藤宮 浩
フジミヤ ヒロシ広大地評価 ~その2.広大地評価の性質~
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前回のコラムにて、判定は微妙な部分も多いけれど、もし「適用」されるとしたら大きな減額要因になり得る「広大地評価」の要件についてご説明しました。
その要件をすべてクリアしたとしたら、間口、奥行き、形状、道路付け、傾斜の有無等すべて関係なく、以下の単純な算式で評価されてしまいます。
広大地補正率=0.6-0.05×広大地の地積/1,000平方メートル(下限が0.35)
土地の評価額は、「(地積×路線価)×広大地補正率」という風に算出しますので、例えば、地積が1,000平方メートルちょうどの土地であれば、一様に路線価額で算出される評価額の55%の価額でOKということになるのです。
図をご覧下さい。(クリックすると拡大します)
幹線道路に面した土地A,B,C3つの同じ面積(1,000平方メートル)の土地があります。(図1参照)それぞれの土地を、戸建て宅地として開発した後の「想定図」が、図2となります。(同じ路線価の公道沿いにあり、周囲の環境や条件は同じとします)
実勢価格では、どの土地が一番高く売買されているでしょう?
多くの皆さんが、B→A→C の順番に価格が高いと思われるでしょう。
土地Bと土地Aでは、区画分割する際に必要な「開発道路」の長さが倍近く異なりますが、当然、造る道路の長さが長いほど「造成費」は余計にかかりますし、宅地として利用できない部分(いわゆる「つぶれ地」)の面積が大きくなってきます。土地Cに至っては、まず宅地用地に開発するために、莫大な宅地造成費がかかります。
誰の目から見ても明らかに価値の異なる3つの土地が、最初の計算に照らし合わせればすべて同じ価額で評価されてしまうのです。仮に、土地Cが980平方メートルと、わずかな地積足らずで「広大地評価」の適用外になった場合には、土地Cは土地ABの2倍以上の価額で評価されてしまうことになります。
つまり、「広大地評価」とは、われわれ専門家の常識では到底考えられない、実態に伴わない理不尽な評価方法とも言えるのです。
それらを踏まえた上で、土地をどのような形で残しておくべきか、どのような形で評価すべきかといった選択肢がとても重要になってきます。
ただし、評価額を安くしたいからと言って、きちんとした裏付けもなく安易に「広大地の評価」を適用すると、痛い「しっぺ返し」が待っています。
その話は、次回の本コラムにて取り上げる予定です。
「土地評価について」のコラム
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