小松 和弘(経営コンサルタント)- Q&A回答「海外から日本への食品の一括発送は手続や税法の対応が必要です。」 - 専門家プロファイル

小松 和弘
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コマツ カズヒロ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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海外拠点のネット販売をするにあたって、日本国内の代理発送

法人・ビジネス 経営コンサルティング 2019/06/26 13:58

現在カナダで、りんご酢をベースとする食品を生産、販売しております。カナダの食品衛生法、販売に関する許可は得ており、店頭販売を行っています。
今回日本へもネット販売を開始しようと思っておりますが、個人輸入ですと送料がかなり高額になります。
そのため、日本国内の家族の元にまとめて送り、そこから発送して国内一律又は無料での配送を考えています

まとめて送る場合、日本側で輸入手続きが必要になりますか?販売者は私自身でカナダの住所を記載します。

食品の代理発送における、関税および輸入手続きに関する情報を教えて頂ければ幸いです。

又売り上げに関して、代理発送をする場合日本側にも利益を残すべきですか?
日本に銀行口座はありますが、現在は住民票を抜いています。

ハーバリストさん ( 三重県 / 女性 / 38歳 )

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経営コンサルタント

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海外から日本への食品の一括発送は手続や税法の対応が必要です。

2019/07/29 22:02

ハーバリストさん,こんにちは。ご質問の一つ目は,海外から日本への食品のネット販売で日本の家族が代理発送した場合輸入手続きが必要になるか,及び関税についてですね。また,二つ目のご質問は,所得税等の税金との関係で日本に利益を残すべきなのかという趣旨と理解しましたので,その前提でご回答させていただきます。

1 輸入手続き
 (1) 食品衛生法
販売目的で食品を輸入する場合,食品衛生法に基づいて厚生労働省の検疫所に「食品等輸入届出書」を提出し,輸入届出を行って審査を受ける必要があります。輸入届出を行わなければ日本国内で販売することはできません。具体的な手続きの流れや必要書類については,厚生労働省の下記サイトに掲載されています。
日本の家族を通さずに直接購入者に送る場合は購入者が輸入者となりますので,購入者が販売目的ではなく個人使用目的であれば前述の届出は必要ありません。しかし,検疫所に確認したところ,いったん日本国内の家族のもとに商品を送るのであれば,ハーバリストさんが輸入者となるため,販売目的の輸入として届出が必要になります。
審査の結果,不合格となると輸入貨物の廃棄等のリスクが生じますので,事前に各検疫所の相談窓口でのご相談をお勧めします。

[食品衛生法に基づく輸入手続]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144562.html

 (2) 家畜伝染病予防法,植物検疫法
 また,ハーバリストさんが販売する食品が,食肉や野菜,果物を使用する場合には,農林水産省の動物検疫所や食物防疫所に届出をして検査を受ける必要が生じることもあります。

 (3) 営業許可
 食品をインターネットで販売するには,食品衛生法により,商品の発送拠点となる保管場所に,食品の種類に応じて保健所の営業許可が必要となることがあります。そのため,ハーバリストさんが食品を送るご親族のもとを管轄する保健所に,事前にご相談ください。

 (4) 表示規制
 輸入手続ではありませんが,海外からとはいえ日本向けに食品のネット販売を行うには,食品表示法により,販売する食品に,名称,アレルゲン,保存の方法,消費期限,原材料,添加物,栄養成分の量及び熱量,原産地等を表示する義務があります。詳細は下記相談窓口にてお問い合わせください。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/j_toiawase.html

 また,海外から日本へのネット販売にも特定商取引法が適用され,事業者の氏名,住所,電話番号などの表示義務があり,誇大広告禁止されます。違反すると行政処分や罰則の適用を受けますので事前によくご確認ください。

2 関税
外国貨物を国内に引き取る際,原則として税関へ輸入(納税)申告を行い,税関の検査が必要な貨物は必要な検査を受けた後,関税及び消費税を納付する必要があれば納付し,輸入の許可を受ける必要があります(輸入通関手続)。通関手続はご自身で行うこともできますが,ハーバリストさんが小口貨物(国際郵便・宅配便)での輸入をお考えであれば,通関手続は通関業者と呼ばれる各運送業者を通じて行うのが一般的です。

[個人輸入通関手続]
http://www.customs.go.jp/tsukan/kojinyunyu.htm

ハーバリストさんが日本の購入者に直接発送する場合,購入者が個人使用の目的であれば,購入者による個人輸入であり関税の納税義務者は購入者となります。他方,ハーバリストさんが日本国内の家族に商品をまとめて送るのであれば,ハーバリストさんが販売目的で輸入したとして納税義務者はご自身と扱われる可能性があります。
課税対象額が1万円以下であれば原則的に関税と消費税は免除されます(関税定率法14条18号)。課税対象額は,個人使用目的の輸入であれば商品価格に0.6を掛けた金額ですが,個人使用目的でなければ0.6は掛けられず,商品価格に送料,保険料を加えた価格となります。このため,日本の購入者に直接発送するか,日本国内にまとめて送るかで,関税や消費税に差が生じ得ます。
また,課税価格が20万円以下であれば簡易税率,これを超えると一般税率が適用され,簡易税率なら複雑な証明書類の提出が免除されます。通関業者を使わずご自身で輸入申告されるのであれば,簡易税率の適用となるかも注意が必要です。
関税については事前にきちんと確認しておく必要がありますので,詳細については事前に下記窓口等でご相談されることをお勧めします。
http://www.customs.go.jp/tokyo/zei/i_sodan1_1.htm

3 所得税・法人税
 非居住者,外国法人に対しては,所得税,法人税は,国内源泉所得に限って課税されます。非居住者とは,日本に住所がなく,また1年以上日本に居所を持たない者のことです。ハーバリストさんは日本の住民票を抜いてカナダでお住まいなので,1年以上日本に居所がないのであれば,非居住者となります。

非居住者・外国法人の課税対象となる国内源泉所得とは,その所得の発生源泉が日本国内にあるものをいい,所得税法,法人税法で列挙されています。非居住者が日本国内に恒久的施設をもち,非居住者の所得がこの恒久的施設に帰せられる所得であれば,国内源泉所得として非居住者に所得税,外国法人には法人税が課税されるという恒久的施設帰属所得がその一つです。
ハーバリストさんが日本で所得税等が課税されるかは,まとめて送る日本の送り先が恒久的施設に該当するか否かによります。どのような結論になるかは実態等を踏まえた微妙な判断が必要です。海外に在住しネットで自動車用品を日本に販売する者が,海外で仕入れた自動車用品を国際宅配便で日本に発送してアパートや倉庫で保管していたという事案では,国税不服審判所,裁判所が,このアパートや倉庫を恒久的施設と認定し非居住者に納税義務があると判断したものもあります。ハーバリストさんの場合もどのように判断されるか分かりませんので,事前に課税庁によくご相談ください。

少なくとも,日本国内に利益を残すか否かでは所得税・法人税の課税には影響はありません。日本の銀行口座に売上げを残しておけば税金の支払いは簡便にはなりますが,非居住者として口座解約とならないか,ご利用の金融機関にご確認ください。

[非居住者への課税のしくみ]
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2873.htm

4 最後に
 以上,判断が難しい点もありますので,まずはご紹介した各機関にお問い合わせいただければと思います。

今後のハーバリストさんのご活躍を祈念しております。

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