対象:事業再生と承継・M&A
適格新設分割における償却資産の取扱いについて
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G2さま、ご相談ありがとうございます。
ご質問の趣旨としては、
(1)7月決算の分割会社から12月10日付で新設分割を行った場合において、適格分割に係る届出書を提出しない場合の、固定資産や繰延資産(建物に関する長期保険料・借入金の保証料など)の償却計算方法がどうなるか、
(2)届出書を提出した場合には、分割会社と新設承継会社でそれぞれどの期間の償却を行うことになるか、
という2点がポイントと理解しております。
この前提のもと、以下にてそれぞれご説明いたします。
1. 届出書を提出しない場合
届出書を提出しない場合、適格分割であっても税務上は引継資産が新設会社で分割日に取得されたものとして扱われ、減価償却や繰延資産の償却は分割日以降についてのみ月割で計上することになります。
これは、法人税基本通達7-2-11に基づく取扱いであり、適格分割であっても届出がなければ、承継会社において資産は分割日取得とされます。
具体的には、
・固定資産:12月取得として12月以降の月割で償却
・建物に付随する長期保険料(長期前払費用)や借入金に関する保証料(繰延資産)も同様に、分割日(12月10日)以降の月数で償却対象となります。
2. 届出書を提出した場合
届出書を提出した場合には、償却対象資産は期中での引継ぎがあったものとみなされ、分割会社と新設会社でそれぞれの在籍期間に応じて償却できます。
この取扱いは、法人税基本通達7-2-12および13に基づいており、旧法人(分割会社)が償却費を損金に算入し、残額を新法人が引き継いで償却を行うものです。
このケースでは、
・分割会社:8月1日~12月9日までの5か月分を償却
・新設承継会社(3月決算):12月10日~3月31日までの4か月分を償却する形になります。
以上となりますが、届出書の提出有無により償却方法や損金経理の時期が大きく異なるため、本件に関する税務上の最終判断については、顧問税理士や税務の専門家にご確認いただくことを強くお勧めいたします。
なお、税務面に精通した対応が求められる場面ですので、企業再編や組織再構築に関する実務経験のある税理士、もしくは税務会計を専門とする公認会計士へのご相談が適切です。
なお、以下のホームぺージもご参照のうえ、ご理解をすすめていただければ幸いです。
〇法人税法 第31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)
→適格分割等により減価償却資産を移転する場合の償却費の損金算入について規定されています。
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
〇法人税法施行令 第54条(減価償却資産の取得価額)
→適格分割等により移転を受けた減価償却資産の取得価額の算定方法について定められています。
https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097/
〇国税庁「適格分割等による期中損金経理額等の損金算入に関する届出」
→届出書の提出時期や提出先、様式についての案内がされています。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/kigyosaihen/annai/01.htm
〇TKC WEBコラム「第2回(最終回)『適格分割等による引継ぎ等に関する届出書』」
→適格分割における減価償却資産や繰延資産の取扱いについて、実務的な解説がされています。
https://www.tkc.jp/consolidate/webcolumn/023751/
評価・お礼

MG2 さん
2025/05/27 13:12
小松先生、詳しく解説して頂き有難うございます。
届出をした場合は、分割元会社及び承継会社それぞれ減価償却できるのに対し、届出をしない場合は、承継会社のみしか減価償却できないとの認識でよろしいでしょうか?
再度の質問で恐縮ですが、よろしいお願いいたします。
回答専門家

- 小松 和弘
- ( 東京都 / 経営コンサルタント )
- ホットネット株式会社 代表取締役
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この回答の相談
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MG2さん (埼玉県/54歳/男性)
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