出産と体重

とても微妙な問題です。体重が何キロでも母体には大変な負担であることは確かです。たとえばブリ-ダーが繁殖計画上どうしても、その血統を残さなければいけない場合には、妊娠末期に帝王切開して、胎児を出すことも可能ですが、それは産業動物とペット動物の、ぎりぎりの境界線の領域です。初産で帝王切開で出産すると、母犬が育児放棄し、人が一月、人工保育に振り回される可能性があります。
体重が少なくても、妊娠胎児数が5〜8頭などと多頭の場合は、胎児一頭が小さく、比較的安産で生んでしまいますが、1〜2頭では難産になってしまいます。また、胎児の数に関係なく、初産は普通難産ですが、一番最初に出てくる胎児が逆子の場合も難産になってしまいます。

当院でこういう2ケースがありました。有料でブリーダーの雄犬と交配し、1頭の胎児を妊娠しましたが逆子でした。無事妊娠末期を迎えましたが、やはり難産で、来院が遅れたため胎児は産道で詰まって死亡し、開腹して死亡胎児を取り出しました。結局、母犬が痛い思いをし、飼い主さんは交配料、検査、手術料、埋葬料を負担され、手元には何も残りませんでした。もう一つは、知り合い同士で交配し、仔犬一匹を雄犬側にあげる約束をしました。2匹を妊娠し、やはり出産時、一匹が産道で詰まって死亡し、帝王切開で一匹を取り上げ救命ました。結局、この手術費用を誰が負担するか、仔犬はどうするかでもめて、なかの良かった犬仲間が、犬猿の仲になってしまいました。
小型犬の場合は、こういう難産になるケースが多いので要注意です。

それと、母犬と育った子犬の仲がよくないというケースもあります。特に母犬が飼い主べったりの甘えん坊さんのケースです。

すべてうまくいくこともたくさんありますが、この場では敢えて、最悪のケースをご紹介させて頂きました。