警察に逮捕された後の手続について - 刑事事件・犯罪全般 - 専門家プロファイル

鈴木 祥平
弁護士
東京都
弁護士

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対象:刑事事件・犯罪

閲覧数順 2024年04月23日更新

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警察に逮捕された後の手続について

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 犯罪を捜査するためには、犯罪を裏付ける証拠(凶器などの物証や目撃者などの人証)を確保しなければならないし、また、その犯人に逃げられないようにする必要があります。

刑事事件の手続きを定めた法律である「刑事訴訟法」には、犯人であると疑わしい人(=被疑者)の身柄を強制的に確保する手段として「逮捕」という手続きと「勾留」という手続きを認めています。

 犯罪捜査の過程において、必ずしも被疑者(=犯人ではないかと疑わしい人)の身柄を拘束する必要はなく、実務上でも被疑者の身柄を拘束することなく捜査をするということは少なくありません。実務上は、被疑者の身柄を拘束していない事件のことを「在宅事件」といい、被疑者の身柄を拘束している事件のことを「身柄事件」と呼んだりします。

 警察に「逮捕」されると「48時間以内」に「検察官に送致する手続き」をとらなければなりません(刑事訴訟法203条1項)。

【「送検」と「書類送検」の違い】

この「検察官に送致する手続き」を「送検」と呼ぶことがありますが、「送検」とは、「事件の送致」と「被疑者の送致」を一緒に行うことを言います。よく報道においていわれている「書類送検」というのは、「事件の送致」だけを行う場合を言います。すなわち、「身柄事件」ではなく、「在宅事件」の場合には、「事件の送致」だけを行い、「被疑者の送致」がないことから、「書類送検」と呼ぶわけです。

なお、刑事訴訟法246条は、「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定めがある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件についてはこの限りではない。」と定めています。すなわち、「速やか」に「書類及び証拠物とともに事件」を「検察官に送致する手続き」をすればいいわけです。身柄事件については、「速やかに」ではなく「48時間以内」に「検察官に送致する手続き」をとらなければならない(刑事訴訟法203条1項)とされているのは、「法律に特別の定めがある場合」に該当するということになります。

【警察における弁解録取手続】

 警察に逮捕されるとまずされることは、「弁解録取」という手続きです。「弁解録取」というのは、簡単に言えば「あなたは、これこれこういう疑いがかけられている(これを「犯罪事実の要旨の告知」といいます。)けど、言い訳があったら話をしてくれ」ということです。この弁解については、「弁解録取書」という書類にまとめられます。

警察は、被疑者から弁解を聞いた結果、このまま身柄を拘束しておく必要がないと判断すれば直ちに被疑者を釈放することになりますし、身柄を拘束しておく必要があると判断した場合には、「48時間以内」に「事件の書類や証拠」と「被疑者」を検察官に送致する手続をする必要があります。

【検察官による弁解録取手続】

 警察から送致された被疑者を受け取った検察官は、警察の時と同じようにまず、「弁解録取手続」を行います。「あなたにはこれこれこういう疑いがかけられているけど、何か言い訳があったら話をしてくれ」ということです。

これも「弁解録取書」という書類にまとめられます。検察官は、被疑者の弁解を聞いて身柄を拘束して置く必要があるかどうかを判断します。身柄を拘束する必要がないと判断をすれば、直ちに釈放をします。身柄を拘束しておく必要があると判断をすれば、被疑者を受け取った時から「24時間以内」に裁判官に被疑者の勾留請求をしなければならないことになっています。

【検察官による勾留請求】

勾留請求というのは、裁判官に対して「被疑者について捜査をする必要があるが、逃げたり、証拠等を隠滅したりするおそれがあるので、身柄をもう少し拘束させて欲しい」と要求をすることをいいます。ここで重要なのは、最終的に身柄拘束を認めるか否かは、検察官が決めることではなく、「裁判官」が決めるということです。

裁判官が「勾留決定」をすることにより、被疑者の身柄拘束が認められるということになります。「勾留決定」とよく言われますが、正式には、「決定」ではなく「命令」です。「決定」とは、「裁判所の行う裁判で判決以外の形式」のことを言い、「命令」とは、「裁判の主体が裁判所以外の裁判の形式」のことを言います。勾留決定は、「裁判官」が行うのであって、「裁判所」が行うものではありませんので、法律上は「命令」というのが正しいと思われます。少しマニアックですが・・・・。

【裁判官による勾留質問】

 勾留がされる場合には、被疑者は、警察署の留置場所から、裁判所に連れて行かれることになります。そこで行われるのは、「勾留質問」という手続きです。

「勾留質問」とは、検察官から勾留するよう求められた裁判官は、改めて被疑者の方から言い分を聞くことを言います。

検察官の主張するとおり、勾留すべきと考えたときに、10日間警察署の留置場に留め置くとの決定をします。

「検察官による弁解録取手続」から「裁判官が勾留を決定する」まで、たいてい1日で全部行われますが、東京における実務上の運用では1日目に検察官のところに行き、2日目に裁判官のところに行くことが多いので、丸2日間かかります。

【勾留が認められる要件】

 それでは、勾留はどのような場合に認められるのでしょうか。勾留が認められるためには、「勾留の理由」があることと「勾留の必要性」があることが必要であると考えられています。

 勾留の理由とは「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」であって、①被疑者の住所が不定である(これを「住所不定」といいます)、②証拠を隠滅したり、証人を脅して証言させないようにしたりするおそれがある(これを「罪証隠滅のおそれ」といいます。)、③被疑者が逃げるおそれがある(これを「逃亡のおそれ」という)

がある場合をいいます。 

 「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」とは、要するに「被疑者が犯罪を犯したという相当程度の疑い」があることをいいます。これを分解すると、二つの問題に分けることができます。それは、被疑者が犯人であるといえるのかという問題(これを実務上「犯人性」と言ったりします。)と被疑者が犯人であるといえるとして、それが犯罪行為に該当するのかという問題の二つです。勾留をするには、まず、この要件を満たす必要があります。それがあった上で、①住所不定、②罪証隠滅のおそれ、③逃亡のおそれのどれかに当てはまる必要があるわけです。

 次に「勾留の必要性」とは何でしょうか。勾留の必要性というのは、「必要性」という言葉を使っていますが、日常用語としては「相当性」という言葉を使った方がわかりやすいかもしれません。「勾留の理由」が「勾留する必要があるのか」を問題にするのに対して、「勾留の必要性」は「勾留の理由があるにしても、勾留をするのは相当なのか」を問題にすると考えるとわかりやすいと思います。

「勾留の必要性」は、①どの程度起訴する可能性があるのか、②捜査がどの程度進んでいるのか、③被疑者の年齢や健康状態はどうであるのか等を判断をした上で勾留するのが相当と言えるのかを判断することになります。

 ただ、「勾留の理由」があれば「勾留の必要性」があると認められる場合が多いでしょうから、前記のような諸事情を考慮して、特に「勾留による不利益」が「勾留による利益」を上回る場合に、勾留の必要性を欠くと判断するのが通常です

【勾留期間について】

最初の勾留期間は、検察官が勾留を請求した日から10日間です。裁判官が勾留を決定した日からではないので、ここは注意が必要です。10日間より短い期間を設定して勾留することはできませんので、勾留が決まったとの連絡があったら、まずは10日間留置場から出てくることができません。事件が複雑であったり、事件の関係者の事情聴取がまだ終わっていないなど、「やむを得ない理由」で捜査を終えることができない場合は、10日間の勾留のあと、さらに最大10日間勾留の延長をすることができます。

「やむを得ない」とありますが、一般的には延長されることが多いため、ほとんどの事件では勾留を請求された日から最初の勾留で10日間、勾留延長で10日間の合計20日間は留置場にいることになります。

【接見禁止処分について】

裁判官は、被疑者に一般面会を認めると、証拠の隠滅などをすると疑われる場合には、一般面会や、手紙のやり取りを禁止することができます。これを「接見等禁止処分」といいます。接見禁止処分が出されると、ご家族であっても面会したり、手紙のやり取りをしたりすることができません。

①共犯者がいる事件で、特に組織的な背景がうかがわれる事件、②被疑者の方が否認をしている事件では、この「接見禁止の処分」が出されることが多いです。