この連休を利用して、我が家のヒマラヤ杉の生垣をバッサリと刈り取りました。
理由は妻が、庭に日が当たらないので何とかして欲しいと云った事と、もう一つ前からやってみたかった事を実行する為です。やってみたい事とは「人に見られながら生活する」という事です。
昨日までは、隣家の生垣と同じ様な生垣でした。
十年近く前に、奈良でオープンリビングの家を設計しました。オープンリビングとは、道を歩く人から庭を通して家の中を見てもらう発想です。街並みに奥行きが出て環境的に良くなるのは以前から指摘されていました。しかし、家の中を覗かれるのは誰でも嫌ですので、全く普及していません。
では何故、オープンリビングにこだわるかと云いますと、エレガントな生活をしたいと云う奥様の発想がありました。曰く、「主人に家の中をパジャマ姿でウロウロされたくない、子供の躾けにも悪い。云っても聞かないので人の力を借りることにした。」との事です。
エレガントと云う言葉がキーワードになります。エレガントの対極にある言葉がワイルドです。今年はワイルドが流行語になりましたが、ワイルドは堕落にもつながります。エレガントは自分自身を躾けないとエレガントにはなれません。「手を突っ込む位置にちゃんとポケットがあるのに手を突っ込まない。」これがエレガントです。エレガントな生活をしたいとはそう云う事なのです。
私は、別の視点からオープンリビングを考えています。それは高齢者対策です。私も年が明けると58歳になります。そろそろ老後と云う言葉が気になります。個人業ですので幸い定年は有りませんが、体力や気力は確実に落ちていきます。そこで他人の視線を利用して気持ちに緊張と張りを持たせてようと考えたのです。
寝室や浴室と云った本当のプライベート空間は別として、庭やリビングは、いつ来客があっても良い様に、常に綺麗にしておきたいと云う気持ちはあります。家を汚していた子供たちも大きくなり、今では私がもっぱら叱られる対象になっていますので、思い切って人に見られる生活をしてみようと考えたのです。
云ってみれば、ホテルのロビーの様なリビングです。欧米の家ではリビングやダイニングは全くのパブリックスペースで気位の高い家は、食事の際はネクタイ着用です。
ネクタイまでは考えていませんが、人に見られて恥ずかしくない生活を心がける様になるでしょう。
それがボケ封じにつながり、人が潜む空間が無くなった為に防犯にもなり、孤独死も防げるでしょう。
一般に普及する様な、ライフスタイルになるとは思いませんが、高齢者の家造りの一つの回答になるかと考えています。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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