
山本 雅暁
ヤマモト マサアキグループ
日経記事;『国産ホタテ、一転不足中国禁輸でも米・タイ輸出額4倍 減産見通しで卸値最高』に関する考察
-
皆様、
こんにちは。グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
3月7日付の日経新聞に、『国産ホタテ、一転不足中国禁輸でも米・タイ輸出額4倍 減産見通しで卸値最高』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『中国による日本産水産物の禁輸で余っていたホタテが、一転して不足感を強めている。1月の輸出額は前年同月の2倍で、中国向けの減少を補うかたちで米国やタイ、ベトナム向けが大幅に増えた。一方、ホタテ生産量は高水温などの影響で減る見通し。国内外で需給が引き締まり、豊洲市場(東京・江東)の卸値は過去最高値を付けた。。。』
本記事の中でホタテの2023年と2024年の輸出先比率は、以下のように説明されています。単位は%。
2023年 2024年
中国 37.6 0
米国 17.3 27.5
台湾 14.6 17
韓国 9.6 11
香港 7.4 7
豪州 2.4 2
タイ NA 6
オランダ NA 3
その他
合計金額 689 695
(億円)
中国が日本の水産物、特にホタテの禁輸措置を開始したのは、2023年8月です。
具体的には、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出に反発し、中国政府は日本産水産物の全面禁輸に踏み切りました。この措置により、特に中国を最大の輸出先としていたホタテ事業は大きな打撃を受けました。
この禁輸措置を受け、日本国内ではホタテの消費を促進する動きや、アメリカ、東南アジア、欧州などの新たな輸出先の開拓が進められてきました。
上記しますホタテの輸出拡大は、中国という巨大市場が消滅したにもかかわらず、成功しました。この輸出拡大策は、国内のベンチャーや中小企業が、輸出事業を行うときに参考になります。
国内消費については、政府や自治体は、ホタテ消費を促すキャンペーンを各種展開しています。小売店や飲食店でのホタテを使ったメニューの提供や、イベントでのPR活動、学校給食での活用などが行われてきました。
これは、中国市場が消滅したホタテ事業を守るために、国内市場の消費拡大を実現するために必要であると考えたことによります。
しかし、国内のホタテ輸出事業は、中国市場がなくても、販路開拓・集客を行う行うことで維持拡大できました。
以下、現時点で最大の輸出国であるアメリカ市場開拓のやり方について説明します。
●ホタテ製品の高級化・高付加価値化
ホタテの質を高めて、アメリカの高級レストランや小売店をターゲットに、高品質なホタテ製品を売り込むやり方を取っています。冷凍技術や加工技術を駆使し、鮮度や品質を保持した製品を提供しています。例えば、以下のようなものが挙げられます。
・急速冷凍技術を用いた生食用のホタテ製品の開発
・燻製や味付けなどの加工を施したホタテ製品、など
●販路開拓・集客
アメリカの食品バイヤーや流通業者との連携を強化し、販路を拡大しています。食品展示会や商談会への積極的な参加を通じて、アメリカの関連企業との関係構築を進めています。
インターネットを活用したオンライン販売も強化し、アメリカの消費者に直接アプローチ
するやり方も取り入れています。
●情報発信と広告宣伝
英語版WebサイトやSNSを活用して、日本のホタテの安全性や品質に関する情報を、アメリカの消費者や関係者に対して積極的に発信しています。
また、試食会やPRイベントの開催や食品展示会への出展などを通じて日本のホタテの魅力をアピールしています。
●輸出体制の整備
アメリカの食品安全基準や規制に対応するため、輸出体制の整備を進めています。
必要な認証取得や輸出許可の取得を支援し、スムーズな輸出を可能にしています。
これらの取り組みを通じて、日本のホタテはアメリカ市場での存在感を高め輸出事業の拡大を実現しました。
日本のホタテ輸出事業は、他の海外地域についてもアメリカ向けと同じようなやり方を取っています。
この動き方は、ベンチャーや中小企業が輸出事業を成功させるための対応策を考え、実行する上で有効な事例になります。
国内のベンチャーや中小企業が、海外への輸出事業を行うときに、優先して検討・確認することがあります。
それは、自社の製品やサービスが、国内外の競合他社のものと比べて、差別化・差異化できるかどうか確認することです。
上記ホタテの事例では、高級化・高付加価値化で差別化・差異化を実現しました。
海外で売るためには、自社の製品やサービスが、差別化・差異化できるものをもっていないと、競合他社との競争に勝てません。
また、一般的に、国内のベンチャーや中小企業が初めて輸出事業を行うとき、以下の課題に直面します。
(1)海外市場や海外顧客を「知らない」。
(2)海外で自社製品やサービスの「知名度がない」。
(3)海外での「販路をもっていない」。
輸出事業を成功させるには、上記3つの「ない」課題を解決して、対応する必要があります。
(1)の「ない」への対応は、海外対象国や潜在顧客の内容をよく調べることで解決できます。
(2)の「ない」への対応は、インターネットをフル活用して、英語版WebサイトやSNSで情報発信を行うことで解決できます。また、日本で開かれる国際展示会や、海外で開催される展示会への出展も、情報発信や広告宣伝に有効です。
(3)の「ない」への対応は、英語版Webサイトで販売会社、代理店、小売店などの販路を募集していることを掲載して、販路先に知ってもらうこと、および、日本で開かれる国際展示会や、海外で開催される展示会への出展し、販路先との面談や商談を行うことになります。
海外向け輸出事業を計画している企業が、本ブログ・コラムを読まれて参考になれば幸いです。
また、上記(1)~(3)の「ない」への対応内容は、ご関心があれば、私が今まで書いたブログ・コラムを読んで参考にしてください
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A山本雅暁
「経営戦略」のコラム
新知修塾セミナー:『中小企業による海外事業展開成功の課題と対応方法』の実施について(2025/04/16 15:04)
日経記事;『「スシロー」の勝ち筋に資金日本らしさ+世界展開加速、海外投資家の買い誘う』に関する考察(2025/02/19 16:02)
『海外ビジネス成功へのステップ』セミナー「海外ビジネス成功へのステップ」第3回 販路開拓・交渉編(2024/11/19 16:11)
セミナー「海外ビジネス成功へのステップ」講師及び受講企業募集について(2024/06/18 14:06)
「海外へ羽ばたけ 海外市場開拓のポイント」の第7回記事掲載(2024/06/03 12:06)