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中国民事訴訟法改正のポイント (第3回)
河野特許事務所 2013年4月9日 執筆者:弁理士 河野 英仁
7.強制執行
人民法院による勝訴判決を得たとしても被告側が製造・販売を停止しない場合、または、損害賠償金を支払わない場合、強制執行の申立てを行うことができる。改正前は、執行通知後一定期間経過後に強制執行がなされていたが、より判決による執行力を強化すべく、執行通知後、執行員は直ちに強制執行措置をとることができるよう改正された(中国民事訴訟法第240条)。
改正前 |
改正後 |
第216条(執行通知) 執行員は、執行申立書を受け取り、又は執行書の移送、交付を受けた場合には、被執行人に対して執行通知を発し、指定期間内に履行するよう命じなければならない。期間を徒過しても、なお履行しない場合には、強制執行をする。 被執行人が法律文書により確定された義務を履行せず、かつ財産を隠匿し、又は移転するおそれがある場合は、執行員は直ちに強制執行措置を講じることができる。 |
第240条(執行通知) 執行員は、執行申立書を受け取り、又は執行書の移送、交付を受けた場合には、被執行人に対して執行通知を発しなければならず、また、直ちに強制執行措置をとることができる。 |
8.再審
中国は2審制を採用するが、法定事由に合致する場合、再審請求を行うことができる(中国民事訴訟法第200条)。実務上は数多く再審請求が行われている。法改正により、13の再審事由が12に改められた。また、再審請求を行うことができる期間は、判決後2年であったが、紛争の長期化を防止すべく原則として判決後6ヵ月以内と短縮された。従って再審を行う場合、2審判決後、速やかに準備に取りかかることが必要とされる。
改正前 |
改正後 |
第179 条(再審事由) 当事者の申立が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、人民法院は、再審をしなければならない。 第1号 新たな証拠があり、原判決、裁定を覆すのに足りる証拠 第2号 原判決、裁定の事実認定に主たる証拠が不足している場合 第3号 原判決、裁定において認定した事実の主要証拠が偽造された場合 第4号 原判決、裁定において認定した事実の主要証拠が質証を経ていない場合 第5号 審理案件に対し必要な証拠について、当事者が客観的原因により自身で収集できない場合に、書面により人民法院に調査収集を申請したが、人民法院が調査収集していない場合 第6号 原判決、裁定について法律適用に確かに誤りがある場合 第7号 法律の規定に違反し、管轄に誤りがある場合
第8号 審判組織の組成が非合法である、あるいは、法によれば回避すべき裁判員が回避しなかった場合 第9号 訴訟行為能力の無い者が法定代理人を経ることなく訴訟を代行し、或いは、訴訟に参加すべき当事者が、本人或いは訴訟代理人の責めに帰すことができない理由により訴訟に参加していない場合 第10号 法律の規定に違反し、当事者の弁論の権利を剥奪した場合 第11号 呼び出し状による召喚を経ることなく欠席判決をなした場合 第12号 原判決、裁定に遺漏があり、或いは、訴訟請求範囲を超えている場合 第13号 原判決、裁定を作り出す拠り所となる法律文書が撤回または変更された場合 法定の手続きに違反することに対し案件の正確な判決・裁定の状態に影響を与える可能性のある場合、或いは、裁判員が案件審理中に汚職で賄賂を受け取り、私情にとらわれて不正行為を働き、法を曲げて裁判行為を行った場合、人民法院は再審を行わなければならない。 |
第200 条(再審事由) 当事者の申立が次の各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、人民法院は、再審をしなければならない。 第1号 新たな証拠があり、原判決、裁定を覆すのに足りる証拠 第2号 原判決、裁定の事実認定に主たる証拠が不足している場合 第3号 原判決、裁定において認定した事実の主要証拠が偽造された場合 第4号 原判決、裁定において認定した事実の主要証拠が質証[1]を経ていない場合 第5号 審理案件に対し必要な主要証拠について、当事者が客観的原因により自身で収集できない場合に、書面により人民法院に調査収集を申請したが、人民法院が調査収集していない場合 第6号 原判決、裁定について法律適用に確かに誤りがある場合 第7号 審判組織の組成が非合法である、あるいは、法によれば回避すべき裁判員が回避しなかった場合 第8号 訴訟行為能力の無い者が法定代理人を経ることなく訴訟を代行し、或いは、訴訟に参加すべき当事者が、本人或いは訴訟代理人の責めに帰すことができない理由により訴訟に参加していない場合 第9号 法律の規定に違反し、当事者の弁論の権利を剥奪した場合 第10号 呼び出し状による召喚を経ることなく欠席判決をなした場合 第11号 原判決、裁定に遺漏があり、或いは、訴訟請求範囲を超えている場合 第12号 裁判官が該案件を審理する際に汚職で賄賂を受け取り、私情にとらわれて不正行為を働き、法を曲げて裁判行為を行った場合 |
第184 条(再審申立期間) 当事者は、再審を申し立てる場合には、判決、裁定の法的効力が生じた後、2 年以内に提起しなければならない。 2 年が経過した後に、原審判決又は裁定の基礎となった法律文書が取り消され、又は変更された場合、及び事件の審理時に裁判官に汚職・収賄行為、私利を図る行為又は法を曲げて裁判をする行為があったことを発見した場合は、その事実を知った日又は知りうべき日から3 か月以内に提起しなければならない。 |
第205条(再審申立期間) 当事者は再審を申し立てる場合、判決、裁定の法的効力が生じた後、6ヵ月以内に提起しなければならない。本法第200条第1項、第3項、第12項、第13項の規定に該当する場合、その事実を知った日又は知りうべき日から6か月以内に提起しなければならない。 |
以上
[1] 質証は当事者が提出した証拠の客観的真実性、関連性、及び合法性について事実確認及び対質(証拠調べの一つ)を行うものであり、裁判官の主導のもと開廷後に行われる(司法解釈[2001]第33号第47条)。
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