのはアメリカとカナダだけである。つまり、日本で30条適用出願になった場合は米加以外での権利化の可能性しか残らないことになるのである。
また、30条が適用可能な学会(学術団体)は特許庁長官によって指定されており、どんな団体でも良いというわけではない。例えば海外の学会ではだめである。
従って、学会の発表を予定している場合は、発表に先立ち特許出願するのが原則である。 (第18回につづく)