対象:借金・債務整理
鮫川 誠司
司法書士
25
日本育英会奨学金の返還債務と消滅時効
日本育英会の貸与奨学金の返還債務と消滅時効の期間について,下記の通り回答申し上げます。
1 日本学生支援機構への承継
従前,特殊法人であった日本育英会は,平成16年4月1日を以って,独立行政法人・日本学生支援機構(JSSO)に改組され,奨学金の返還請求権も同機構に承継されていることはご案内の通りです。
そして,日本学生支援機構では,返還金を延滞した場合には,本人・連帯保証人等に対して,業務を委託した債権回収業者による督促,支払督促等の裁判手続も利用して回収を行っているようです。
2 奨学金の返還債務と消滅時効
債権は,10年間行使しないときは,時効により消滅するとされています(民法167条1項)。
また,商行為によって生じた債権は,原則として,5年間行使しないときは,時効により消滅します(商法522条本文)。
しかし,日本育英会は,一般に,商法上の「商人」ではないとされており,その奨学金債権も商行為によって生じた債権ということはできないと考えられます(通説)。
ところで,年又はこれより短い時期によって定めた分割払いの金銭債権は,5年間行使しないときは,時効により消滅するとされています(定期給付債権の短期消滅時効,民法169条)。
日本育英会の奨学金は,月賦・半年賦・これらの併用または年賦により,卒業後一定の期間で返済すべきものとされていますから,定期給付債権に当たる可能性があると考えます(マンション管理費の事例ですが,最判平成16年4月23日参照)。
その場合,各賦払金の内,弁済期の到来から5年を経過したものについては,消滅時効が完成しているため,これを援用(時効である旨の主張を)することにより奨学金の返還債務を免れることができます。
3 本件に対する対処方針
専門職にご相談の上,日本学生支援機構に対し,内容証明郵便により,消滅時効が完成している部分について時効援用の意思表示をされるとよいでしょう。
時効完成部分及びこれに対応する損害金を控除した残金についてもなお支払いが困難である場合には,同機構に対し返済の猶予(分割払い)を相談しましょう。
いずれにしても,ご家族及び連帯保証人に対しては,事の顛末をお話しておくことは必要であると考えます。
債権回収のトラブルはぜひ私たちにご相談下さい
裁判事務専門の「慶友綜合リーガルサービス」
http://www14.ocn.ne.jp/~ku-osls/
(現在のポイント:4pt)
この回答の相談
現在34歳です。先日債権回収(株)から約149万円の請求、催告状が送られてきました。
急に届きびっくりしたのと不安でいっぱいです。
私は小さい時に母を亡くし、父に大学まで行かせてもらいました。県外の… [続きを読む]
as1201momoさん (徳島県/80歳/女性)
このQ&Aの回答
このQ&Aに類似したQ&A