日本の家は湿気や揺れとの戦い - 長寿命・200年住宅 - 専門家プロファイル

松岡 在丸
松岡在丸とハウジング・ワールド 
東京都
建築プロデューサー

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閲覧数順 2024年04月23日更新

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日本の家は湿気や揺れとの戦い

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家づくりにおいて頑丈さを考えるなら、端的に言って、トータルバランスが大切です。

私自身は柱の太さを重要視していますが、それは日本の現代建築の主流なものと比較しているゆえの議論。つまり、建物の構造躯体が3.5寸角から4寸角の柱を使った日本の家づくりと比較しているからであり、実際には柱の太さだけで家の頑丈さが決まるわけではありません。

何が家の強さを決めるのでしょう。それは、建物の構造躯体そのものの強さです。但し、一言で「強い」といっても、「柔」も必要です。日本で実際に何百年も使われている建物が数々の災害に面しても建ち続けているのは、頑丈であり柔軟でありそして湿気に強いからです。


「地震に強い」だけでは地震に耐えられない

建物の強度を考えるときに、骨格がしっかりしていることは基本的な考え方です。今日、ツーバイフォー住宅などの「壁」「面」で支える建物も少なくありませんが、壁で建物の強度を支えるというのは、骨格が貧弱な場合、あるいは骨格に頼ることができない仕様の建物の場合には大いに役立つ手法です。基本的な考え方を「面」で考えてはいけません。

日本の住宅は、湿気との戦いです。長く使われている木造建物は、湿気に強いのです。構造躯体そのものが頑丈なだけでなく、湿気にも強い。濡れても乾く。風が吹いて乾燥させる。そういう構造をしています。

建物が乾燥しやすい工法を考えると、壁の中がしっかりと調湿されなければなりません。湿っても、乾く。結露しても改善される。そういう建物である必要があります。


湿気で建物がダメになると、結果として地震にも弱くなる

そのため、調湿できる「太い無垢材」をおすすめしています。できればそうした無垢材が、真壁として室内に露出しているとよいでしょう。昔の日本の家屋は柱が室内に露出し、壁は土壁や砂壁で調湿効果がありました。湿気ても乾燥しますから、家が腐りません。ただし、冬は寒い、という問題がありました。

寒さ対策として断熱材に頼るわけですが、壁の中に湿気が溜まってしまうと、家は腐り始めます。害虫も寄り付きます。それで、見えないところである壁の中や天井裏などに湿気が溜まってしまうということを避けるような工法をお勧めしています。

また、柱だけでは建物は構成されていません。そこに屋根が乗り、サッシが付、壁が構成されていきます。それにより、建物の重量バランスが決まります。このバランスが取れていれば、建物は揺れに対して強くなります。重量バランスが悪いと、揺れによって建物に”ねじれ”が生じ、歪められて痛み始めます。


建物がねじられやすいとバランスが悪い

また、「柔」のためには、柱・梁・壁の連結方法にこだわる必要があります。日本の昔からの技術である「木組み」は、柔軟性を生かして建物を頑丈にする伝統的な構法です。今では金物による固定という技術が使われますが、金物も重要です。しかしそれが「木組み」の代わりになっているわけではありません。金物による固定は、木の組み合わせによる摩擦力や木に本来備わっている柔らかさの代わりにはならないのです。

それで私は、主要な構造躯体として使っている太い柱の連結部には木のホゾを使用して、建物の強度と柔軟性を増すようにしています。これにより、建物は一層揺れにくく、それでいて揺れても壊れにくく、壁のバランスと相まって、建物は安定します。


日本は災害の国なのだから、「夢」を追うのではなく、「守る」というマイホームが大切

台風などは、家にとっては湿気と揺れの両方による攻撃となります。日本は梅雨、地震、台風と、災害に見舞われる国ですから、乾燥しやすく、揺れに強く、そして風による影響に強い家づくりができると、建物は長く安心して使えるようになります。

建物を頑丈にするのはそれほど難しい議論ではありません。難しいのは、生活スタイルゆえに間取りを細かく指定してしまうために、間取りや設備が優先になってしまって、結果として構造躯体の頑丈さや湿気対策というところにコストをかけたくなくなってしまうという心理にあるのです。

注文住宅で安心の家づくりをしたいのであれば、基本として構造躯体が長持ちすることと、湿気、揺れに対して建物のトータルバランスが優れた対応力を見せることが大切なのです。

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