石橋 大右
イシバシ ダイスケデジタル家電大手のソニーが自己託送で全量自家消費を開始
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デジタル家電大手のソニーが、自己託送による太陽光発電で全量自家消費をするプロジェクトを発表しました。この自己託送というのは、自社の敷地外にある太陽光発電設備からの電力供給を受け、自社で消費するモデルです。自社内や消費地に太陽光発電設備を設置できないような場合であっても、再生可能エネルギーであれば外部からの供給であっても自家消費を見なすのが自己託送です。自社に十分な敷地がなくても自家消費型の太陽光発電に参入できることが大きなメリットですが、そのスキームをあのソニーが採用したことで話題になりました。
今回ソニーが発表した内容によると、太陽光発電設備は愛知県半田市にある「知多大動物病院」が保有する同県東海市内にある牛舎の敷地に太陽光発電所を設け、そこで得られた電力をソニーの拠点に供給して使用する電力の一部に充当するというものです。牛舎は一般的に平屋造りで広大な敷地を要することから、屋根には太陽光発電ができるポテンシャルがあります。今回のプロジェクトはそのスペースを有効利用するというもので、この地区で送電網を管理している中部電力の送電網を使って送電されます。
この件のプレスリリースではあまり強調されていませんが、私としてはこのプロジェクトには営農モデルに近い可能性も感じています。というのも、牛舎の中には生きた牛が生活をしているわけで、牛の生活環境を維持するには空調が必要になるからです。以前であればそこまで重視されることはなかったかもしれませんが、ここ十年来の夏の暑さは殺人的です。暑さのせいで人命が危険に晒されることもしばしばですが、それはもちろん牛にとっても同じです。そんな牛舎の屋根に太陽光パネルを設置することで、夏季の遮蔽効果が期待できます。すでに家庭用の太陽光発電システムではメリットとして認識されているもので、太陽光パネルがあることで夏季のエアコン出力を抑制できることが分かっています。牛舎という大規模な施設で同様の効果が得られるとしたら、まさに一石二鳥です。弊社、和上ホールディングスでは太陽光発電と農業の両立を図る営農モデルの推進も行っていますが、このソニーの自己託送プロジェクトに同様の意図があるとすれば、今後に向けて面白いモデルケースになるのではないでしょうか。
実はソニーはすでに、こうした分野に先進的な取り組みを続けてきている経緯があります。自社の工場内に太陽光発電設備を設置して自家消費に取り組んでいますし、再生可能エネルギー比率100%を目指す枠組みである「RE100」にも加盟済みです。ESG投資の時代に向けて、ソニーはすでに次なる一手を確実に打っていることを改めて実感できます。