小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「頑張ってもどうせ大差がない」という人の本質
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会社が社員のモチベーションアップを考えるにあたっては、仕組みや制度、仕事の与え方や指導方法、人間関係作りやキャリアプラン、その他いろいろな施策をからめて考えて行きます。「社員のやる気なんて結局は給料次第」などとおっしゃる方は今でもいますが、残念ながら人間はそれほど単純ではありません。
会社がそんなモチベーションアップや動機づけに向けた施策を行っている中で、こういう言い方をする社員がいます。
「頑張ってもどうせ大した差にはならないから、そこまでやりたくありません。」
人事評価などで良い評価をもらったとしても、一気に給与が上がる訳でもなく、急に出世する訳でもなく、仕事内容が良くなる訳でもないから、別にそんなにやる気を出さなくても、ほどほどで今のままやっていればそれで良いというようなニュアンスです。
確かに歩合給のような制度の企業で働く営業職などであれば、やったかやらないか(というより結果が出たか出ないか)によって、給与上の処遇は大きく変動しますが、他の一般的な企業や職種では、それほどメリハリが出ないことの方が多いかもしれません。
ここで、「ではもっと評価による給料差をつけよう」とか「年齢に関係なくどんどん昇格させよう」という話が出てくることがありますが、それで前述のような発言をした張本人が、本当にやる気を出して頑張るようになるでしょうか?
中にはそれをきっかけに頑張り始める人もいるでしょうが、私がこの手の発言をする人に話を聞いた経験で感じるのは、残念ながらそうではありません。
例えば、自分の仕事のパフォーマンスがいまいちだったとして、「やる気を出せばできる」「やる気が出ないのは周りのせいで仕方ない」といえば、いかにも実力を温存しているように聞こえますが、実際にはそれが本人の能力不足ということは往々にしてあります。
初めは本当にやる気が出ずに力をセーブしていたのかもしれませんが、その状態はいつの間にか自分の中に定着し、いざセーブしていた能力を使おうと思った時には、もうその力は消えてしまっています。
また、仕事自体への優先順位が低い、責任感をあまり持っていないというような人であれば、そもそも仕事に対する「やる気」自体を持ち合わせていないので、どんなに周りの環境が変わっても、本人の行動に変化はありません。
こういうものは、その人にしっかりと定着してしまっている職業観でもあるので、これを突き崩すことはなかなか難しく、時間も労力もかかります。
こう考えると、「頑張ってもどうせ大差がない」という人の多くは、「差がつくようになっても頑張りはしない」ということです。「頑張っても・・・」という言葉の背景には、言い訳の要素が多分にあります。
「やる気が出ない」などと斜に構えていても、結局損するのは自分です。頑張りの量に比例するかは別にして、差がないということは絶対にありません。自分のスキルや能力、他人からの信頼など、何かしらのプラスがあるはずです。
「頑張ってもどうせ大差がない」と一度でも思ったことがあるならば、自分のやる気のなさを周りのせいにしていないか、今一度見直すことが必要だと思います。
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