見波 利幸(主席研究員)- コラム「メンタルヘルス研修を考える」 - 専門家プロファイル

見波 利幸
感動を伴う研修こそが、効果のある結果が出る研修です

見波 利幸

ミナミ トシユキ
( 東京都 / 主席研究員 )
主席研究員
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メンタルヘルス研修を考える

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2010-06-11 12:22

今、多くの企業ではメンタルヘルスの研修を実施している。しかし、本当に効果が現れている企業はどれほどなのかは疑問だ。

 

 例えば、研修の状況を聞いてみると以外にも、「もう既にやっています」という回答が多い。その中身はというと、「新任の管理者研修に2時間ほど産業医が話をしています」とか「全管理職に外部の精神科医の講演を90分聞かせた」というものが多く、言葉の節々に「これだけやれば十分だ」「もうこれ以上は不要だ」的な雰囲気が漂う。

 

 果たして、全社員の何%にあたる人が受けているのか、また90分や120分の内容で、本気で十分だと思っているのかという疑問が湧いてくる。

 

 一生に一度で良い。管理者には1日かけた研修を、一般社員にも半日の研修を社員全員に受けさせてあげて欲しい。

 

 産業医や精神科医が行う90分や120分の内容は、ほとんどメンタルヘルスの基礎中の基礎の部分。不調のサインはこのようなもの。気づいたら産業医に相談をするようにする。リラクセーションも効果的。などの話しで終わってしまう。勿論、このような内容も大切です。しかし、これだけだから、受けた社員が本気になってやっていく気にならないのです。

 

 それは、ただ単に知っているだけの知識を紹介するだけの研修だからです。知識を与えるだけの研修は、効果が現れないのは当然です。知識、プラス意識を変える、プラス意欲を高める、までを目的にした研修でなければ意味がない。意味がないというのは、やらない方がむしろ望ましいかもしれない。なぜなら、ほとんど効果の伴わない研修を継続して、「もう既にやっています」と担当者が思ってしまったら、もうそれ以上は進みようがなくなってしまうからだ。最低でも担当者は、「まだ不十分だ」という意識を持たなければ、その会社の不調者は減りようがない。

 

 不調者の減らない会社の問題に、この担当者の意識の問題が実は多く、また大きい問題と思っている。本来メンタルヘルス不調は、本人の問題だけでなく、むしろ上司の問題であることのほうが大きい。しかし、それ以上にメンタルヘルスを推進する担当者や研修を企画・立案する担当者の問題の方がはるかに大きいと思っている。

 

 そのような中で、様々な企業の担当者と話していると、「できる範囲で進めていますが、まだまだ不十分です」とか「予算がなかなか下りないが、でもずっと継続していきたい」などの認識や意欲を持たれている方がいます。このような認識や意欲を持たれている会社ほど、実は日本の中でも群を抜いて体制を整えていたり、効果のある研修を継続されていたりすることが多い。

 

 結論は、「産業医や精神科医が行う90分や120分の研修」だけでは、ほとんどやっていないに等しいということ。

 最低でも、管理職に対して1日かけた研修で、なぜ会社でやっていく必要があるのかということに対して、明確に疾病と安全配慮義務から意義を認識し、重要性を感じさせなければならない。その上で、そもそもなぜストレスからメンタルヘルス不調になるのかのメカニズムを正確に理解し、他者に対して説明できるくらいに腹に落ちていなければならない。だからこそ、身体や心(精神)に良いことと悪いことが明確になるし、「良いことをやってみたい」「やって行こう」という意識が生まれる。これこそがセルフケアの土台になるものであり、自分を慈しむ心が芽生える。この自分を慈しむ心がなくて、なぜ他人にラインケアができるのでしょうか。

 「管理者として義務だからやれ」では誰も動かない。そもそも他者を労る気持ちを持たせる研修こそが核心であることを肝に銘じていただきたいと思います。

 その上で具体的な対応や予防策などを考えると、どうしても1日ほどの時間を要する。

 

 更に言えば、全管理者のラインケア研修(1日研修)を終えた後に、適切な部下の相談対応ができるように「傾聴」などの実践的な研修をフォローアップしていくと更に効果が高まる。

 

 次に、一般社員に向けてのセルフケア研修、更にモチベーション研修、自己表現力(アサーティブ)研修などと継続していくと、真に効果が出てくるだろう。

 

 研修をやったという事実が欲しいのか、真の効果が欲しいのか、もう一度会社として考える時期に来ていると思う。

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