小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ不足がやる気につながる「欠乏動機」が効かない時代
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いろいろな企業での課題をうかがう中で、「モチベーション(動機づけ)」というキーワードがテーマとして出てくることがよくあります。
組織で働く人たちのやる気を生み出す、モチベーションを高めるということは、私が関わるテーマの中でも重要なことの一つですが、最近はこのあたりの構造が変わってきていると言われています。
いろいろな要素がある中で、少し前から言われていることの一つに、「ハングリー精神の欠如」があります。今の自分に足りていない物を、何とか自分のものにしようという気持ちに由来するモチベーションで、心理学用語では「欠乏動機」と言われます。
例えば、今の給料では良い生活ができないからもっと収入を上げたいとか、今は課長だが、もっと権限が欲しいから部長になりたいとか、そんな上昇志向に近い部分が「欠乏動機」と言われますが、最近は、その手のことではやる気、モチベーションにはつながらないということです。
別に部長にならなくてもいいし、ほどほどの生活ができるから、今の収入でも構わないというような感覚です。
「だから今どきの若者はダメなんだ!」などという批判はともかくとして、会社の人事制度上で行われている動機づけというのは、実際にはこの「欠乏動機」を刺激しようというものがほとんどです。
相変わらずに成果を上げれば収入が上がるとか、頑張れば昇格できて管理職になれるとか、そんなことばかりが中心になっています。
しかし、今どきの社員心理でどんなことにやる気につながるかというと、例えば「こういう上司と働いていて自分の勉強になる」とか、「こんな興味深い面白い仕事をしている」とか、「自分の仕事がこんなに社会に役立っている実感がある」とか、実はそんな内面的なことの比率がどんどん多くなってきています。
不足しているものを得ようという「欠乏動機」に対して、不足がなくても今よりもっとよくしたいという気持ちをやる気につなげる「成長動機」がありますが、この「成長動機」の要素がなければ、モチベーションにつながりづらくなっています。
内面的な動機というのは、個人の感じ方や主観に近い部分なので、モチベーションの刺激の仕方も個人個人で違ってきます。部下が10人いれば、その10人にまちまちのモチベーションを感じるツボがあり、なおかつその多くは「成長動機」ということになります。
しかし、部下を率いるマネージャークラスの人たちや会社は、今でも昔ながらの「欠乏動機」に基づく、画一的なモチベーション施策ばかりを考えているところが多いです。
「やる気がない」「積極的でない」「前向きでない」などの一方的な若手批判がありますが、こういう部分を見てくると、「モチベーション(動機づけ)の仕方が悪い」ということも、多分に言えるように思います。
お金、地位、ステータスでは、人はどんどん動かなくなっていくのではないかと思います。
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