不意の大事故に誰もが何故?と感じられたと思いますが、打診点検が行われていなかったため、天井の崩落につながったと云うのが結論めいた結果となっています。nexco西日本も東日本も打診検査を行っていたのに中日本だけが、義務が無いとの理由で打診点検をしていなかったそうです。
今後打診が義務化されるでしょう。この工学に関する事後は、マニュアルに記載されているか、いないかが常に争点となります。今回の事故も打診が義務では無かったので、法的責任は問われないのではと感じています。最大の問題は打診点検するかしないかではなく、義務化されていなければしなくても良いと考える姿勢にあるのではないでしょうか。
木造住宅の場合、建築確認申請をする際、4号特例と云う制度が昭和26年の建築基準法制定以来ずっと残っています。
4号特例と云うのは、大工さんが勘と経験で日本の家を、今まで建てて来た背景があり、その慣習を法律によって制限すると社会的に混乱するから、一定の規模以下(一般住宅は含まれます)の木造建物は構造計算の申請を省略できる。としたものです。法律が制定されてから60年以上経ち社会情勢も法律制定の頃から随分と変化しているにも関わらず、構造計算を申請する義務が無いのです。
法律では構造計算をしなければならないと、一応謳ってはあるのですが、確認申請時に申請義務が無いとすれば、構造計算をしているかいないかは誰がチェックするのでしょうか。
建築確認申請だけしか、取得していない木造住宅は、二階建て以下の住宅であれば、ほぼ間違いなく構造計算はしていません。「構造は判らないからプロにお任せします」と逃げていては間違いなく構造計算によって安全を確かめていない家を建てられてしまいます。
工事契約の前にはっきりと「耐震等級2でお願いします」とか「耐震等級3が必須です」と構造等級のリクエストをしましょう。そのリクエストを満足させようと思えば、構造計算をしなくてはならなくなりますのでより安心です。
当然費用の発生が見込まれますが、今までが義務が無いと云うだけで安全が等閑になっていたのです。
義務が無いから申請しなかったで済まされてしまっては、一生が台無しになってしまいます。
このコラムの執筆専門家
- 福味 健治
- (大阪府 / 建築家)
- 岡田一級建築士事務所
木造住宅が得意な建築家。
建築基準法だけでは、家の健全性は担保されません。木造住宅は伝統的に勘や経験で建てらていますが、昨今の地震被害は構造計算を無視している事が大きく影響しています。弊社は木造住宅も構造計算を行って設計しています。免震住宅も手掛けています。
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