金融商品の取引について(金融商品取引法) - 各種の消費者被害 - 専門家プロファイル

鈴木 祥平
弁護士
東京都
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対象:消費者被害

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金融商品の取引について(金融商品取引法)

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今年は、年初からいわゆる「アベノミクス」に対する期待感とアメリカの好景気が影響して日本社会も少しづつ景気が上向きになっているようです。景気が上向きになると、出てくるのがいわゆる「おいしい話」というものです。「投資信託を買いませんか?」、「株式を購入しませんか?」などという話が出てくるようになります。

今回は、「金融商品の取引」にまつわるお話をしてみようと思います。法律で言えば「金融商品取引法」という法律がテーマになります。

「金融商品取引法」という法律は、今から7年前の2006年に作られた法律です。「金融商品取引法」は、読んで字の如く「金融商品」の「取引」を「規制」するものです。その「規制の目的」は「一般投資家を保護する」ことにあります。すなわち、一般投資家を保護するために取引のルール(規制)を定めている法律が「金融商品取引法」という法律です。

実は、「金融商品取引法」が作られる前にも、「金融商品」の種類ごとに「法律」が定められていました。「金融商品取引法」は、それらの法律による規制を「ひとつにまとめる」という意味で作られた法律です。

国としては、「銀行に預金をするよりも、どんどん投資をして欲しい」というのが本音です。銀行に預金をしても、銀行から借りてくれる企業がなければ、「お金」は塩漬けになってしまいますので、経済の血液であるお金が循環しないからです。

とはいって、「投資をする」ということにはリスクも伴います。「投資」をすれば必ず利益が生まれるものというものではありません。失敗をして損失が生じる場合もあるわけです。必ず儲かるという話はまずありません。

そこで、「一般の投資家が、少しでも安心して投資をすることができるようにする」ということで、作られた法律が「金融商品取引法」です。

「金融商品取引法」は「一般の投資家が安全に金融商品の取引を行えること」を目的に作られた法律で、これまでの法律に比べると、規制の対象となる「金融商品」が増えています。

「預金」や「保険」についても、投資性のある一部の商品(例えば、「外貨預金」や「変額年金保険」など)の場合は、「販売・勧誘のルール」が厳しくされています。

「金融商品」を取り扱い、「一般の投資家」を「勧誘」しているのは、証券会社、銀行、郵便局といったいわば「金融のプロ」達です。

そのような人たちに対しては、「事業者としての適格性」の規定が設けられ、「登録」しなければ「金融商品」の取扱いをすることができなくなりました。さらに、「金融商品の販売・勧誘についての行為ルール」や「広告などでの表現ルール」など厳しい規制が設けられるようになりました。

たとえば、「一般の投資家の中でも金融商品の販売に向いていない人に対して、無理矢理に販売してはいけない」というようなルールがあります。

また、「大丈夫ですよ。絶対に儲かりますから」などといって一般投資家を勧誘することも「許されない行為」とされています。激しい値動きがある「金融取引」に、「絶対」という言葉はないのです。「絶対に儲かります」といって、確実に利益が生じるかのように語って勧誘した場合は、「断定的判断の提供の禁止」というルールに違反することになります。

また、金融のプロが「金融商品」の勧誘をする際には、「書面での説明」が義務づけらます。以前に「投資信託」などの金融商品を購入された事がある方ならご経験があることかと思いますが、分厚い「目論見書」を確認したり、「各種重要事項の説明」などがあったりした上で、最後に「全部確認しました」と署名をするという手順になっています。

「この説明を受けたのは、●●年●●月●●日●●時●●分」といったことまで記入するほど厳格に行われています。

では、「金融商品取引法」によって一般投資家は手厚い保護を受けているから、どんな金融商品を購入しても大丈夫かというとそうではありません。

金融のプロに法律で定められたルールに従って①勧誘、②販売、③説明を受けたわけです。そうであれば、最終的には「自己責任」(=上手く儲からなかった場合には自分の責任である)ということになります。

現在、市場にはさまざまな「金融商品」が売られており、「金融商品」の販売の手法や窓口も多様になってきています。例えば、「投資信託」であれば、以前は証券会社の窓口でしか購入することができませんでした。

しかしながら、現在では「銀行」や「郵便局」でも購入できるようになり、購入のルートは広がってきています。

これも、一般の投資家保護を目的とした「金融商品取引法」によって、金融商品の販売に関するルールが定められたことによる影響です。

また、「投資信託」に限らず、金融商品の販売・購入にあたっては、事前に投資家の資産の状況などについて金融機関から詳細に聞き取り調査が行われます。

その結果、金融商品の販売に適しているかどうかの判断がされた上で、始めて「金融商品」を購入することができるわけです。

仮に「金融商品の購入を強く希望している」としても、「(その人にとって)リスクがあまりにも大きいような場合」には、その「金融商品」を販売することができないということになります。

先ほどからお話ししています通り、「金融商品」の購入にあたっては、証券会社や銀行、郵便局の窓口などで、金融機関の担当者からそれぞれの「金融商品」についての説明をしっかり受けることになります。

しかしながら、すべての人がその金融商品の説明の内容を完全に理解できるわけではありません。

書面で金融商品の説明を確認するといっても、金融商品についての説明が難しく理解が困難な場合もありますし、また、金融商品のリスクに関する注意事項などが、小さな字で書いてある場合がありますので、気をつける必要があります。

「投資をすることによって生じるリスクは最終的には自分で負わなければなりません」(自己責任の原則)ので、担当者の説明の中で分からないことがあったり、不安なことがある場合には、きちんと分かるまで担当者から説明を受けるようにしましょう。それでイヤな顔をするような金融機関からは金融商品を購入してはいけません。

実際には「金融商品取引法」が作られたことによって、金融商品の販売の際の説明も慎重かつ丁寧に行われるようにはなってきています。

とはいっても、金融機関にとっては「商品の販売」であることには変わりありません。担当者としては、何とかしてあなたに「金融商品」を購入してもらいたいわけです。担当者に悪気が無かったとしても、「金融商品」を購入することの「リスク」よりも「メリット」の説明に重点が置かれてしまうことは避けられません。

「金融商品」の説明を受ける側も「金融商品」の「メリット」ばかりに注意が向いてしまって、「リスク」について十分に理解していないことがよくあります。

ですから、「金融商品」を購入するにあたっては、普段の買い物をするとき以上に慎重かつ冷静な判断をすることが必要です。

最後に、「金融商品の勧誘」について一言述べておきたいと思います。以前は、商品先物取引などの「金融商品の勧誘」をする際に、「電話や訪問での勧誘」が当たり前のように行われていましたが、現在では顧客からの要請がない限り、「電話や訪問での勧誘」をすることはできません。

また、「商品先物取引」などの「ハイリスク・ハイリターンの商品」は、「一度でも断わられたら、二度と勧誘してはならない」と決められています。

もし、金融機関から執拗な勧誘に悩まされるようなことがあった場合は、弁護士や金融庁の窓口に相談をしてみましょう。

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