大澤 眞知子
オオサワ マチコグループ
Tiger Parents - 虎のように子供の教育に厳しい親
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Scientific American Mind 最新号より
Tiger Parents Rear Anxious Cubs
トラのように子供の教育に厳しい親、子供をコントロールする親に育てられると、子供は心配でオドオドする人間に育つ。
そうです。
「子供の将来の成功!」への公式がどんどん退化し、すさまじく単純化されている今、親の役割は「子供を競争の中に追いやり、プッシュし続ける」ことになってしまっているようです。
良い仕事に就かせるためには、良い大学に入る。
そのためには、トップレベルの高校いや、中学、いやいや小学校に入れなくちゃ。
そんなルートに子供を全力で追いやる親達。
そんな親のことを Tiger Parents と呼ぶそうです。
子供自身はまだ何が起こってるかもわからないまま、親の言う通り頑張ります。
「良く出来たね〜」と褒めるのではなく、「次はこれ。」「次はあれ。」「あれはダメ」と子供の行動をコントールし「なぜこんなことが出来ないの!」と批判し、罰まで与えてしまう親のことを Tiger Parents と呼ぶそうです。
虎にとってはいい迷惑でしょうね。
虎の生きている自然界では、そのような子育ては生存のために必須なはずですから。
人間の子供にそんな育て方をするとどんな影響を与えてしまうかについての研究結果です。
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子供をコントロールし、学校の成績・順位などを厳しく批判する親に育てられると、子供は一生「心配性でおどおどした人間」として過ごす可能性が高い。
そのような厳しい育て方をする親(Authoritarian (権威的)と形容されますが)を持った子供は、大人になってからの人生で起こることにうまく対応出来ない。
批判されて育つ子供の脳には、長年に渡る大きな変化が起きます。
ミスを過大に認識する脳の部分を刺激し、訓練してしまうことになるからです。
脳が失敗を認識すると、ちょうどおでこの裏側にある脳の部分にある特定のパターンが生まれます。
Error-related negativity (ERN) という信号を送るです。
ERNは本来、また同じ失敗を起こす可能性のある行動を止めてくれる働きを持っていますが、権威的な親の及ぼす影響は、恐ろしいことにまったく逆の現象を引き起こしてしまいます。
ERNが過大に働き過ぎ、失敗を予知し防ぐどころか、失敗を多大に恐れる「心配・不安」精神状況を作り出してしまいます。
失敗は誰でも、いつでもやってしまうことですで、当たり前のことですが、Tiger Parents はその失敗をまるで子供の人格欠陥のように攻め立てる傾向があります。
その結果、子供は失敗をするごとにERNが過剰反応し、恐れて萎縮する「不安症」に発展してしまう可能性が高いそうです。
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わぁ。
日本の「うつ病」罹患率が異常に高いことの一因は案外Tiger Parents かもと思わせる研究です。
日本経済新聞にこんな報道がありました。
働きながら小さな子供を育てている親に今超人気なのが、幼児用の塾だそうです。
あ、今までも人気だったと思うよ。
と、反応した方。
実は違います。
親が働いている間、1日保育所で過ごした小さな子供達のために、夜通える塾が盛況だそうです。
幼いうちから「将来への成功の道」を作ろうと子供を追い立てたい親達の要望に応えるビジネスモデルです。
夜の幼児用読み書き、算数、もちろん英語、音楽教室も。
昼間は親が働いているので、夜しか時間がないそうです。
親の必死の形相が見える気がします。
でも、本当に効果があるのでしょうか。
幼児期は、生まれた後の脳細胞間のつながりが少し整理され、10代での本格的な発達の準備をする大切な期間。
そんな大切な時期の脳がとても心配です。
1日保育所などで様々な刺激を受け、緊張していた脳がますます緊張状態になってしまいますね。
特に前述のERN(失敗に反応する脳のパターン)が過剰反応するのも大いにあり得ます。
1日親から離れて保育所で過ごしたあと、また塾ですか。。。
読み書き、英語、音楽なんて、脳を自然に任せておいたら必ず出来るようになりますし、自然な環境で発達した脳の方が、後年学校での成績にはるかに良い影響を与えることは科学的に証明されているんですけどね。
自然に任せるって?
保育所に迎えに行って、一緒に買い物に行き、会話しながら家事、料理のお手伝い。
親との愛情あふれる言葉と行動とのコミュニケーション。
これが幼児にとって一番自然な夜の過ごし方だと思います。
残念ながら、日本ではTiger Parents の犠牲になる子供が後を絶ちそうにないですね。
追記:Tiger Parents に育てられている気配のする子供は、残念ながら英語の自由な創造性、想像力が理解できずに脱落するケースがほとんどです。 残念ながら。 失敗しないと育たないのが創造性と、想像力。
Good luck, Parents!
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Virtual Teaching を駆使し、 カナダの小・中・高校の教育課程を基にした指導をしています。
クリティカルシンキングの能力をつけた生徒は「カナダの小さな町での留学・ボランティア」で自分本来の能力を発揮中です。
Super World Club(大澤眞知子、Robert McMillan)
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