日経記事;『受託生産特化を転換 台湾・鴻海精密工業、液晶TVで自社製品』に関する考察 - 各種の新規事業・事業拡大 - 専門家プロファイル

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日経記事;『受託生産特化を転換 台湾・鴻海精密工業、液晶TVで自社製品』に関する考察

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皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

1月15日付の日経新聞に、『受託生産特化を転換 台湾・鴻海精密工業、液晶TVで自社製品』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。
 
『家電製品などの受託生産で世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が自社製品の生産・販売に乗り出す。このほど台湾の傘下の家電量販店で60型の液晶テレビを発売した。

米家電量販大手のラジオシャックとも提携、中国大陸で合弁店舗を増やして拡販する。中国の人件費上昇を受けて受託生産の利益率が低下しており、事業モデルを一部修正して成長を目指す。

鴻海はこれまで最大の顧客である米アップルのスマートフォン(スマホ)などの受託生産に特化していた。今後は中国などに自前で築いた小売り網で自社製品を販売する事業も展開する。家電を自社生産・販売するのは初めて。

◆日本勢のライバルにも 当初の規模は小さいが、本格展開すればソニーやシャープなど受託生産の顧客である日本の大手の強力なライバルになる可能性がある。

鴻海の受託生産の拠点である中国では、例えば主力工場がある深セン市の最低賃金が10年間で3倍になるなど、人件費が急上昇し、採算が悪化。安価な労働力に頼る受託生産の成長モデルが限界に近付いていた。自社製品の生産・販売事業を新たな収益源に育てる。

液晶テレビは部品さえ調達できれば製品化は容易で参入障壁が下がっている。鴻海はシャープと共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)の液晶パネルを使用。2013年は中国などでも生産・販売し、12万~15万台を出荷する見込み。4月をメドに70型も発売する方針だ。

台湾では鴻海傘下の家電量販店「賽博数碼(サイバーマート)」で、ケーブルテレビ会社などと組んで視聴契約とセット販売する。店頭価格は日本円換算で約12万円。中国ではサイバーマートがラジオシャックと合弁展開する店舗で販売。

テレビのブランド名は受託生産の顧客への配慮から鴻海の名前は出さない。中国では「ラジオシャック」とするなど、柔軟に対応する。

鴻海の郭台銘董事長は昨年6月、新たな成長エンジンとして家電量販など川下分野の事業を強化すると表明した。01年に中国で買収したサイバーマートは現在は中台で40店舗を持つが、13年には倍増させる方針。

ラジオシャックとの合弁店舗は将来は5千店規模を目指す。ここに目玉商品として自社製品を置き、集客につなげる。中台以外へ自前の販路が拡大すれば、自社製品の販売地域も増える見通しだ。

◆利益率改善狙う 受託生産の加工費は例えばノート型パソコンの場合、製品価格の5%以下などと低い。ここに人件費上昇が加われば利益はさらに削られる。鴻海が受託生産向けの部材や設備を生かして自社製品を作り、自社の流通網で売れば受託生産のみに比べて利益を囲い込める。

事業モデルを一部修正する背景にはアップル頼みのリスクの顕在化もある。鴻海の現時点の受託生産の売り上げの約5割はアップルからの受注が占めるとみられるが、足元でiPhone5は競争激化で販売が伸び悩み、部品メーカーや鴻海への発注が減っているもよう。業績への影響を懸念する声が強まっている。

鴻海は自社テレビについて「販売方式などが異なり、受託生産の顧客とは競合しない」(広報)と説明。画面サイズも競合相手が少ない大型品に限定し、批判をかわす構えだ。ただ鴻海のテレビ発売を受けて台湾では大型テレビの値下げ競争が激化している。

鴻海は長年の受託生産で顧客の技術やノウハウを蓄積。IT(情報技術)機器の売り上げ規模や生産能力では、自社製品で世界大手の韓国サムスン電子などに迫りつつある。テレビ以外も含めて自社製品を本格展開した場合は、顧客の信頼低下や受注減を招くリスクもある。』


本日の記事は、受託生産で産世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業のビジネスモデルが、壁にぶつかっていることを示しています。

鴻海は、中国の安い賃金で多くの労働者を雇い、低コストで生産してきました。このビジネスモデルが成立するためには、二つの要因;条件が必要です。

一つは、豊富な若い労働者の確保です。もう一つは、低賃金です。10年前の中国ではこれらの二つの要因;条件を満たせました。

鴻海は、顧客の求めに応じて柔軟に対応して受注量を増やして、部材調達量の増加と、量産効果によるコストダウンで低コスト化を実現してきました。

商品のデジタル化は、開発・設計・製造の水平分業を可能にしますので、各分野に特化して、差別化・差異化を図る専門企業が誕生しました。

製造業界では、自社に工場を持たないファブレスメーカーが多くなりました。製造工場を持たないことで、設備投資や固定費の圧縮が可能になるためです。

特に米国のITベンダーは、このやり方を積極的に採用して、ハードウェアを取り込んだ事業展開・拡大を図ってきました。

その中で最も成功した企業がアップルです。アップルは、優れた事業開発力、企画力、デザイン力、ソフトウエア開発力を持っており、商品の製造を受託生産企業に発注し、自社ブランド品として販売してきました。

アップルは、全ての自社商品を鴻海に製造委託してきました。1社に集中委託することで、品質の安定と、低コスト化を実現できるためです。

このように、アップルと鴻海は「Win/Win」関係を構築・維持できてきました。鴻海もアップル商品を集中生産することで、上記の資材調達力と量産効果によるコストダウンで収益確保・拡大を図れました。

鴻海が受託生産で利益確保していくためには、上記しましたように、豊富な労働力と安い労働賃金が必要です。

今の中国では、その両方の要因;条件が失われつつあります。一人っ子政策の影響で農村から供給される労働者数が大幅に減少しています。また、中国政府の施策により、労働賃金が毎年大幅に上昇しています。

このように、鴻海の事業が成立しています二つの要因;条件に変化が起こっています。鴻海は、この環境変化に対応するため、商品を自社商品として販売する方法を採用するようです。

受託生産企業は、通常顧客との間で商品企画や技術などに関して機密保持契約を結んでいます。同時に、受託生産企業は、顧客が販売している商品と直接競合するものを自社商品として販売しないことも契約しています。

この二つの条件下で、顧客は、受託生産企業に自社商品の生産を委託します。

本日の記事によると、鴻海は自社テレビについて「販売方式などが異なり、受託生産の顧客とは競合しない」(広報)と説明、画面サイズも競合相手が少ない大型品に限定し、批判をかわす構えとのこと。

この鴻海の説明が、顧客からの反発に対して有効かどうか不明ですが、通常は顧客商品と市場で競合しますので、顧客の中には上記契約事項に反すると言われる可能性があります。

鴻海は、受託生産企業ですが、今まで多くの企業の生産を行なった結果、多くの商品企画・開発に関するノウハウを持てるようになっています。

これが、鴻海が自社商品を開発・製造できる要因になります。

ソニーやシャープのような多くの国内電機メーカーが鴻海に生産委託しています。今回の鴻海の経営施策変更で、どのように対応していくか考える必要があるとみています。

国内電機メーカーが、今後、鴻海に対する対応姿勢をどうするか注目していきます。

テレビは、パソコンと同じように部品が入手できれば、どの企業でも作れる汎用化した商品になっています。

鴻海の新規参入で、テレビの販売価格がさらに下がる可能性もあります。テレビ事業そのものをさらに見直す必要性があります。

鴻海が今後も中国で量産体制を維持するかどうか不明ですが、今のやり方で安く作ることが困難になるのは確実です。

何度か本ブログ・コラムで書いていますように、国内のアパレルメーカーは生産拠点を中国から東南アジアの、労働者数が多く低賃金の国に移管しています。バングラデシュ、ベトナム、ミャンマーなどが対象国になっています。

受託生産は、相手側に技術やノウハウが流出するリスクがあります。このため、絶対に他社に生産委託しないメーカーも存在します。

キャノンやファナックが代表例になります。両社とも、技術流出を防止するために国内生産に重きをおいています。

工場の自動化を徹底的に行なって、製造コストをおさえるやり方です。これも競争力の維持と、低コスト化を同時に実現する方法の一つになります。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁


 

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