小松 和弘(経営コンサルタント)- Q&A回答「開業資金を上手に管理して、開業準備のために有効に使いましょう」 - 専門家プロファイル

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コマツ カズヒロ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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開業に際して

法人・ビジネス 会社設立 2008/05/13 02:22

近いうちに起業するのですが、親から300万円を借りる予定になっています。まずは、個人事業ではじめて、その後に法人成りと思っていましたが、親からの借り入れならば株式会社のほうがメリットがあると聞きました。贈与などに関連する問題なのかと思いますが、いまいちよく分かりません。どのようなメリットがあるのでしょうか?
あと、開業準備にかかる経費は、どこまで認められるのでしょうか?例えば、開業後に備えて1年以上前に購入したようなものなども経費として計上できるのでしょうか?
いろいろと勉強不足で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

RICARDOさん ( 東京都 / 男性 / 31歳 )

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経営コンサルタント

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開業資金を上手に管理して、開業準備のために有効に使いましょう

2019/09/23 18:22

RICARDOさん、こんにちは。ご質問は、親御様から起業資金援助を受ける場合の株式会社化のメリットと開業準備の経費が認められる範囲など、開業資金の上手な管理方法を知りたい、ということですね。

1点目のご質問の「親御様から起業資金援助を受ける場合の株式会社化のメリット」ですが、考慮する観点は、『贈与税』、『自己資金割合』、『株式会社化による費用』の3つがあります。
『自己資金割合』とは開業資金のうち、借入でなく、自力で用意した資金の割合です。今後、事業が大きくなり、公的融資や金融機関から借り入れる際に融資の審査において自己資金割合が1つの重要な要素になります。
『株式会社化による費用』とは個人事業では発生しない、株式会社の運営に伴う費用です。
例えば、個人事業はお小遣い帳のような簡易な記帳方法「単式簿記」、正規の簿記の方式「複式簿記」(現金の動きと現金が動いた理由も表すもの)のどちらも選択できますが、株式会社は「複式簿記」による記帳が原則となり、決算書類の作成も必要になります。
この他にも株式会社であるがゆえの責務が多々あり、個人事業と比較した事務負担の差は考慮する必要があります。
次に、親御様から起業資金援助を受ける場合の株式会社化のメリットを考える上で、援助の3つの方法 (1)贈与金として受け取り、(2)借入金として受け取り、(3)株式と交換して受け取り について上述の観点を踏まえてご説明します。

(1)贈与金として受け取り
贈与税の基礎控除枠である年間110万円を超える贈与を受ける場合、RICARDOさんに贈与税がかかります。贈与税額はその年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額から基礎控除額110万円を差し引いた金額に率を乗じて計算します。
300万円を1年間に一括して贈与を受ける場合の贈与税は19万円となり、贈与税の支払後に残る281万円を自己資金にすることができます。
また、300万円を毎年110万円以下で3年間かけて贈与を受ける場合には、贈与税は発生しません。

(2)借入金として受け取り
親御様からの借り入れならば贈与税はかかりませんが、借入なので自己資金とはなりません。
親御様とはいえ借り入れする際には、返済期限や利息などを記した借用書を準備しておくことをお勧めします。贈与とみなされないようにするためと、返済が終わるまでに相続が発生した際は親からの借入金として相続対象となるためです。

(3)株式と交換して受け取り
親御様が株主として300万円を株式で保有してもらいます。この方法であれば贈与税はかかりませんし、自己資金としても認められます。
以上のことを考え合わせますと、親御様から起業資金援助を受ける場合の株式会社化のメリットは
贈与税を払うことなく『自己資金割合』を増やすことができる点です。
しかしながら、デメリットは先に説明した『株式会社化による費用』がかかることです。
株式会社にするメリットとして節税の範囲が広がる点も挙げられますが、起業し初めで事業規模が小さい段階では節税のメリットは少ないでしょう。
また、株式会社を設立する際には登記などに少なくとも20~30万円はかかりますし、会社設立後は法人税等や社会保険料の出費や事務負担も発生します。これらの費用が起業の初期段階で発生すると資金を圧迫することになります。
ついては、株式会社にするタイミングは事業規模と事務負担に対しての節税の効果を照らして考えましょう。一般的には事業所得が1千万円を超えると株式会社化するメリットは大きいと思います。

法人成りはいつでもできますので、個人事業で起業し、親御様からの起業資金援助は贈与と借入を活用することをお勧めします。具体的には最初は300万円を借り入れで受け取り、毎年の贈与税がゼロとなる範囲内で贈与を受けて借入金を減額する方法です。
その後は、事業規模が大きくなり資金的な基盤が整ってから、株式会社にすることを検討してもよいでしょう。


次に、開業準備にかかる経費はどこまで認められるか、というご質問に回答します。
まず、株式会社など法人の場合についてご説明します。
開業に関する費用については、法人税法上、創立費と開業費に分けられます。
創立費とは、会社を設立登記するまでにかかった費用です。創立費として計上されるものは、定款の作成・認証費用、登録免許税、事務所・店舗の賃料、株主を募集するための広告宣伝費、発起人への報酬などです。

開業費とは、設立登記してから営業開始するまでにかかった費用です。印鑑・名刺などの作成費用、出資者との交際費・接待費、消耗品の費用(事務用品など)、開業を知らせるための広告宣伝費(チラシ代など)、市場調査の費用、などが挙げられます。
創立費と開業費は、どちらも繰延資産として計上されます。繰延資産とは、会計上、本来は費用に計上されるものでも、その効果が将来にわたってあらわれることから一時的に資産として認められるもののことです。

繰延資産には、会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の2種類がありますが、大きく異なるのは償却する期間です。会計上の繰延資産は5年間の均等償却、税法上の繰延資産は任意償却です。実務上では、税法上に則って償却するケースがほとんどのようです。
また、「いつから」経費になるかについては法令上には明確な規定はなく、実態に即して考えて「法人の設立のために支出した費用」であれば問題ないと思います。

次に個人事業の場合ですが、開業費については定義されていません。何年前の出費でも開業のための支出であれば開業費として処理できます。しかし、実際には、物品購入が開業から何年も前まで遡るのは不自然ですので、通常は、数カ月~半年前までが一般的と考えられます。
開業に向けた出費を開業費として計上するためには、物品購入などは必ず領収書を保管し、帳簿付けをしておくことが望まれます。

(ご参考)
法人税法施行令第14条
(繰延資産の範囲)
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340CO0000000097#347

最後に、実際に開業の前後で具体的な不明点もでてくるかと思います。そのような場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
以下に相談可能な機関をご紹介しますので、ご参考にして頂ければと思います。

TOKYO創業ステーション(東京都中小企業振興公社)
http://www.tokyo-kosha.or.jp/station/services/planconsulting/
ミラサポ「創業企業・地域の相談窓口」(中小企業庁)
https://www.mirasapo.jp/starting/specialist/chiikimadoguchi.html
東京開業ワンストップセンター(東京都産業労働局)
http://www.tokyo-sogyo-net.jp/soudan/kaigyo_onestop.html
東京商工会議所(創業支援センター)
https://www.tokyo-cci.or.jp/entre/

RICARDOさんの起業が円滑に進み、新たな事業が成功しご発展することをお祈りいたします。

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