内観療法
-
それでは怒りや憎しみを減じ、愛や喜びへ変えるにはどうすればよいのでしょう。一つの方法として、日本の伝統的な自己変革的な治療法である「内観療法」を挙げることができます。
吉本伊信らが1940年代に開発した自己観察法です。「悟り」(宿善開発、転迷開悟、一念に遭う、など)を開くことを目的とし、「いかなる境遇にあっても感謝報恩の気持ちで幸せに日暮らしできる」ために行います。
内観者は6泊7日の「集中内観」を基本とし、内観研修所に宿泊し、「内観三項目」の「ご迷惑かけたこと」「お世話いただいたこと」「して返したこと」を母からはじめ、父、兄弟姉妹など、これまでの人生に関わった方々を順々に調べ尽くします。朝5時から夜9時まで、トイレやフロの時間も「1分1秒、惜しんで内観する」。その間、面接者が1-2時間おき、1日に8-10回、約5分の面接を繰り返します。
これにより、人生の不安・苦悩・動揺などから逃げず、目をそらさず、むしろ不安・苦悩・動揺に沈潜し、「生の実相」を覚知します。そして、自分の外部にある富や名誉・社会的地位、そして死などに対し、いわば「無関心」の態度を堅持することで、「自由」と「心の平静」を得ることができるのです。
内観療法の治療機序は、内観三項目を想起し、主観的および客観的に自己観察(セルフ・モニタリング)を行うことにより、「自己発見」へ至ります。その際、母性的な「恩愛感」の庇護のもとに父性的な「自責感」を深めることで、「我執から解放」されることを特徴とする、東洋・日本ならではの心理療法です。