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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
第19回 補正要件 第3回 (2)
河野特許事務所 2013年1月15日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(月刊ザ・ローヤーズ 2012年11月号掲載)
3.最高人民法院での争点
争点:無効宣告請求過程における補正が妥当か否か
最高人民法院では、無効宣告請求過程において原告がなした補正が、新規事項追加に当たるか否か、また、審査指南で認められていない形式の補正が認められるか否かが問題となった。
4.最高人民法院の判断
争点:新規事項追加には当たらず、また、審査指南に規定されている補正形式に限定すべきではない
最高人民法院は、原告がなした補正は新規事項の追加に当たらず、また、特許後の補正形式を審査指南に限定列挙したものに限るべきではないと判示した。
(1)明細書の記載内容
最高人民法院は補正内容が新規事項追加に該当するか否かを判断すべく、明細書の以下の記載に注目した。
本案特許明細書第9頁「試験結果 表5 9種の剤量の組み合わせ及び対応する剤量比」部分には、A1I30(1:30)と記載されている。
また、「調合の血圧に対する影響」に関し「アムロジピンベシル酸塩1mg/kgと、異なる剤量のイルベサルタンとの組み合わせにおいて,イルベサルタンが30mg/kgの時だけが、安定した持続的な降圧効果を呈する。」と記載されている。
明細書第10頁「分析及び結論」には、「アムロジピンベシル酸塩1mg/kgと、イルベサルタン30mg/kgの成分は、降圧效果が安定して持続し,薬剤の使用量を比較的少なくできるため,最適な剤量組み合わせとして推薦できる」と記載されている。
明細書第10頁及び第11頁の第1実施例及び第2実施例には、錠剤調合として、アムロジピンベシル酸塩2.500mgとイルベサルタン75.000mgの組み合わせ、及び、アムロジピンベシル酸塩5.000mgとイルベサルタン150.000mgの組み合わせが開示されている。
以上のとおり明細書にはアムロジピンベシル酸塩とイルベサルタンとが1:30の調合比であってもよいこと、かつ、1:30の場合が最適であることが開示されているといえる。
以上のことから最高人民法院は、請求項を1:10~30から1:30と補正することは、原明細書及び請求項記載の範囲を超えるものではなく、また、特許時請求項の範囲を拡大するものでもないと判断した。
(2)特許後の補正形式に関する制限
審査指南によれば、補正方式は一般的状況下では、請求項の削除、併合、または、技術方案の削除に限られている。しかしながら最高人民法院は、この3つの方式の補正のみを認め、当該原告がなした補正を認めないとすれば、明細書を記載する特許権者に対する不当な懲罰になると述べた。
すなわち、本件では1:10~30を権利範囲とするところ、1:10についてはサポート要件違反という明細書の記載不備が存在し、特許権者は当該瑕疵を補正により削除する必要があった。明細書を一切誤り無く作成することは困難であり、これを認めないとするのは特許権者にとってあまりに酷であり合理性を欠くといえる。
また最高人民法院は、審査指南がその他の補正方式を絶対的に排除していないことをも根拠として、原告の1:30とする減縮補正を認めた。
(第3回へ続く)
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