小笠原 隆夫
オガサワラ タカオただ安定を求めようとする姿勢が気になる「定年まで働きたい新入社員」
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これは昨年行われた調査ですが、日本能率協会が新入社員に向けて、独立・転職志向について聞いたところ、「定年まで勤めたい」との回答が、調査開始以来初めて、50.7%と過半数に達したという話題がありました。たぶんこの傾向は、その後もあまり変わっていないだろうと思います。
新卒者が3年以内に辞める割合が3割などと言われ、この調査結果とは相反する実態もある訳ですが、職務経験がない新入社員を採用することは、会社にとって多大な投資ですから、一度入社した会社を、簡単に辞めないで勤め続けようという姿勢が増すことは、好ましいことなのだろうと思います。
ただ、私はその理由が何なのかということが、少し気になります。
この調査によると、就職活動に際しては、「自分の希望よりもまずは就職すること」を最優先に考え、入社を決めた理由は「会社の雰囲気の良さ」との回答が過半数を超えているそうです。
今の新入社員は、安定重視で居心地のよさ求める傾向があるという分析がされていました。
就職活動の厳しさを反映している部分もあると思いますが、見方によっては、「もうこんな大変な思いはしたくないから、入った会社に何とか居続けよう」と思っているようにも捉えられます。
もしもそういうところがあるのだとすれば、問題なのは「定年まで勤める」ということが目的化してしまっているということです。
これから仕事をして行く中では、就職活動の苦労とは比べ物にならないような、厳しい場面に遭遇することはあり得ます。「勤め続けることの大変さ」がありますが、これを理解しないで、定年まで勤めることをただの安定と捉えていると、厳しさに耐えきれずにメンタルダウンなどを起こしてしまったり、責任回避や逃避の行動を取るようになってしまったりするかもしれません。
「無理して会社にしがみつく」「失敗を恐れて守りの姿勢になる」ということになってしまわないかが気になります。
「定年まで勤めたい」という気持ちの中身が、「縁をもらった会社に長らく貢献したい」「時間をかけて実力を身につけ、発揮したい」「腰を落ち着けてしっかり仕事をしたい」ということならば良いですが、「同じ会社に居続けた方が楽だろう」という感覚があるとしたら、これはあまり好ましいことではありません。
彼らの安定志向の中身を良く見た上で、これからの指導の仕方を考えて行く必要があるように思います。
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