相続人以外の人に包括遺贈をする遺言書の注意点

-

公開日時
2014/05/07 22:35

 遺言をこれからしようとする際に、法定相続人が兄弟姉妹だけだと、遺留分(相続人が最低限相続を保障される分)を持つ相続人がいないことになるので、法定相続人以外の人たちに全財産を渡したいというような場合には、その人たちに全財産を遺贈する内容の遺言をしておくことによって、死亡後、基本的にはその意思通りに遺贈がされます。遺言書が非常に高い効果を発揮するケースだといってよいでしょう。
 そういった場合、被相続人は遺贈の対象者(受遺者)に対して、自分の全財産の全て又は2分の1ずつなどの一定割合で包括的に遺贈(包括遺贈)する内容の遺言をすることになるわけですが、包括遺贈については民法994条・995条に注意しなければなりません。

 というのは、これらの規定によると、被相続人が死亡した時点で、包括遺贈の対象者(包括受遺者)が先に死亡していた場合、その遺贈は効力が生じず、結局、包括遺贈をするはずだった分は法定相続人に相続されることになっているのです。受遺者には代襲相続(法定相続人の代わりにその子孫が財産を取得すること)のような制度もありませんので、包括受遺者の子供たちにも引き継がれることはありません。
 兄弟姉妹はいるが疎遠なので、是非とも非常に世話になった知人2名にすべての財産を(2分の1ずつ)遺贈したいというような場合に、遺言者よりも先に一方の受遺者が死亡した場合、その2分の1は他方の受遺者ではなく、法定相続人の兄弟姉妹に引き継がれることになると、遺言者の意思が完全には果たせなくなってしまいます。

 しかし、そういったときのことも考えて、民法995条には「ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」との但し書きがきちんとありますのでご安心下さい。遺言書に自分が死亡した時点で受遺者の一方が死亡していた場合には、その分は他方の受遺者に帰属するという趣旨の条項をきちんと記載しておけば、想定外に法定相続人に財産が引き継がれることを防ぐことができるのです。また、こうしておくと、自分の生存中に受遺者の一方が亡くなったときにでも、遺言書を書き換えなくても良くなります。
 ですので、包括遺贈をする場合には、こういった予備的な条項を遺言書に入れるかどうかについて、きちんと考えておかないといけませんね!

 

このコラムの執筆専門家

酒井 尚土(弁護士)

クーリエ法律事務所 代表弁護士

丁寧な法務サービスを提供します!

相続・税金事件に特に注力しています。遺産分割事件等の相続案件に携わるだけでなく、国税審判官の勤務経験や税理士・ファイナンシャルプランナーの資格を有しており、相続事件・税金事件の処理はもちろん、総合的な相続対策でもお力になります!

酒井 尚土
遺言について分からなくなったら「相続 専門家プロファイル」へご相談ください。
最適な相続の専門家を無料でご紹介いたします。 相談内容を入力する

※専門家の紹介、また、専門家からの提案・見積りは、無料でお使いいただけます。実際にお仕事を発注する段階で金額などは専門家と個別にご相談ください。