
大澤 眞知子
オオサワ マチコグループ
日本で育つ子供の早期英語教育は効果がありません
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日本で育つ子供の早期英語教育は効果がありません。
ましてや、日本人の親が片言のカタカナ英語で子供に話しかける光景には笑いがこみ上げて来ます。
脳科学の見地と、38年の日本での英語教育経験からの「現実」をアドバイスしました。
【質問】
赤ちゃんから英語で育児をすれば良かったと後悔している三児の母です。
いま子供は9,6,4歳で、今からでも、少しでも多く、楽しく、英語を生活の中で取り入れていきたいと思うのですが、今ま で何もしていなかったので、子供が英語嫌いにならないか心配です。
ある日から突然、全く聴き取れない言葉で話しかけられながら、生活するのはストレスじゃないかな?と思います。特に上の子は。
【回答】
Native Speakerでもない日本人の親がいくら英語で話しかけても、子供はバイリンガルにはなりません。
英語教室に連れていくのも同じ、脳の言語部分にはほとんど効果はありません。
日本で38年、脳科学の見地からの言語教育を行い、現在カナダ在住です。
多くの日本の子供たちへの指導も行いましたが、早期英語教育は、どんな形であろうとも(英語圏で生活し、親のどちらかが英語が母国語という以外)、効果はありません。
少し前になりますが、大きな反響を呼んだアメリカからの研究論文結果がご質問に関係していると思います。
日本語の国で、日本人の親に育てられる幼児への英語教育には、脳の言語部分に影響を与えるほどの効果はないと推察出来る研究結果です。 (言語・脳・発達科学からの一連の科学的証拠によると)
その言葉を話す生身の人間が四六時中接する以外の方法では、まったく脳の言語部分には何の影響もないということです。
親がいくらカタカナ英語で話しかけても、英語教室の外国人も効果はないという結論です。
子供の脳の発達に一番大切な自由な遊びの時間を削ってまで、効果のない英語教育に走るより、将来「英語の論理を理解出来る脳」をそだててはいかがでしょう?
子供の脳の発達に最適の環境について、こんな科学的根拠も発表されています。(Rosenzweig, M.R. )
[はつかねずみを使った実験]
グループ1:何の刺激もない狭い檻の中で育ったねずみ。
グループ2:広い檻でおもちゃがいっぱいの中で育ったねずみ。
グループ2のねずみのCerebral Cortex [脳の神経細胞体が集中して存在する部分]はグループ1のねずみより大きく成長しました。
「じゃぁやっぱりCDでもDVDでも何でも刺激があるほうが・・・・」
いえいえ、実はもうひとつグループがありました。
グループ3:人工的におもちゃを与えるのではなく、広い自然の環境で冒険しながら育ったねずみ。
グループ3のねずみのCerebral Cortex はグループ2よりはるかに成長し、ニューロン間をつなぐSynapsの数も増えました。 身体を動かす能力、記憶能力、学習能力、外からの刺激に反応する能力(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)などに大きく勝っていました。
(*脳心理学の研究にはねずみをよく使います。 ねずみの脳細胞の仕組みが人間とよく似ているからです。 まさか、人間の子供を檻に入れて試すわけにはいかないですからね!)
無理にいろんな刺激を大人が用意するよりも、自然のまま、たっぷりの時間の中で子供本来の好奇心を育てるのがベストであると、大きな反響を呼んだ研究結果です。
たくさんの冒険と子供本来の経験を積んだ脳は、英語の論理を理解する準備が出来ていると思います。 個人差はありますが、小学3年生くらいが英語教育開始に最適です。
その時期から始める英語教育は、脳に英語領域を創り出せるプロセスで行うことも大切です。
現在小学校で行っているような、専門家でもない教師が変なアクセントで、決まりきったフレーズの使い回しをするレッスンでは脳に何も育ちません。
いきなり中学の文法を教えても、脳は単に日本語部分で理解しようとし、無理だとわかると暗記だけに頼るようになります。
脳を変える正しい方法で、10歳前後から外国語教育を行う。
これを経た生徒たちの18歳時点での英語能力は、日本人の平均をはるかに超えたものに成長して行きました。
38年の英語教育の経験と、言語・脳・発達心理学の研究からのアドバイスです。
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