石橋 大右
イシバシ ダイスケ卒FITはビジネスチャンス、という「チャンス」
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2019年からFIT(固定価格買取制度)が終了する人が増えてくる「卒FIT」により、太陽光発電で発電した余剰電力はどうなるのか、売電を継続するか、それとも蓄電池を導入する方がいいのかなど、この問題の影響を受ける人はどうしたらいいのかという点に注目が集まっています。
卒FITは新たな市場の開拓や再生可能エネルギーの利用促進のためなど様々な理由から、卒FIT電力の買い取りに積極的に乗り出している電力会社もあります。
こういった電力会社は大手だけでなく、新電力や関連企業などもそれぞれ卒FIT電力に対応した計画や構想を発表し始めています。
例えば、東北電力は「ツナガルでんき」というサービスの提供を予定しています。
サービスの内容は、主に下記の3つを予定しているようです。
① 卒FIT後の余剰電力を引き続き買い取る
② 余剰電力を全て自家消費で使いたい家庭に対しては、蓄電池やエコキュートの設置を提案していく
③ 消費しきれなかった電力を一時的に預かって、必要な時に預かっていた電力を返す
ツナガルでんきのサービスの詳細や電力の買取価格や申込方法などは、2019年6月頃に改めて発表される予定となっています。
卒FIT後の余剰電力の買い取りを予定している電力会社は東北電力以外にも、北陸電力や中部電力、関西電力や九州電力などもそれぞれ買い取りの意向を示しています。
どの電力会社も卒FIT後の買取価格などの詳細については年明け以降に決まるようですが、FITが適用されていた頃のような、比較的高単価での買い取りは期待できないと考えたほうがいいかもしれません。
また、中部電力はイオンと協力して電気買い取りのプランを計画しています。
その内容は、中部地方の卒FIT家庭から余剰電力が中部電力に提供されると、提供された電力量に応じて、イオングループの電子マネーであるワオンポイントが提供されるというものです。ワオンポイントの交換比率については、これから詳細を決めるようです。
イオンは2030年までに店舗から排出される温室効果ガスを2010年比で35%減を目指し、2050年にはゼロにする「脱炭素ビジョン2050」を掲げています。そのため、イオンは卒FIT電力を脱炭素の目標達成に有効活用していきたいという意向を示しています。
既存の電力会社以外にも、新電力や関連企業にも様々な動きが出てきています。
NTT西日本とオムロンが出資しているNTTスマイルエナジーは、買い取った卒FIT電力を新電力大手であるエネットを通じて、再生可能エネルギーの利用を希望する顧客に販売することを発表しています。
この他に、電力の流れを制御できるスマートグリッドや太陽光発電事業に力を入れているスマートテックは、東京、東北、中部、関西、中国、九州の6電力管内での卒FIT電力買取を考えています。
ここまで卒FIT電力の買い取りについてご紹介しましたが、忘れてはいけないのは蓄電池です。
世界は脱炭素に向けて動き出しており、日本も先進国の一員として、率先してその流れを進めていく責任があります。
そのため、売電型から太陽光発電の本来の姿である自家消費型への転向に舵を切っていくと推測できます。
実際に、ハイブリッド蓄電システムや太陽光発電が可能な屋根など、自家消費に向けた様々な製品が開発されています。今後は蓄電池やその他充電設備の技術開発が発展していき、今まで以上に家庭に普及していく可能性があります。
以上のように、高まる脱炭素の機運と卒FITによって、太陽光発電など再生可能エネルギーのあり方と共に、私達のライフスタイルも変わろうとしています。
きっかけはどうあれ、新しいビジネスチャンスが生まれるとともに、社会がより地球に優しい方向へ転換していく鍵になると思われる再生可能エネルギー市場の、今後の成長に期待したいと思います。