インターネットによる精神障害の早期発見・早期治療(4)
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クリニックにおける初回の気分障害
次に我々は、平成18年4月−9月の半年間に「銀座泰明クリニック」 における初回の気分障害の患者172人を調査した4)。その結果、DUI: 64.1±122.9 (Min: 1, Max: 768, Med: 12, Mode: 4) 週だった。患者背景は男性75人・女性97人、年齢32.4±8.1歳、職業は会社員128人であった。主訴は不眠28人、うつ24人、頭痛21人だった(表3)。受診経路はインターネット150名、看板14名。検索に用いた言葉は「心療内科」67人、「うつ病」28人、「精神科」13人、「メンタルクリニック」3人であった。
銀座泰明クリニックは平成18年4月に開院したばかりで十分に周知されておらず、紹介患者は少なかった。また都心部に位置して、看板も目立たない。しかし、インターネットで自ら検索してくる患者が極めて多かった。大学病院と比べて患者の平均年齢が10歳ほど若いのも特徴的であった。これらはインターネットの利用世代が若年層に偏っているためと考えられる。
DUIが 64.1週と1年を越している理由は「持続性気分障害 (F34)」を含めたことによる。従来、抑うつ神経症とされていた疾患である。もっとも中央値12週、最頻値4週であり、中核である「うつ病エピソード (F32)」に関しては大学病院の8週と近似している。主訴の第2位が「うつ」であることは、うつ病の啓発活動の効果と思われるが、インターネット検索において「心療内科」が「精神科」よりはるかに多いことは、「精神科」に対するスティグマを意味しているのかもしれない15)。
初回うつ病のDUIは、引き続き銀座泰明クリニックと「東邦大学医学部精神医学講座」 の関連施設で平成19年4月〜12月に86人に調査された7)。この結果、DUIは 30.4±60週だった。患者背景は男性55人、女性31人、平均年齢34.5±9.5歳であった。同居者のいない者はいる者よりDUIの短い傾向が認められた。この調査は継続して行われている。(つづく)