小松 和弘(経営コンサルタント)- Q&A回答「個人事業主登録は青色申告のメリットを受けるか否かで決まります」 - 専門家プロファイル

小松 和弘
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コマツ カズヒロ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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ネットショップ開業について

法人・ビジネス 独立開業 2009/06/04 17:12

ネットショップを開業しようと今着々と準備をしており、仕入先等も決まっております。
現在会社員として勤務しておりますが、副業として始めたいと考えております。そこで、個人事業主登録をするべきなのか、それとも特に個人事業主登録せずに始めるべきか、登録するかしないかの違いがどれくらいあるのかを教えていただけますでしょうか。

また個人事業主登録をしない場合、店舗名は○○○ショップという形で表記しても良いのでしょうか。

副業の場合会社の規則によるということですが、会社がOKで
あれば特に個人事業主登録をしても法律的には問題がないと
いうことですか。

まずは副業として始め、起動に乗ったら会社を辞め、専門でやっていきたいと考えております。
教えていただけると幸いです。
宜しくお願い致します。

ireさん ( 神奈川県 / 女性 / 29歳 )

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個人事業主登録は青色申告のメリットを受けるか否かで決まります

2016/12/05 21:45

ireさん、こんにちは。今回頂きましたネットショップ開業に関するご相談について、回答します。

1.個人事業主登録について
まず、「個人事業主登録するか否か」に関するご質問ですが、個人事業主になった場合のメリットは何か、逆にデメリットは何かというところから説明しますね。

A.個人事業主のメリット
個人事業主のメリットを説明するためには、税金の仕組みから説明する必要があります。まず、一定の所得を得た人は、それに見合った税金を納めなければなりませんが、その納税額を決定するために行うのが確定申告です。納税額は1年間の収入や売上(またはその合計)からその収入や売上を得るためにかかったお金(必要経費など)を差し引いた“所得”によって決まります。年間の所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。
確定申告には白色申告と青色申告の2種類の方法があります。白色申告は申告に手間がかからない分、支払う税金の額が小さくなる効果(節税効果といいます)がないことが特徴です。一方、青色申告は申告の手間がかかる分、節税効果が高くなっています。以前は、両者には帳簿付けの有無で労力の差がありましたが、現在は、白色申告者にも帳簿付けが義務付けられたこともあり、税制上のいろいろな特典(控除)がある「青色申告」がお得なのです。実は、この青色申告を行うためには、個人事業主登録が必要なのです。(もちろん個人事業主でも白色申告を選択することも可能です)
では、次に青色申告すると、どのようなメリットがあるのか具体的に見ていきましょう。

a.青色申告特別控除を受けられる
青色申告では、帳簿を複式簿記で管理していれば最高65万円、簡易簿記で管理していれば最高10万円を課税所得から控除(青色申告特別控除)できます。以前はこの複式簿記が手間だったわけですが、最近は、自動で複式簿記の帳簿が作成できる青色申告ソフトも販売されています。

b.純損失繰越控除ができる
個人事業を開始した初年度や大きい投資を行った年度などでは、売上高よりもかかった経費の方が多くなり赤字になってしまうことがあります。青色申告をしている個人事業主であれば、その年に生じた損失を翌年以後3年間繰り越して翌年以後に発生した所得額(黒字の金額)と相殺し、納税額を抑えることができます。少し具体例を挙げて説明します。

1年目 △70万円の赤字
赤字ですので所得税はかかりません。

2年目 60万円の黒字
60万円の黒字であるにもかかわらず、この60万円の黒字額と1年目の70万円の繰越損失額(赤字額)を相殺することができ、相殺額が△10万円となるので、所得税はかかりません。

3年目 90万円の黒字
3年目の確定申告時には、利益額が90万円だったにもかかわらず、前年度から繰り越した損失(△10万円)と相殺した後の80万円のみが課税の対象となります。

c.経費計上の幅が広がって家族への給与等を必要経費にできる
個人事業主であれば、家族(従業員扱い)に給与として支払いうことで、それを経費にすることが可能(青色申告専従者控除)ですし、賃貸であれ持ち家であれ、オフィスとして利用しておれば、家賃や光熱費などの一部を経費に計上することができます。そうすることで納税額を小さく抑えることができます。

d.貸倒引当金で代金の未回収リスクに備えられる
事業の取引では、「先に物を渡し、代金回収は後日に」という商慣習があります。これを掛け売りといいますが、これだと物を売ってからお金が入るまでタイムラグがあります(売掛金)。また、同時に取引相手の資金繰り悪化などの都合で代金を回収できないリスクを持っています。このリスクを軽減するのが貸倒引当金です。青色申告では、売掛金残高の5.5%を必要経費計上でき、リスクに備えることができます。

B.個人事業主のデメリット
逆にデメリットについても触れておきたいと思います。

a.経理が面倒
青色申告では、複式簿記での記帳が必要になり、損益計算書と貸借対照表の両方を作成し、決算書として毎年3月15日までに提出しなければいけません。また前述のとおり、必要帳簿類も増えるため、結果として、手間と労力を含め管理コストがかかってくることになります。

b.失業保険が出ない
個人事業主は被雇用者(労働者)ではないため、労働基準法や一般的な手当て、社会保険の対象外となります。 そのため、お勤めの会社を辞めても、「開業停止届け」や「廃業届」を提出するまでは、失業保険をもらえない可能性があります。

このように、個人事業主にはメリットとデメリットがありますが、結局は、個人事業主になって青色申告でメリット享受できるか否かで判断されると良いでしょう。


2.ネットショップの店舗名称について
次に、ネットショップの店舗名称についてです。店舗名称は屋号とも言われますが、個人事業主登録の有無に関わらず、ireさんが自由に決めることができます。ただ、注意すべきことがあります。まず、一つ目は、他者が使っているような名称は避けることが必要です。法人あるいは個人事業主が使用している企業名やショップ名には、商号や商標が取得され、権利が保障されている場合があり、その場合は店舗名に使えません。一度、ショップ名だけでなく、ショップ、販売、通販、ネットショップなども組み合わせてネット検索して見ることをお勧めします。また、同じでなくとも似たような名前も、他社とのトラブルのもととなりかねないので、避けるべきでしょう。ある程度候補名が絞り込めれば、特許情報のプラットフォーム“J-PlatPat”で候補名称が商標登録されているか否かの確認をするといいでしょう。
次に、お客さまが、直接ireさんのショップ名で検索することはほとんどなく、商品名やサービス名を検索してくる場合が大半だと思います。よって、検索されやすい名称を店舗名として考えておくと良いでしょう。商品やサービスの名称と同じにしたり、あるいは、それらを連想させる名称を設定することが望ましいと思います。是非ご検討ください。


3.個人事業主としての開業可否
会社員としての身分を保ちながら、個人事業主として開業することですが、法律上の問題は何もありません。開業届など必要書類をお近くの税務署に提出するだけで、会社員のまま、個人事業主になることができます。
ただ、会社の就業規則やご自身の雇用契約にどのような条件が付されているのかを今一度ご確認下さい。また、ireさんが始められる事業がお勤めの会社業務と競合するような事業である場合は、競業避止義務違反となる場合もありますので注意が必要です。


4.最後に
個人事業主として開業することも十分に可能です。ireさんがお考えの事業の年間所得がどの程度なのでしょう。事業の立ち上げ時に、申告用の会計ソフト購入も含めて青色申告ができる体制を整えるのは負担に感じられるかもしれません。であれば、所得が20万円以上で確定申告が必要になる頃に個人事業主として登録して、まず簡便な白色申告から始め、年間所得の規模が大きくなり青色申告のメリットが享受できそうな時期に、青色申告に切り替えるといったステップを踏むのもいいかもしれません。また、この時期に手続き等も含め、一度税理士などの専門家へ相談すると良いでしょう。

補足

【参考資料等】
・国税庁:http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1900.htm
・お店の名前の決め方:http://netshop.hajimeyou.com/shopname/

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