- 谷口 與市巳
- 京都ビスキャスオフィス 代表
- 京都府
- 経営コンサルタント
対象:新規事業・事業拡大
- 下村 豊
- (経営コンサルタント)
最近、マスコミ報道の経済欄や社説欄に、「強みを活かす」とか「長所を見直す」と言う見出しやタイトルを見かけます。
企業の発表する事業計画や決算発表等を始め、使用頻度が多くなっているように感じます。
最近までは、市場に対するメッセージ性が強いコメントが多く、例えば、「顧客要望」とか「市場動向」などです。
何となく「原点回帰」を感じます。新製品や新しいサービスを考える時、経営環境である「強み」や「長所」を基本に考える事は当たり前の行為ですから、特に新鮮では有りませんが、「顧客要望」や「市場動向」等は多様化していますので、「メッセージ効果」としては薄れたのかも知れません。
さて、本題ですが、少し違和感を覚えたのは、「強み」と「長所」の違いです。事業経営においては、意識的若しくは無意識のうちに「SWOT分析」の手順を踏んでいると思いますが、この世界では「強み・弱み」という分類を採用し、「長所・短所」は使いません。「強み」と「長所」を比較すると、感覚的には何となく違いが理解できますが、辞書を紐解くと少し混乱します。英訳すると尚更で、どちらも「STRENGTHS POINT」と言う英訳例が出てきます。
それでは、SWOT分析において「強み」も「長所」も同じとして扱って良いのでしょうか。つまらない悩みに当ってしまいましたので、それを考えてみたいと思います。最初にお断りしておきますが、あくまでも持論です。
まず、結論を出しておきますが、その答えは「NO」です。「SWOT分析」では、「強み」とは、『他と比べて、優れている特質』と考えられます。「長所」とは、『他と比べて、有益とみなされる様子(特長)』と理解できます。
具体例で説明します。例えばお店を経営しているとして、利用客の多い駅前商店街に所在している場合は、利用客が少ない駅前商店街より見込み客は多くなります。でも、その多い利用客を見越して店舗数も多くなりますから競争は激化します。利用客の多い駅前商店街で営業しているという、「現実的な長所」に立地しているに過ぎません。乗降客の少ない駅前商店街の場合は、「現実的な短所」に立地していますが、当然店舗数は少なく店舗間の競争は和らぐことになります。
このように考えると、「長所・短所」は特長で、評価する側面によって評価結果が変化します。それに対して「強み・弱み」と言うのは、それぞれの環境の中で、よりお客様の来店を多くする秘訣(他店と比べて優れている特質の有無)で評価は不変的です。例では、お店の立地場所で話しましたが、製造拠点、シェアー、ブランドなども特徴でありSWOT分析上の、「強み・弱み」の対象外とした方が無難でしょう。
纏めると、
「強み」とは、『他と比べて、優れている特質』
「弱み」とは、『他と比べて、劣っている(持っていない)特質
「長所」とは、『他と比べて、有益とみなされる様子(特長)』
「短所」とは、『他と比べて、無益とみなされる様子(特長)』
「長所」「短所」はSWOT分析上の「強み」「弱み」ではない、 と言えます。
しかし、「長所」「短所」もSWOT分析に、分析要素として大きく影響します。次回ご紹介したいと思います。