小笠原 隆夫
オガサワラ タカオダイヤル式電話の使い方を知らない世代
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あるラジオ番組で話していた話題ですが、その家ではまだダイヤル式の黒電話を使っていて、ある日遊びに来ていたお子さんの友達が電話の前で固まっていて、「どうしたの?」と聞くと、「これ、どうやって使うんですか?」と聞かれたとのことでした。
そりゃそうですよね。たぶん実物を見たこともないでしょうし、使い方なんて知らなくて当たり前です。「そんなことも知らないのか!」なんて責める人も普通はいないでしょう。
でも、会社の中だとこういうたぐいのことを責めたり、自慢したり、説教したりという人がいないでしょうか?
例えば
「昔は書類をいっぱい書いて覚えたもんだ」
「昔は機械なんかなくて全部手作業でやっていた」
「これが基本だからパソコンなんか使わないで手書きでやれ」
こんな言い方で、“勉強”と称して、今とは違う昔ながらのやり方を求められるというようなことです。
もちろん仕事内容によっては“基本となる理屈を覚える”、“本来の道筋を知る”、“出来栄えの違いを知る”などの効果はあるでしょう。特に物作りの現場であれば、職人的な感を養う、経験を積むといった意味では必要なことでしょう。
ただ、仕事上での多くの場合、今後二度と遭遇することがないような昔のやり方を強制してやらせても、そこにあまり大きな意味はないのではないかと思います。
私がいたIT業界で言えば、「昔は紙に手書きでプログラムのソースコードを書いていた」とか、「今のようにアイコンのクリックでなくテキストコマンドを覚えて入力していた」とか、「開発支援ツールがもっと低機能だった」とか、そんなことがありますが、今これらを持ち出してやらせることには、「昔は大変だったんですね・・・」ということを知ること以外、実務上の意義はほとんどありません。
自分自身の戒めも含めてのことですが、“経験の伝承”ということが大事である一方、仕事環境自体が大きく変わっているので、昔やっていた仕事のやり方で、そのおかげで身についたというような経験は、今となっては通用しないことがたくさんあります。
ただ、自分の経験を否定することはなかなかできないので、ついついそれを強制してしまう人がいます。
何が伝承する必要がある経験で、何が捨てるべき経験なのかを判断するのは難しいことですが、特に年長者はこのあたりを意識しておく必要があるだろうと思います。
ダイヤル式の電話の使い方を知らなくても、将来困ることはもう何もないはずです。
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