石橋 大右
イシバシ ダイスケ脱炭素の最終兵器といわれるアンモニアエネルギーってなんだ?! 前編
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日本は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として掲げ、それを世界に対して「公約」しています。これを私たちは「脱炭素」と呼び、各方面でさまざまな対応、対策が進められています。
この脱炭素という言葉を丁寧に読み解くと炭素を使わないことが目標であることが分かりますが、これは従来の省エネやCO2排出削減策などとは根本的に異なるものです。
これまでの省エネといえば、化石燃料を使うもののそのエネルギー効率を高めたり排出ガスの無毒化などが主流でした。確かにこれも効果はあるのですが、世界各国で経済成長が進み、エネルギーの大量消費が拡大するとこれだけでは追いつかなくなってきたのです。そこで生まれたのが、そもそも炭素を使わないようにする脱炭素です。
炭素に酸素が結合すると、CO2つまり二酸化炭素になります。このうち「C」が炭素なので、そもそも炭素が含まれている燃料を使わなければCO2も発生しないという考え方です。
その意味では原子力も有効ですが、原子力についてはさまざまな議論があるので、この議論が正しい方向に行くのを待ってはいられない事情もあります。
そこで注目されているのが、アンモニアです。
アンモニアというと尿に含まれている成分というイメージがとても強いですが、このアンモニアは肥料や接着剤などにも多用されている化学製品の優等生です。このアンモニアを化学的な材料として使うだけでなく、燃料として使う研究が進んでいます。しかも、その研究が日本で進んでいることをご存じでしょうか。
アンモニアは窒素と水素で構成されているため、アンモニアをエネルギーとして使用しても炭素が含まれておらず、CO2を排出しません。これは水素をエネルギーとして利用する構想と同様に、そもそも炭素が含まれていない燃料を使えばCO2が発生しないので、エネルギー源から炭素を使わないようにする脱炭素が有効である、となるわけです。
実は、尿にアンモニアが含まれているというのは正確ではありません。もともとはアンモニアだったものを肝臓で尿素という物質に変換され、それが体外に排泄されます。尿素は無害な物質なので、それが排泄されるまで体内をめぐっても問題がいないようにしているわけです。実に、人体というのはよくできていると思わされます。
このようにアンモニアは人体の中にも存在しているため、あらゆる燃料の中でも安全性が高い物質であるといえます。そのため貯蔵や輸送が簡単で、しかもすでに多くの化学製品の材料として使用されていることもあって、低コストです。まさに夢のエネルギーであるというのが、脱炭素でアンモニアが注目されている大きな理由です。
(後編に続く)