類型別の寄与分の算定方法

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公開日時
2012/10/01 09:01

 

4 寄与行為の類型と寄与分の算定方法(北野俊光『遺留分の算定』判例

タイムズ1100号379頁)

 寄与行為には,条文上,次のような類型があり,寄与分の算定は類型に応じた計算式により行われます。実際の事例では,複数の類型にまたがる複合型もあります。

(1)「被相続人の事業に関する労務の提供」

 被相続人の事業に無報酬又はこれに近い状態で従事した場合です。

 被相続人の事業とは,一般に農業,林業,漁業,各種製造加工業,商業等個人営業がその典型とされていますが,被相続人が経営していた会社に寄与した場合であっても被相続人と会社が経済的に密接な関係がある場合には,被相続人の事業に対する寄与と認められます(高松高決平成8・10・4家裁月報49巻8号853頁)。

<家事従事型・従業員型の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=寄与者の受けるべき相続開始時の年間給与額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

 

 


<共同経営型の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=(通常得べかりし報酬+利益配分)-現実に得た給付

 


(2)「被相続人の事業に関する財産上の給付」

 被相続人の事業に対して,資金や不動産を無償で提供する場合などです。

<不動産の贈与の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=相続開始時の不動産価額×※裁量的割合

 


<金銭の贈与の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=贈与当時の金額×貨幣価値変動率×※裁量的割合

 


(3)「被相続人に対する療養看護」

 実際に相続人が療養看護する態様と第三者に療養看護させて相続人がその費用を負担する態様とがあります。

<相続人が療養看護をした場合の寄与分の計算式>

寄与分額=介護報酬基準額×療養看護日数×※裁量的割合

 


<第三者に療養看護させた場合の寄与分の計算式>

寄与分額=負担費用額

 


(4)「その他の方法」

 他に相続人兼扶養義務者がいるのに,特定の相続人のみが被相続人の扶養をした場合には,扶養義務の分担額を超えた部分につき寄与分が認められます。相続人が現実に引き取って扶養する態様と相続人が扶養料を負担する態様とがあります。

<現実の引き取り扶養の場合の寄与分の計算式>

 

 

寄与分額=現実に負担した額

又は

     生活保護基準による額×期間×(1-寄与相続人の法定相

続分割合)

 

 

 

 


<扶養料負担の場合の寄与分の計算式>

寄与分額=負担扶養料×期間×(1-寄与相続人の法定相続分割合)

 


※裁量的割合 

寄与分算定に際しては,上記の計算式に抽出された要素がすべてではなく,実質的公平の見地から適宜修正を加えるのが相当とされ,裁量的割合を乗ずることとされます(司法研修所編『遺産分割事件の処理をめぐる諸問題』280頁)。

 

このコラムの執筆専門家

村田 英幸(弁護士)

村田法律事務所 弁護士

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