日経記事;『米HP、規模追求に落とし穴』に関する考察 - M&A - 専門家プロファイル

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日経記事;『米HP、規模追求に落とし穴』に関する考察

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M&Aコンサルタントとしての活動 M&Aの実行と課題

皆様、
おはようございます。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー 山本 雅暁です。

11月22日付の日経新聞に、『米HP、規模追求に落とし穴 子会社不正で巨額赤字 買収時、査定で見抜けず』のタイトルで記事が掲載されました。

本日はこの記事に関して考え述べます。

記事の主な内容は以下の通りです。
 
『米IT(情報技術)大手ヒューレット・パッカード(HP)が、昨年買収した英子会社の不正会計で巨額の赤字を計上した。不正の手口究明はこれからだが、これを見逃したHPにも責任はある。

主力のパソコン市場縮小に焦り、矢継ぎ早にM&A(合併・買収)を仕掛けたHP。落とし穴はどこにあったのか。

HPは20日、業務用ソフト子会社オートノミーの不正会計を受け、8~10月期決算で88億ドル(約7200億円)の減損処理で損失を計上したと発表した。売り上げ水増しなどの手法が使われていたという。

不正経理が社内で発覚したのは今年5月。同社の前最高経営責任者(CEO)が解任され、その後に内部告発があった。

オートノミーはHPに買収される前から経理を不正に操作。ハードウエアの売り上げをソフトウエアの販売と偽り、利益率が高いソフト部門が主導する企業との印象を打ち出す手段も使っていた。不正の目的は明らかになっていないが、HPとの買収交渉でも水増しした売上高で臨んだ。

市場はオートノミー買収を当初から疑問視していた。HPの株価は買収発表直後に急落。英フィナンシャル・タイムズは、当時から一部市場関係者がオートノミーの会計に問題があると指摘していたと伝えた。

HPは資産査定は適切だったと主張する。オートノミーは元々が英国の上場企業で、財務情報を市場に公開していた。大手監査法人デロイトなどの監査も受けていた。

HPのメグ・ホイットマンCEOは「監査済みの財務書類を頼った」という。同じ時期にオートノミー買収を検討した米ソフト大手オラクルは、提示された業績数値に疑問を感じて撤退した。

HPは不正経理を見抜けず、結果的に実際の価値よりも高い価格をオートノミーに支払った。ホイットマンCEOは買収時に取締役として賛成し、現経営陣の大半は「買収にゴーサインを出した」立場だ。

HPの経営はここ数年、混乱を極めていた。先代と先々代のCEOは不祥事と業績悪化で2代続けて突然辞任。スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット(多機能携帯端末)の普及で、主力のパソコン販売が押され、世界最大手にもかかわらず、「脱パソコン」を迫られていた。

短期間で交代するCEOは「脱パソコン」の成果をあげるため、ソフトウエアやITサービス企業の大型買収を急いだ。だが決算は8~10月期まで5四半期連続の減収。オートノミー問題の根っこには、HP経営陣の焦りがあったとみられる。』


一般的に、米国企業は国内企業よりもM&Aを通常業務の一環として淡々と行なっています。これは、新規事業の立ち上げや新規市場開拓などを短期間で行なう経営手法としてのM&Aが、多くの米国企業で常態的に採用されていることと、M&Aを支援する金融機関などの体制も整っていることによります。

国内企業の場合は、米国と比べてまだ相当異なった状況になっています。一部の大手企業を除いては、M&Aはそれほど日常化していません。

それでも、ここ数年間の間に円高であることも後押しして、大手だけでなく中堅クラスの企業によるM&A件数が増えています。

中小企業の間でも、M&Aを事業拡大や事業撤退、或いは、事業承継などのために行なう企業が増えています。

私はここ数年で何件かの中小企業のM&Aを支援してきました。その中で、今回、HPが直面したようなケースを避けるため、M&Aプロセスの中で最重要視して、最新の注意を払って行なうことが幾つかあります。

M&Aは、一般的に短期間で行なうことが基本です。これは、A社とB社がM&Aの交渉を行なっていることが外部に漏れると、双方の会社にとって商圏や信頼性などに傷がつくことが多いので、秘密裏に短期間に行なう必要があるからです。

大手企業同士のM&A案件は、記事として報道されることがありますが、このケースは、ほとんどその時点で条件が煮詰まっていて合意寸前まで来ているか、或いは、発表により優位な立場を確保するなどの思惑が働いているかのどちらかです。

通常は、M&A行為は秘密裏に行ない、公表されるのは当該行為終了後か、全ての契約行為終了後になります。

従って、例えば、中小企業同士のM&Aの場合、限られた関係者のみで秘密裏に行ない、決してその行為が関係者以外に漏れないようして実行します。

私の場合、M&Aを完了する期間は最大限3~4カ月としています。それ以上長いと、M&Aの話しが漏れるリスク、が高くなるからです。

また、M&A行為終了前に、案件情報が外部に漏れた時は、原因を特定し、相手側からのリークがあった場合、直ちにストップをかけます。

M&A行為は、買い手と売り手の双方が信頼感を持って行なう必要があり、秘密を守る、お互いにウソをつかない・相手を裏切らないことの大基本があるからです。

M&A行為を始める前に、双方は機密保持契約(NDA)を結びます。双方が、NDA締結後はそれを順守することが、M&A成功のための大基本なのです。

もう一つの大基本は、絶対にウソをつかないことです。M&A行為の過程で、相手から提供される情報に信頼が置けない、或いは、説明が合理的ない、説明がつかないなどのことを感じたり、判明したら直ちにM&A行為を終了します。

従って、M&Aを開始する時に、基本合意書を締結しておいて、上記のような事態が発生したら直ちに終了できる条項を入れておくのが重要になります。

私が支援した中小企業のM&A案件(買収行為)の中に、売却希望企業から出された情報や説明の中に信頼できないものが幾つかありましたので、途中で終了させてもらったものもあります。

M&A行為を開始すると、当事者たちは一種の興奮状態に陥りやすくなります。そこで、上記二つの大基本をもとに、厳格にかつ合理的に各種条件を確認しながら、冷静に支援先をサポートすることが私の主業務になります。

HPの場合、記事にあります情報が正しければ、通常のケースでは、HPは当該買収行為を終了すべきでした。

例えば、当時から一部市場関係者がオートノミーの会計に問題があると指摘していたとのこと。

M&A行為の中で、双方が基本合意にったした後に、デューディリジェンス(Due diligence)を行ないます。上手く変換できる日本語がないのですが、その意味は、M&A対象企業の経理・財務状況や不動産・金融商品などの資産の内容、或いは、法務的な係争案件の有無などについての詳細調査になります。

HPは、何回もM&A行為を行なってきた会社ですので、当然、デューディリジェンスは行なっています。

しかし、オートノミーの不正行為を見抜けませんでした。オラクルは、オートノミーの提示された業績数値に疑問を感じて撤退したとあります。

事実なら、HPは通常では考えられない判断ミスを犯したことになります。一因が、記事にあります経営陣の混乱であれば、不幸なことです。

これは、M&A以前の経営問題になります。中小企業のM&Aで同じようなことが起こったら、この企業は倒産します。

何故、HPのようなM&Aに習熟した大企業でこのような問題が起こったのか、今後の報道情報に注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバル・ビジネスマッチング・アドバイザー GBM&A 山本 雅暁

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