小松 和弘(経営コンサルタント)- Q&A回答「企業が行うフィランソロピーについて」 - 専門家プロファイル

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コマツ カズヒロ
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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フィランソロピーは企業として行わなければ意味が無いのでは?

法人・ビジネス 経営コンサルティング 2013/04/18 11:43

社会人7年目の会社員です。昨年より、社内で「フィランソロピー」というキーワードが盛んに言われるようになりました。社会貢献といった意味と解釈していましたが、今年より各個人でボランティア活動・慈善活動を行い、その内容をレポートで提出しなさいとのお達しが出ました。一定の活動量に応じて賃金が支払われるとのことですが、各個人レベルで活動を行う意味が分かりません。

企業として活動を行わなければ、PRにもなりませんし、売上にならない個人への報酬は株主が理解するとも思えません。実際に意図するところが分からないので意欲が湧きません。企業が行うフィランソロピーの内容と、わが社のような対応は合っているのか教えて頂けますでしょうか?


※この質問は、ユーザーの方から事前にいただいたものを、プロファイル運営事務局が編集して掲載しています。

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企業が行うフィランソロピーについて

2015/11/07 20:26

はじめまして、企業が行うフィランソロピーについてのご質問ですね。

まず、一般的に企業がフィランソロピーを行う意義について説明をさせていただきます。それを踏まえてお勤めになっている会社のフィランソロピーの対応、つまり、従業員のボランティア活動・慈善活動に対して資金面で支援する対応の妥当性について、回答させていただきます。

▼一般的に企業がフィランソロピーを行う意義について

フィランソロピーは、「他人を愛する、博愛、人類愛」という意味のある言葉ですが、米国などでは、企業だけでなく、個人の寄付活動や社会貢献活動もフィランソロピーに含ま
れ、盛んにおこなわれています。日本では、主に、企業が行う寄付や社会貢献活動をフィランソロピーと呼んでいます。

企業がフィランソロピーを行うようになったのは、企業も社会の一員であるという意識、つまり公共意識の高まりを受けて、利益を社会に還元することで、社会的責任の一部を果たすために、寄付や社会貢献活動が行われるようになりました。

日本では、1990年頃から、フィランソロピーが盛んに行われるようになりましたが、当初は、いわゆる慈善活動として企業が行うものであり、フィランソロピーに対しての投資や
効果に着目した活動はあまり行われていませんでした。
しかし、近年では、フィランソロピーを効果的に行うことで、企業価値を高めようとする考え方が主流になってきています。おそらく、専門家プロファイルさんはこの点において、自社の活動が企業価値の向上に寄与していないのではないか、ということに疑問を持たれているのではないかと考えます。

しかし、本来、フィランソロピーそのものは、社会貢献活動であればその内容を問わず、企業が社会的責任を果たすという意味において、意義のあることであると言えるかと思い
ます。また、企業にはそのような社会的責任を果たすことを社会が要請するようになっていますので、何らかの形で、社会貢献を行う必要性が生じるようになっています。

▼従業員のボランティア活動・慈善活動を資金面で支援する対応について

上記の一般的に企業がフィランソロピーを行う意義を踏まえた上で、お勤めの会社のフィランソロピーの対応が、適当なものであるかについて、回答いたします。

まず、お勤めの会社の対応が、フィランソロピーとして妥当かどうかですが、上記で記載させていただいた通り、フィランソロピーの本来的な意味においては、従業員のボラン
ティア活動を資金面で支援することは、社会貢献活動に他なりませんので、フィランソロピーとしては、適当な方法であると言えます。
実際に、フィランソロピーの代表的な実践方法に、「人を通じての貢献」があり、従業員のボランティア活動を支援することは一般的に広く行われており、むしろ典型的なフィラ
ンソロピーの活動となっています。

企業が決めた活動を従業員に実施させる方法もありますが、従業員に自主的に活動を選ばせる方法の方が、日程や場所など、従業員の都合に合わせやすく、従業員が活動に参加し
やすいというメリットがあります。また、自主的に自分が選んだ活動の方が、従業員自身の活動に対する納得感も高いと思われます。

次に、現在、主流になっているフィランソロピーを通じて企業価値を高めるという意味において、お勤めの会社の対応が有効かどうかについてですが、効果の大小は別にして、企
業価値を高める効果があると一般的には考えられています。

従業員のボランティア活動・慈善活動を資金面で支援することによって、主には次のような効果が期待されています。

1.従業員の会社への帰属意識やロイヤルティを高める効果
2.従業員の能力開発による企業への従業員の貢献度を高める効果
3.顧客に対するブランド力向上の効果
4.人材募集における差別化の効果

以下にそれぞれの効果について説明いたします。

1.従業員の会社への帰属意識やロイヤルティを高める効果

ボランティア活動をしたくても仕事のためにできない、という従業員にとっては、会社が資金面で支援をしてくれることは、企業に好印象を持たせます。また、社会に対する貢献
を行う企業である、ということを従業員に身をもって感じてもらうことで、その会社に所属することに対する誇りを持たせられると考えられます。そのような従業員の意識は、帰
属意識やロイヤルティの高まりを通じて、生産性の向上をもたらすと期待されています。

2.従業員の能力開発による企業への従業員の貢献度を高める効果

従業員がボランティア活動に参加することにより、様々な経験やいろいろな人との交流を通じて従業員の視野の拡大、知識の向上、士気の向上等が促進されることを、企業は期待
していると考えられます。
現在の企業活動では、多様な価値観を持った従業員の育成が、企業の成長にとって欠かせなくなっていますので、日ごろの業務だけでは身につけられない見識をボランティア活動
を通じて従業員が得ることは、企業にとってメリットがあると言えます。

3.顧客に対するブランド力向上の効果

社会貢献活動に社員が自主的に取り組む姿勢により、企業全体として社会的責任を果たす姿勢を顧客に見せることができ、企業に対する信頼度を向上させる等の効果が期待できま
す。
このような企業イメージを向上させる効果は、企業としてのブランド価値を高め、本業に対してよい影響を与えることが考えられるため、企業にとってメリットがあると言えます。

4.人材募集における差別化の効果

企業が従業員のボランティア活動を支援することで、人材募集の際に、ボランティア活動に積極的に取り組む人に対しての、大きな PR 効果を持つと思われます。
2.の効果でも述べた通り、現在の企業では、多様な価値観や経験を持つ人材が必要とされていますので、ボランティア活動に取り組む人材の採用に好影響を与えることで、多様な人材の採用につながるため、企業にとってメリットがあると言えます。

上記のような理由から、従業員のボランティア活動・慈善活動を資金面で支援することは少なからず企業価値を高められるフィランソロピーの方法と言えるのではないでしょうか。
ただし、投資対効果という意味では、同じ金額を投資するのであれば、他にもっとよい方法もあるかもしれません。しかし、あくまで、企業としての社会的責任を果たす、という
社会の要請に応える必要があるという前提があってのことですので、他の投資と並べて効果を比較することは、難しいかもしれません。

上記の内容で参考になりましたでしょうか。少しでもお役に立てたら幸いです。

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