大澤 眞知子(カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)- コラム「「カナダ留学で個性を見つけたい」が見果てぬ夢にならないように」 - 専門家プロファイル

大澤 眞知子
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大澤 眞知子

オオサワ マチコ
( カナダ留学・クリティカルシンキング専門家 )
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「カナダ留学で個性を見つけたい」が見果てぬ夢にならないように

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留学 2019-07-18 07:02

「日本にいると個性が死んでしまうと感じますか?」という質問に出会いました。


答えは?

難しいですね。

クリティカルシンキング思考法を基に、「個性」とは一体何かの定義から始めてみましょうか。


一般的に日本は集団主義 (Collectivism) の社会で、個よりも集団が第一義として考えられています。

狭い島国で農耕社会として生存して来た必然的な集団主義です。


そう考えると、個性などは封じ込め、集団の和を大切にする日本では「個性は死んでしまう」のかも知れません。

もし、集団主義に自分を合わせていくならば、です。


しかし、現代の日本の若者たちは一体「自分の個性」を理解しているのでしょうか。

「自分の個性」すなわち「自分だけが持つ個としての特性」を知っても、集団主義の日本で生きるためにはそれを封印しているのでしょうか。

それとも、「自分の個性」自体を理解していないだけなのでしょうか。


私が毎日のように接している日本からの留学生に焦点をあててみると、日本の「個性事情」が少しは見えてくると思います。


「なぜ留学したいですか(しましたか)?」の問いにこう答える留学生が多いです。

「カナダで自分の個性を生かす教育を受けたい。」


カナダなど欧米は個人主義 (Individualism) 社会で、個の考え方・態度が集団よりも重要だと考えられています。

確かに自己主張は激しいですし、個としての自分を社会の中で独立した存在と捉えているのは歴然です。


3才児からすでに「自分とは?」を意識し、周りはそれを助けます。

小学校のカリキュラムは”Who am I?” “What are my gifts?” “What are my talents?” “What are my characteristics?” を徐々に認識出来るようデザインされています。

小学校中学年頃になると、「自己」と「社会」とを客観的に理解する訓練に移ります。


10歳くらいになると、「自分の個性」を社会という抽象的な概念の中で分析することが可能となります。

10代、特に高校生時には、「自分の個性・特性」がいかに社会に貢献出来るかを考え始め、それに従った進路を選びます。

大学の専攻を決める時も同じです。

社会での自分の「位置」を学ぶために、成績の良いカナダの子供ほど、アルバイトで社会勉強をし、ボランティア活動に積極的に参加します。

 

日本の教育は丸暗記はもちろん、「自己」を全面に押し出す教育は存在していません。

進路も、「偏差値」という「個性」とは全く関係ない尺度で決められてしまいます。

アルバイト禁止という化石のような学校も多いです。

ボランティアも旅行代理店が作った「集団で発展途上国体験」のようなままごとでお茶を濁しています。


そんな日本から、「自分が誰であるか」も「個性がいかに社会とむすびついていくのか」も全く知らない、考えたことのない留学生がカナダにやって来ます。

「カナダで個性を大事にする教育を受けたい。」と。


もともと「自分の個性」が何かも深く理解していない日本の高校生・大学生たちは、カナダでは相当の迷子となります。

「個人主義」のはずのカナダでも、「個人が個人であるため」のルールが存在することに驚きます。

「個人が個人であるため」には、つまり「自由に個性を表現するため」には、「自分と社会との関係」を確立する必要があることに愕然とします。


周りの同級生たちの大人さ、社会との接点、自己評価の高さに衝撃を受け、必死で真似をしようとしますが空回り。

その結果、カナダで本当に友達になるべき同級生との共通の話題も、同レベルの精神的成長度もないことから、真の意味でカナダ社会・教育の恩恵を受けることなく帰国して行きます。


「個性をみつけようとしたカナダ」で「個性がないために迷子」になってしまう留学生はIrony【皮肉】としか言いようがありません。


「個性をみつける教育制度」のカナダに留学し目的を達成するためには、カナダの子どもたちが生まれた時から高校生までに辿ってきた教育を、留学準備として必ず通り抜ける必要があるのはもうおわかりでしょうか。

留学相談ではそこを主眼に様々な提案をしますが、なかなか伝わらないことに歯がゆさを感じています。

「行けばなんとかなるのでは? エージェントもそう言ったから。」と。


最初に戻ってみましょう。


「日本にいると個性が死んでしまうと感じますか?」


「日本の教育下では個性そのものが存在していないので、自分が何者かを理解しないまま育つ。 個性が死んでしまうのではなく、存在していないことが一般的。」

「個性を尊重するカナダ教育の恩恵を期待する前に、自分を熟知し自分が誰であるかを明確に理解することが必須。 留学はそこから。」



Be Yourself.


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