大東亜戦争から70年目の節目にあたる今年は、「安全保障関連法制による集団的自衛権の行使を、憲法解釈変更により認める」と言う安倍政権の姿勢が内外から問われることとなりました。

複雑な世界情勢が続く今の時代、

世界最強の軍事力を持つ米国でさえ単独で自国の安全を保つことは不可能なことであり、主義主張を同じくする国々と手を組んで同盟を結び皆で共通の敵による攻撃に備えようとしています。

この場合、大切なのは同盟関係にある国々がともにお互いの責任を果たすことであり、国際関係において自国の憲法を始めとする国内法は最優先事項とはならないということです。しかしながら、戦後の日本は米国による片務的な安全保障により、一切独立国としての武力行使の義務を負わずに、経済的協力関係と基地提供のみを条件に国の安全を保障されてきました。

近年、中国に習近平政権が誕生し、中華思想、一帯一路、海洋資源確保、国際金融への進出などの独自政策を強化することで、日本の領土や資源が侵略される危機を迎える事態となってきたことから、米国も日米が応分の負担をして中国の脅威にあたる事を求めています。そうした意味合いの集団的自衛権容認であり、憲法改正をおこなわないことで、従来からの専守防衛の精神を堅持しつつも安全保障を強化すべきというのが、安倍政権の姿勢ではないでしょうか。

今月取上げた本は、

米国最強の軍隊と言われる海兵隊の成立から、現在に至る道筋を解明し、なぜ海兵隊が強くなったのかを学問的考察で明らかにしたものです。著者の野中郁次郎氏は名著「失敗の本質」の共著者であり、軍事的経験や知見がある訳ではありません。むしろ優れた最強組織が如何にして出来上がったかという観点から海兵隊の変遷と今後を見据えてコンパクトにまとめあげるという結果を作り上げました。

何故海兵隊は最強なのか、どうしたら最強を維持できるのかを解明しつくした結果は、企業経営にもチームで仕事をする人々にも多くのヒントを与えてくれます。軍事オタクが興味本位で書いた面白本とは異なり学問的視点から解き明かした海兵隊の姿とは、陸海空という3軍を統合運用することが、近代戦における重要機能であり、固定観念に縛られず如何にして戦いに勝つかに徹底的に拘った結果、導き出された戦法であることを教えてくれます。

如何なる分野においても強い組織とは、

決して本来の目的を失わない組織であり、一点に集中して目的を達成しようと不断の努力を続けるものでした。簡単なようで難しいこの命題に着実にむかってきたからこそ、現在の海兵隊が出来上がったといえるのではないでしょうか。日本人に戦争とビジネスはむかないという定説を覆すためには欠かせない本だと実感しました。組織的な強さこそ、一人ひとりを守るという原点を知るうえでも貴重な一冊です。是非、軍事の本という先入観を捨て、強者の本質を知るという思いでお読み下さい。

～中公新書　野中郁次郎 著「アメリカ海兵隊」　税別720円～