勝 桂子
スグレ ケイコこころ豊かに生きるにはDNAを理解せよ~毎日新聞掃苔記で表現されなかった主題
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2025年末に毎日新聞「掃苔記」の取材を受け、今朝1月4日の本紙に掲載されました(Web記事へのリンクあり)。
身元保証サービスとか終身一括サポートとか言われる各種サービスについて疑問を呈した弊事務所のYouTube動画についてです。
紙幅に限りがあり、いちばん伝えたかった部分が表現されなかったので補足してみました。
「こんにちは」の挨拶ひとつから
コンビニエンスストアでも牛乳配達でも新聞配達でもよいのです。
店員さんや配送員とときには会話して顔見知りとなり、数日音沙汰がなかったら、地域のおとしよりサポートセンター(エリアによって呼びかたは異なります)や社会福祉協議会に電話してもらうだけでよいはずなのです。
「除夜の鐘がうるさい」、「保育園児がうるさい」といった声は、「孤独だ」の裏返し。
じぶんの周囲に孫がいたら、そんな言葉は出るはずもないでしょう。
毎日顔を合わせる相手をつくらず、そういう機会が身近に転がっていても話しかけるのを避けていることが、孤独死につながってしまうのです。
それを予防するための社会のしくみをつくるなら、声かけしやすい配慮が必要となります。
独居のかたを行政に登録(これはようやく進み始めました)➡個人情報云々といわず、コンビニやまちの居酒屋と連携すること〝ありき〟で登録してもらう(※)➡店側も、独居と知っていたらできるだけあいさつひとつでも声掛けをする➡協力した店には地域買い物チケットとか出すetc.
これだけで、だいぶ変わるはずだと感じています。ただし、※印の部分にけっこうな配慮が要ります。
登録時の諸注意として「個人情報保護法に関する許諾」みたいな項目を設けチェックしてもらうと、そこで尻込みして登録を辞める人が多いです。そうではなく、「登録しないと孤立します」ということを先に、事例も示したうえで説明し、「個人情報をある程度開示してでも登録したい」と思ってもらう流れをつくることが必要ではないかと思います。
また、そこで収集された情報は原則として行政が扱い、訪問販売業者などにけして流れない仕組み(店側には〝独居である〟という事実だけが知らされ住所などが開示されないようにするなど)をつくることも必須です。
人間のDNAには、数十人の小集団で生活する狩猟時代のデザインが残っている
生物学者の小林武彦さんが2025年に上梓された『なぜヒトだけが幸せになれないのか』(講談社現代新書)には、こう書かれています。
(※著者の小林氏がYouTube動画などでお話しされている表現を含め、わかりやすく要約しています。カッコ内はわたしによる補足です)
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ヒトが二足歩行になったのは、およそ700万年前(猿人と呼ばれる時代)。そこから進化の過程を経てホモ・サピエンスが出現したのが20万年ほど前。狩猟採集中心の生活から農耕牧畜の生活に変わったのはおよそ1万年前(つまり、699万年間は狩猟生活)。ゆえに、ヒトのDNAはいまだ進化に充分についてこられておらず、20人前後の集団で、とれた獲物を山分けにする狩猟時代になじむようデザインされている(※)。
(山分けであれば、誰かが大きな獲物をとろうと自分と比較して凹む必要もない。獲物をとれない者は肩や足を揉み「よくやった!」と褒め、ゴザを編むとか子どもの世話をするとか、別な仕事をしたらいい。集団が20人前後だから、仕事のない者などいない。つまり現代における不幸や不安の要素は存在しない代わりに、飢えや狩猟失敗で命を落とす可能性はある。)
よってヒトの未来を希望あるものにする方法は2つ。
ひとつは自然回帰(完全に戻るのでなくとも、自然に負荷をかけない形に戻すこと)。もうひとつは、「発明・進化する喜び」を感じながらも、テクノロジーの使いかたを誤らないこと。具体的には、AIから得られた情報をもとに哲学的宗教的な「考察」を加え続けること。
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ひとつめの解決方法には、ボタンひとつでできあがる食事を見直し、たまには素材から調理してみるということなどがあると思います。昔の人は老後になると盆栽をいじりはじめましたが、これも「自然と向きあう」方法のひとつですから、晩年を希望あふれてすごすための立派な方策だったのです。
もうひとつの解決方法~哲学的宗教的な「考察」~は、ひらたくいえば答えのない問題について考え続けること、と置き換えられると思います。これはひとりで考えていてもしかたのないことです。地域の集いや飲み屋のカウンターでもいいのです。誰かと語らいながら自論を投げかけ、反対意見や別な角度からの意見をもらってきのうより今日、今日よりも明日、納得のいく答えに近づけてゆくことが必要だと思います。
語りかけることの重要性
「ヒトが希望にあふれて生きる方法は、20人前後の集団に置き換えて考えるとわかりやすい」という事実は、京都大学元総長で人類学者・霊長類学舎の山極壽一氏の『人生で大事なことはみんなゴリラから教わった』(家の光協会)を読んでも一目瞭然です。本書を読むと、文字を持たないがゆえに比較する必要もない遠くの出来事や自分には直接関係のないあまたの情報に一喜一憂することもなく、目の前の集団の生存に価値が集約されているゴリラの生きざまのほうが、揺るぎがなく賢いと思えるのです。
わたしたちは科学によって、自分たちがどのような生きものであるのかを解明することができます。
699万年/700万年のあいだ慣れ親しんだ狩猟生活時代のDNAから、農耕生活をはじめてからのたった1万年間で、爆発的に人口が増え、情報交換する相手も何十倍~何百倍になり、発明と進化の喜びに翻弄されて生活様式も一変させすぎてしまった、ということをよく知るべきです。
そして、ボタンひとつで手間なく済む生活が孤独を増長し、その孤独があなたのこころを蝕んでいると気づいたならば、ときには「少し前の、手間のかかる時代に戻ってみる時間」を、くらしのなかに取り入れることをオススメします。
まずは、行きつけのコンビニでもタバコ屋でもいい。毎日顔を見る誰かをつくること。その人に、挨拶をしてみること。
そういうことから、孤独でない終末期は紡いでゆけると考えます。
3士業の特徴と使い分け:毎日新聞「掃苔記」でご紹介した3つの柱は、各士業事務所へ
記事では、「遺言作成」「認知症への備え」「死後事務」の3つに切り分け、それぞれ(同じ人とでもよいのですが)公正証書で契約をしておけば、たいていの問題はクリアになる、と紹介しています。
これらの公正証書の作成相談は、弁護士・司法書士・行政書士いずれにもできますが、使い分けのコツがあります。
争いが予見されるのであれば弁護士。
不動産が多く、とりわけその活用方法について細かく指定したい場合には司法書士(特定の物件を売却して分けてほしいなど)。
不動産があっても争いのおそれがあまりなく、「付言」(※)の提案など予防法務に重点を置きたい場合は行政書士が適任です。
※ふげん。遺言の最後に付け加える、手紙のような文案。たとえば「あなたには結婚のとき住宅新築費用を何百万円あげているので、今回は長男に多めにしました。遺留分侵害額の請求などしないで、きょうだい仲良くしてほしい」など。弁護士に依頼すると、付言はつけない場合がほとんどです(複数の知人弁護士にきいてみたところ、「裁判のとき争点が曖昧になるため」だそうですが、公証人の多くは「付言があったほうが争いに発展しづらい」とおっしゃいます。争いを避けることが第一目的ならば、「付言」を書いたほうがよいと思います)。
公正証書はご自身で相談に行っても作成することはできますが、公証人は法律用語で説明しますし、原則として相談者が言ったとおりのことを法的に通用する文書にすることが仕事ですので、相談者が言及していない(たとえば遺留分に配慮した方策など)細かい事情を、あえて聞き取ってはもらえない場合もあります。
事例から、一般市民の皆さまが予想もしていないトラブルを予期できることも少なくありません。
また自筆証書遺言で、表現が不適切だったために(渡す相手が法定相続人なのに「遺贈する」と書いているなど)、無効となってしまったケースも多々ございます。
せっかく公証役場に費用を払って作成するのでしたら、士業にも少しの相談料を払ってできるだけ多くのケースに対応できる内容にしたほうがよいと考えます。
2026年初頭現在の法律では、遺言がないと、亡くなられたかたの「生まれてから亡くなるまでの戸籍」(きょうだい相続の場合は、ご両親の生まれてから亡くなるまでの戸籍も)が必要になります。その収集や遺産分割協議書等の作成を士業に依頼すると、30万円前後以上かかります(ご遺産総額によると思います)。
公正証書遺言の作成に10~20万円かけても、じっさいの相続手続きのときの手間と費用が大幅削減されますので、お元気なうちにぜひご準備ください。
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