糖尿病は「食べて」治す!カロリー以上に大切な要素とは?(3)
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(続き)・・仮に意思の力でカロリー制限に慣れたとしても、糖尿病がすんなりと改善に向かうとは限りません。特に元々食事量がそう多くない痩せ形の糖尿病患者の場合、単純に摂取カロリー量を減らしても効果の出ない場合が少なくありません。そのような方は少ない食事量をさらに減らしても、あまり効果が出ないのは当然です。それどころか食事量を減らした結果、かえって血糖値が高くなることも往々にしてあるのです。
実際に糖尿病の外来では、せっせとカロリー制限に励んでいるのに成果の現れない方が無数にいます。涙ぐましい努力にも関わらず、月1回測定する血糖値や平均血糖を示すHbA1c(ヘモグロビンAワンC)がなかなか低下せず、逆に上昇傾向を示すことが決して少なくありません。患者本人の失望はもちろんのこと、担当する医師も「なぜなんだろう・・?」と忸怩たる思いをして患者の後ろ姿を見送るのです。
また厳しいカロリー制限によって首尾よく体重と血糖値が下がったとしても、体調が悪くなっては元も子もありません。特に痩せ形の患者が無理にカロリー制限をすると、体にとって必要な栄養素、例えばビタミンB群や鉄、亜鉛、マグネシウムなどが不足することがよく起こります。単純に食事量を減らすと、このような「微量栄養素」の摂取量も減少してしまうため、その欠乏症に見舞われてしまうのです。
例えばビタミンB群の一つであるビタミンB1は緑黄色野菜や豚肉などに豊富に含まれていますが、欠乏すると糖質の代謝に支障が生じ、疲労が取れないばかりか、かえって血糖値が上昇してしまいます。また亜鉛は牡蠣など貝類やレバー、豆類などに豊富ですが、欠乏すると皮膚や粘膜が弱くなり風邪をひきやすくなると伴に、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの活性が低下し、糖尿病が悪化することが知られています。
糖尿病の食事療法に於いては従来、摂取カロリー数と並んで「3大栄養素」である糖質、脂質、タンパク質の比率にも目標を掲げてきました。日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド」によると、糖質から55~60%のエネルギーを摂取し、残りを脂質とタンパク質から摂取することが推奨されています。これは一言でいうと、エネルギーの半分以上を「糖質」から摂取し、脂質の摂取をできるだけ抑制する、という目標設定です。
すなわち食事量を全体として減らす中で、とりわけ肉や魚など脂質やタンパク質の豊富な食材の減量幅を大きくし、ご飯やパン、麺類など糖質の豊富な「主食」の減量幅を最低限にする、というニュアンスのダイエット法となっています。そのようにして糖質の摂取量を確保し、脂質やタンパク質の摂取量を大幅に減らすような食事法が勧められていますが、これは果たして充分な効果を挙げているのでしょうか・・(続く)