池見 浩(消費生活アドバイザー)- コラム「トラブルが起きた時、ネットの「書き込み」は信じていいの?」 - 専門家プロファイル

池見 浩
消費生活の専門家が消費者教育・啓発や消費者志向経営をサポート

池見 浩

イケミ ヒロシ
( 東京都 / 消費生活アドバイザー )
消費者考動研究所 代表
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トラブルが起きた時、ネットの「書き込み」は信じていいの?

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2019-02-08 20:52

こんにちは。消費者考動研究所代表 消費生活アドバイザーの池見です。


突然ですが、もし、あなたに知らない所から督促状が届いたり、あなたが何か契約で困ったりした場合、対処方法の情報をどうやって入手しますか?まずインターネットで検索し、SNSやQ&A・口コミサイトなどの情報を確認するのではないでしょうか。

平成29年度の消費者白書(消費者庁発行)によれば、15歳以上の消費者を対象に商品の購入やサービス利用のトラブルに遭った際に最初にとる行動を調査したところ、全世代平均で49.0%の人が、インターネットを検索して参考になる情報を探すことがわかりました。しかも世代別で見ると、15-19歳では70%、40歳代では53.3%、70歳以上の人でも約3割の人が、最初にインターネットで検索していました。

手元ですぐ検索して情報収集すること自体は、便利でとても良い事です。しかし、検索結果の情報が必ずしも正しいとは限りません。間違った情報が含まれていることも多々あります。公的機関や、この専門家プロファイルのように専門家が実名で責任をもって回答している情報であれば、信頼性が高いと言えるでしょう。その一方で、匿名やハンドルネームなどで書き込まれたSNS、Q&A・口コミサイトの書き込みの中には、うのみにしてはいけない間違った情報も散見されます。

消費生活の相談現場でも、「ネット上の書き込みを信じていたら更にひどくなった」「書き込みを見て諦めていた」といった話が良くあります。

[事例1]

数か月前より、自宅に督促状が届くようになった。差出人をネット検索し、多数の架空請求・詐欺とのコメントを信じて無視していた。すると弁護士事務所から2万円の催告状が届いたが、それもネット上では詐欺とあったので放置した。3か月後に裁判所から差押通知が届いた。どうしたらよいか。


[事例2]

ネット通販で、「ダイエット酵素ドリンクが今だけ初回お試し500円」だったので、すぐにクレジットカード払いで注文した。効果が感じられず飲むのを止めていたら、注文していない2回目の商品が届き、カード会社A社の請求も上がっていた。

Q&Aサイトで質問を投げかけたら、「自分も同じ被害に遭った」「その通販会社は詐欺なので、関わらない方が良い」「A社に話しても何もしてくれない」といくつも書き込みがあった。自分も無駄だろうと思い、そのままにしていた。

1か月後、3回目の商品が届いたので通販会社に苦情を申し出たら、「定期購入で4回目までは解約できない契約です」と言われた。A社に「詐欺の不正請求なので返金してほしい」と話すと、「解約については、通販会社と直接解決してほしい」と断られた。どうしたらよいか。注文する時、最後の確認画面に定期購入の表示は無かった。


事例1の場合、督促状を送っていたのは実在する動画配信サイトの会社でした。
実は過去に「1か月お試し無料」登録したものの、ほとんど視聴せず退会手続きを忘れていたため、未払い会費が発生していたのです。架空請求や詐欺ではなく、正しい本物の督促状や弁護士からの最後通告だったのですが、ネット上の誤った情報を信じて放置した為に、手遅れになってしまいました。

事例2は、多発している定期購入トラブルです。
定期購入のネット通販業者は、申込み入力フォームより画面上部と注文最終確認画面上で、定期コースであることや、購入回数の縛りがある場合は総支払額をわかりやすく明示しなければなりません。この事例の場合、最終確認画面には明示がありませんでした。

一方で申込み入力フォームの前には、わかりやすい定期購入の説明がありました。消費者が見落としていたのは否定できず、4回定期購入の特約は基本的に有効でした。詐欺ではなく、トラブルに対処しければいけなかったのです。
なお、クレジットカード会社のA社は、売買契約の直接の当事者でない、代金を業者に立替払いする第三者の立場です。A社は、「何もしない会社」ではなく、法的に売買契約に関与できないのです。
*但し、状況によっては、消費者が契約しているカード会社が、販売業者からの決済ルートを逆流して、契約者の申し出内容の調査依頼に協力してくれる場合もあります。その結果、一定の条件の場合に、カード会社に支払った分が返金されることもあります。詳細は消費生活センターにご相談ください。

この事例1や事例2のような相談の場合、消費生活センターではまず事実関係を確認します。場合によっては、相手の業者に問い合わせることもあります。
そして、事実が確認できた時点で、どのように対処したら良いかアドバイスします。状況により、消費生活センターが交渉の間に入ってあっせんを行う場合もあります。


ネット上の書き込み全てが間違っているわけでは、決してありません。中には、嫌な思い・辛い状況を体験し、他の人に知らせたいから書いている人もいます。同じような内容の書き込みが多いほど、読み手側がその内容が真実と思いがちなのも当然です。

しかし、消費者トラブルは、同じような事例でも、一人ひとりトラブルの内容や解決方法が違います。あなたの身の上に起きたトラブルは、あなたに合った個別の対処法が必要です。その為、検索する場合は、口コミ等は参考程度にし、公的機関や信頼のおける顔が見える専門家の情報を確認されることをお勧めします。そして、具体的な対処法については、できるだけ早く消費生活センターへご相談ください。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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