大澤 眞知子(カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)- コラム「The Power of Peers 同級生との時間をなくした10代の脳」 - 専門家プロファイル

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The Power of Peers 同級生との時間をなくした10代の脳

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留学 大学・高校正規留学 2020-07-13 07:22

コロナパンデミックが大きな打撃になったかも知れない10代の脳。

脳の発達最終段階中の10代後半・高校生がパンデミックから被った最大の打撃は、実は「同級生のいない時間」だったかも知れません。

 

「同級生との時間をなくした」10代、その完成出来なかった脳は、今後の社会を大きく変える可能性もあることを、心理学研究を混じえながらお話します。

 

特に、パンデミックが叩き潰した高校留学から、引き剥がされた10代の脳には深刻なダメージの可能性もあります。

 

学校に行き、一日の大部分を同年代の仲間と過ごす。

こんな簡単な日常が、10代の脳の発達には欠かせない重要な時間です。

 

学校無期限休校により、帰国した元留学生。

日本での新たな出発が決まった人も、まだ迷子の人も、もちろん「同年代の仲間」のいる生活ではなかったですよね。

日本の学校が再開してもその中には存在もなく。

 

また、なぜか流されるように留学先に留まった人。

ホストの家にこもり、同年代との接触は殆どない生活に疲れてしまったのでは。

 

もともと、日本からの留学生には、留学先で本当に心を許せる友を作るのは不可能に近い現実もあり、パンデミック前でも正常な「同年代との経験」は損なわれていた場合も多かったと思います。

 

そこが、実は、高校留学の大きな大きなマイナスでもありました。

パンデミックで「同年代との時間をなくした10代の脳」というより、「現実を見ず高校留学し同年代との時間をなくした10代の脳」なのかも知れません。

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10代が完成した大人になった時に、信じる価値観に大きく影響を与えるのは、親ではなく、同年代の仲間です。(Judith Harris, 1998)

その同年代たちが、ある一つの世代として社会を構成していくのが、はるか昔から続いている人間の歴史です。

 

共有出来る価値観を学ぶ場を取り上げられた10代は、どんな大人になるのでしょうか。

 

その分、親が面倒みているけど?

いやいや、親には同年代の仲間が持つパワーはありません。

価値観のみならず、性格形成にも一番大きな影響を持つのはPeers(同年代の仲間)の存在です。

 

10代からその大事なPeersを取り上げてしまったのがパンデミックでした。

(高校留学とは、わざわざそんなに大切なPeersを取り上げる行動とも言えます)

 

この説は1998年に、当時Harvard 大学大学院で学ぶJudith Harrisが発表し大反対にあいました。 そのため、HarrisはPhDまで進むことも阻害されたほどの大反対。

 

今までの通説「子供の性格・価値観は親の影響で決まる」を完全に覆したからです。 その後多くの科学者が研究を続け、現在は、Harrisの説がDevelopmental Psychology(発達心理学)の教科書に堂々と載るようになりました。

 

10代の子供は2つの環境に身をおいています。 家庭と家庭の外にある自分の世界です。 家庭では、親の期待に応えるよう行動しますが、どこまで親が許容するかも図りながら賢く行動出来るのも10代の特徴です。

(記憶ありますよね、親のみなさんも)

 

家から一歩外に出ると、10代は同年代の服装、習慣、10代の独特な言語など、仲間の決まりの中に入ります。

同年代の中で、同年代を観察しながら行動することは、自分が何者であるのかを認識するのに欠かせない経験です。

親を観察し、親に合わせて行動するだけでは「自分が何者か」の意識は育ちません。

 

自分の同年代と価値観を共有すること、これが一生に渡り自分の世代で生き抜くための鍵となります。

そこがうまく行かない場合、様々な心理的障害が表面に出てきます。

 

それでも親は一生懸命自分の子供ために環境を最良にしようとします。

親自らの持つ価値観、言語、習慣をコピーするかのような環境を、子供のために作ります。

親の用意した親自身の世代に合わせた環境は、もちろん、同年代の仲間との環境とは大きく異なり、ぶつかり合い、結果、親には勝ち目はありません。

 

The power of peersはそれほど強力だからです。

 

親のみなさんも覚えがあると思いますが、10代は親の真似などしませんね。

10代の若者は、同年代のスタイル、行動、態度を試しつつ自分の価値基準を作っていきます。

 

そのPeersグループが、同じ経験を共有して来た仲間として一緒に大人になります。

 

しかし、Peer groupに属することは無理やり合わせていくことではありません。

協力すること、友達のあり方、他と共生する方法などを学び、大人になるために必須の経験です。

Peer Group内での経験が10代の脳に複雑な知的理解を可能にする発達を完成させてくれるわけです。(Bukowski, 2001; hartup, 1999).

 

Peer Groupに属することで、10代は多様な考え方に晒され、価値基準がどんどん広がって行きます。

その広がった価値基準を試していく不安定な10代を支えるのは、心の許せる友達です。(またしても親ではありません)

 

心許せる少数の貴重な友達には、似たような自己認識があり、教育への同レベルの動機を持ち、政治的信条を共有し、違法な行動への許容範囲も共有します。

その中での経験が、大人に向かう10代の自己認識を更に高め、論理的思考能力を高めることになります。

 

信頼出来る仲間は精神的な大きな支えとなり、共に「自分が誰であるのか」の認識を育て成長して行きます。

 

もちろん、Peer Group内では意見の異なる仲間もいます。

当たり前です。

しかし、対立する意見を持つ仲間との経験も、実は計り知れないプラスをもたらします。

「何が良く、何が悪いのか」を判断する知的能力が発達するにためには必須の経験です。

 

「Peer Groupから引き剥がされた」10代の脳がいかに危機的な状況にあるか理解いただけましたか。

 

繰り返しますが、親のみなさんは、残念ながら、どんなに頑張ってもPeer Groupの代わりにはなりません。

10代の子供の脳の成長過程に無理やり参加しようとしても、効果は薄いです。

というより、逆の結果になることもあり得ますので、要注意。

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地球上に生きているもの、みな同じような成長過程をたどるのではと、私の愛する2匹の猫を観察して思います。

 

年上の猫は、生まれてすぐに迷子になり、用水路で溺れかけているのを助けました。

親も知らず、仲間の猫との経験もなく、ひとりぼっちで私のところで大人になりました。

今でも、心理的に不安定、他の猫との接触が非常に苦手です。

喧嘩するか、まごまごするかのどちらか。

価値観に未だに迷っているのかも。

 

年下の猫は、シェルター育ち。

5ヶ月目で私が引き取りました。

仲間にもまれ、食べ物の奪い合いまでしながらシェルターで社会性を身につけた猫は、非常に健全な精神状態にあります。

好奇心旺盛、学習するのも速いです。

他の猫が来ると、まずは「どんな猫かな?」と観察し、その後の対応を決めます。

甘えるのも上手で、誰にも好かれます。

 

2匹とも、最大限の愛情をかけて育てましたが、やはり「親」の出来ることには限界がありましたね。

 

「同年代との時間をなくした10代」の未来を危惧しています。

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