石橋 大右
イシバシ ダイスケ脱炭素の最終兵器といわれるアンモニアエネルギーってなんだ?! 後編
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当記事の前編ではアンモニアをエネルギーとして利用する意義について解説しましたが、後編ではより具体的な取り組みをご紹介しましょう。
アンモニアをエネルギーとして使用するために実用化への研究が進められているのが、アンモニア発電です。アンモニアをエネルギー源として発電をして、その電力を供給すれば再生可能エネルギーではないエネルギー源として脱炭素を達成することができます。
実用化に向けて、すでに天然ガスにアンモニアを混ぜて燃焼する技術があります。天然ガスは炭素が含まれているエネルギーですが、石炭火力と比べるとCO2排出量が極めて低いことで知られており、そもそも天然ガスは化石燃料の中でも優等生というのが一般的な認識です。その天然ガスにアンモニアを混ぜて燃焼することで、CO2排出は最大6割程度削減できることが分かっています。しかし、これを燃焼すると有害物質である窒素化合物が排出されてしまうため、実用化に向けてこれをいかに克服するかが課題となっています。
もちろんこの問題についてもすでに研究が進んでおり、燃焼時の酸素濃度を調整することによって窒素が豪物の発生を抑えることができるそうで、その技術の確立が待たれます。
続いて、もう1つの取り組みもご紹介しましょう。重工業の大手であるIHI(石川島播磨重工業)では、2025年までにアンモニア100%による燃料化を目指し、その研究が進められています。こちらは天然ガスを使用することなくアンモニア100%なので、これが実用化されると脱炭素が完成します。2025年というと、そんなに未来の話ではありません。
あまり知られていないのですが、日本はアンモニアのエネルギー化技術で世界に先行しています。東北大学で100%アンモニア化の燃焼実験にも成功しており、日本では世界初の快挙が相次いでいるのです。天然ガスとの混合燃料やIHIによる100%アンモニアの燃料化など、これらの研究も世界に先駆けているもので、しかも日本は国全体として2050年までにアンモニアの需要が30倍になるという国の試算もあります。日本が進める脱炭素は、本気なのです。
もう少し技術的な話をしますと、アンモニアの生産工程で発生するCO2の問題があります。アンモニアを生産するには天然ガスの高圧かつ高温分離が必要になるため、この環境を作り出すためのエネルギーが必要です。現状ではそれを化石燃料に頼っている部分があるため、この生産工程を見直す研究もあります。
生産工程で使用するエネルギーを再生可能エネルギー主体に切り替え、水を電気分解して取り出した水素と窒素を化合することでアンモニアを生成すれば、より進んだ脱炭素版アンモニアの完成です。
それが発電に使用される日が、そう遠くない時期にやってきます。しかもそれが日本から始まるというのは、とても誇らしいことです。
私が代表を務める和上ホールディングスは太陽光発電による再生エネルギーの拡大を目指す環境ビジネス企業です。そんな立場からアンモニア発電の意義をお伝えするのは、再生可能エネルギーの限界を知っているからです。言うまでもなく太陽光発電は日光がないと発電できず、電力需要が大きくなる時間帯に発電量が大きくなってくれるとは限りません。化石燃料主体による発電からは脱却する必要がありますが、再生可能エネルギーだけで経済や社会を維持することも困難であると考えます。
そこで、このアンモニア発電です。再生可能エネルギーと人類の科学がうまく融合することによって脱炭素を実現し、持続可能なエネルギーのあり方を創り上げていくことは、人類全体に課された未来への宿題だと思います。