小笠原 隆夫
オガサワラ タカオあって当たり前の制度でも「ダメなら変えればいい」という話
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少し前になりますが、グループウェアで国内トップシェアのサイボウズ、青野慶久社長の講演であった話から思ったことです。
ユニークな社内制度を数々取り入れている同社では、副業、出戻り、育児支援、その他多様なワークスタイルを認めていますが、その中で、「給与テーブルを廃止した」という話がありました。
給与テーブルがあることによって、内向きの視点で社員同士の他者比較が始まることを好ましくないと考えたからだそうです。では、どうやって社員の給与を決めているかというと、「市場価格」とのことでした。
通年で採用活動をおこなっていることで、どのくらいのレベルの人が、どのくらいの報酬なのかという市場価格が体感的にわかるので、それに合わせて給与設定をするとのことです。
社員同士の比較がしづらいというデメリットはあるものの、あくまで社員個別に、「あなたの今の仕事ぶりではいくらの市場価格になるか」という観点で話し合うそうです。
IT系エンジニアは、人手不足によって市場価格も上がっているので、仮に社員の仕事内容に変化がなくても、市場価格に合わせて給与が上がることもあるそうです。
私は人事制度の策定をいろいろな企業でお手伝いしますが、すでに制度を運用している会社がやめたという話は、あまり聞いたことがありません。
たぶん、世の中のほとんどの会社は、制度をやめることは後ろ向き、後退と捉えますし、さらに給与となると、人事制度の中では根幹に位置するものですから、その仕組みを無くすことなどは考えていないところがほとんどでしょう。
ただ、いろいろお話をうかがっていて、企業理念や風土、会社として目指す方向によって、私は一つの方法として考えられるものだと思いました。
給与体系はその会社固有の制度ですから、必ずしもその人の市場価値を反映したものではありません。価値を生み出さない人でも年令とともに昇給していく制度によって、仕事内容と市場価格のギャップが大きくなりすぎたという問題を抱えた会社がたくさんあります。
また、社員同士の他者比較というのは、どこの会社でも見かけることですが、それはお互いの切磋琢磨につながるようなことばかりではなく、「なぜあの人が・・・」「なぜ自分は・・・」という不満や苦情につながっているケースも多いです。
あまり建設的な話ではありませんし、その原因の一つに給与体系があるならば、これをやめるという考え方は確かにあるでしょう。
お話の中で、特に印象深かったのは、「制度がダメなら変えればよい」ということです。それだけを聞けば、「確かにそうだ」と納得するでしょうが、ダメだから変えるという内容が、給与体系の廃止というほどの発想までには至る人は、ほとんどいないでしょう。
ただ、どこの会社にも一般的にあるものだからと言って、自社にも絶対に無ければならないということはありません。
社内制度は、最終的にはその会社の業績向上のために存在するもので、会社が独自に考えるべきものです。もっと柔軟な発想があっても良いのではないかということを、あらためて考えさせられました。
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