対象:遺産相続
阿部 隆徳
所長弁護士
2
ご回答
あかのぞ様
1
ご質問について、回答いたします。
なお、以下の回答は、お母様がご存命中に、父方ご親族の方への持家の売却が完了していることを前提とします。
売買契約の締結自体はお母様が完了していても、持ち家の引渡しや所有権移転登記、代金の受領等をお母様が亡くなられた後に相続人が行った場合には、単純承認とみなされる「処分」に該当し、そもそも当該相続人は相続放棄ができなくなる可能性が高いですので、ご注意ください。
2
お母様存命時の持家売却時に、明示又は黙示に持家内の家財道具を父方ご親族に譲渡・贈与したと考えられるのであれば、家財道具は全てお母様が父方ご親族に譲渡・贈与したといえます。
この場合には、そもそも家財道具は相続財産に当たらず、父方ご親族のものになりますので、相続放棄の前でも後でも、相続人が処分する必要はありません。
したがって、「家財道具は全てお母様が父方ご親族に譲渡・贈与済みなので、『私』(あかのぞ様)が処分する必要はない」、と主張すればよいです。
3
これに対して、お母様存命時の持家売却時に、明示又は黙示に持家内の家財道具を父方ご親族に譲渡・贈与したとはいえないのであれば、当該家財道具はお母様の相続財産に含まれます。
この場合、不要な家財道具の処分を相続人が行うと、相続を単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなります(相続放棄後であっても、処分が単純承認とみなされる可能性があります。)。したがって、相続放棄をする予定であれば、処分してはいけません。
また、相続放棄した後は、相続放棄した相続人は、相続財産について権利を持たないことになりますので、相続財産を処分することはできません。したがって、「相続放棄後は相続人でなくなるため処分できない」、と主張すればよいと思います。
4
なお、相続放棄者には処分権限はないものの、相続放棄後も、他の相続人が相続財産の管理を開始するまでは(あるいは相続財産管理人が選任されるまで)、相続財産の管理義務があります(940条1項)。
したがって、家財道具内に高価な物がある場合には、相続放棄後であっても適切に管理しないと、債権者等から不法行為による損害賠償請求等をされるおそれがありますので、ご注意ください。
5
なお、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述手続をしなければなりません。3カ月を徒過すると、相続放棄はできなくなりますので、この点、ご留意ください。
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この回答の相談
相続放棄による、故人の家財道具について質問です。
父は亡くなっており、このたび母が亡くなりました。子供は私一人で結婚し別世帯です。
マイナス財産が多いので、相続権の有る私と母の… [続きを読む]
あかのぞさん (大阪府/34歳/女性)
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