米国特許法改正規則ガイド 第9回 (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド 第9回 (第1回)

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米国特許法改正規則ガイド

第9回 (第1回)

当事者系レビュー(IPR)についての規則改正

河野特許事務所 2012年11月5日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

 USPTOは2012年8月IPRについての最終規則を公表し、予定どおり2012年9月16日から本制度の運用を開始した。既に数多くのIPR申請がなされているとのことである。以下に最終規則を含めたIPRのポイントを解説する。

 

1.概要

 IPRとはPGR申立期間の経過後に、刊行物に基づく新規性及び非自明性欠如を理由として、クレームの無効を申し立てられた場合に、審判部がクレームについてレビューを行う制度をいう。

 

2.請求人適格

 特許権者以外の者が請求することができるが(311条(a))、匿名での請求ができず、全ての実際の利害関係当事者を特定することが必要である(312条(a)(2))。

 また以下の者は請求が認められない(規則42.101)。

(a)レビュー請求が提出される日以前に、請求人または利害関係のある実際の当事者が、当該特許クレームの有効性を争う民事訴訟を提起している場合。

(b)手続を要求する申し立てが、申立人、申立人の利害関係のある実際の当事者、または申立人の利害関係人が特許侵害訴訟を提起した日から1年を超えて提出された場合。

(c)申立人、申立人の利害関係のある実際の当事者、または申立人の利害関係人が、請求において特定される理由について当該クレームを争うことに関し禁反言が成立している場合。

 

3.客体的要件

 米国特許法第102条(新規性)または第103条(非自明性)に基づき、かつ、特許または刊行物からなる先行技術のみに基づき、ある特許における1または複数のクレームを特許不可として削除することを請求できる(311条(b))。すなわち、IPRは新規性または非自明性を理由とし、かつ刊行物のみが証拠とされる点で、いかなる理由でも取り消しを請求することができるPGRより狭い。

 

4.時期的要件

 IPRの申し立ては以下のいずれか遅い方の後に提出しなければならない(311条(c))。

 (1)特許の発行または再発行特許の発行の9ヶ月後、または、

 (2)PGRが第32章に基づき開始されている場合、当該PGRの終了した日

 すなわち、特許発行後はPGRが優先され、PGRの申立期間を経過した後、またはPGR終了後に初めてIPRを申し立てることができる。

 

5.IPR開始基準

 長官は、申立人が少なくとも一つの争点となっているクレームにおいて優勢(prevail)であるという合理的見込み(reasonable likelihood)があることを示した場合、IPRの開始を決定する(314条(a))。

 

6.他の訴訟との関係

(i)特許有効性に関する民事訴訟との関係

 IPR申し立て日前に、申し立て人が特許のクレームの有効性について争う民事訴訟を提起している場合、IPRは開始されない(315条(a)(1))。

 申立人が、IPRを提出する日以降に特許のクレームの有効性を争う民事訴訟を提起した場合、当該民事訴訟は自動的に中断される(315条(a)(2))。

(ii)特許権侵害訴訟との関係

 申立人が、特許権侵害訴訟を提起した日から1年を超えて、IPRを申し立てた場合、時期遅れであるとして、IPRは開始されない(315条(b))。

 

7.IPRと禁反言

 IPRの申立人は、特許庁に対し、申立人が既にIPR手続で主張し、または、合理的に主張し得た何らかの理由に基づいて、当該クレームに関する手続を要求または維持することができない(315条(e)(1)。

 また、IPRの申立人は、民事訴訟、または、ITCにおける手続のどちらかにおいて、当該クレームが、申立人がIPR手続において既に主張しまたは合理的に主張し得たであろう何らかの理由によって無効であるとの主張することができない(315条(e)(2))。

 

8.料金

 規則42.15(a)に規定する料金を添付してIPRの申し立てを行わなければならない(規則42.103)。料金が支払われるまで、申し立てに対する提出日は付与されない。

 IPRの料金は$27,200であり、争点となるクレーム数が20を超えた場合、クレーム1つごとに600ドルが加算される(規則42.15(a))。

 

9.IPRの記載的要件

 IPRの申し立てに際しては、以下の記載が必要とされる。

(a)当事者適格の理由。申立人は、レビューが求められる特許に対しIPRが可能であることと、申立人が、申立書において特定された理由により特許クレームに対し行うIPR請求を、または、禁反言により制限されたりしないこととを明確にしなければならない。

(b)争点の特定。争われるクレームの各々について請求された正確な救済手段(relief)に係る陳述を提供すること。当該陳述は以下を特定しなければならない。

 (1)クレーム

 (2)クレームに対する争点が依拠する米国特許法第102条または103条に基づく特定の法定理由、及び、各理由が依拠する特許または刊行物

  (3)争われたクレームがどのように解釈されるか。解釈されるクレームが米国特許法第112条(f)に基づき許可されるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクション限定を含む場合、クレームの解釈は、各クレームされた機能に対応する構造、材料または作用(acts)を記載した明細書の具体的部分を特定しなければならない。;

  (4)どのように解釈されたクレームが、本セクションパラグラフ(b)(2)にて特定される法定理由に基づき特許性を有しないか。

 (5)争点及び提起された争点に対して当該証拠の関連性をサポートすべく依拠された証拠の添付書類番号。

 

10.予備反論

(i)予備反論の提出

 IPRが申し立てられた場合、特許権者はIPRを開始すべきでないという反論理由を記載した予備反論を提出する権利を有する(313条)。

(ii)期限

 予備反論はIGRを開始後3月以内に提出しなければならない。なお、特許権者は予備反論を放棄することも可能である(規則42.107)。

(iii)補正の禁止。

 予備反論において、補正は認められない。

(iv)クレームの放棄

 特許権者は、規則1.321(a)( ターミナルディスクレーマーを含む法定の権利の部分放棄)に従い米国特許法第253条(a)に規定する法定の放棄を提出することにより、当該特許の一または複数のクレームを放棄することができる。なお、放棄されたクレームに対してはIPRが行われない。

 

11.特許権者の反論

 特許権者は、IPRの申し立てに対し、反論を提出することができる。特許権者の反論は異議(opposition)として提出され、規則42.24に規定するページ制限の対象となる(規則  42.120)。申し立てに対する特許権者の反論を提出する日が審判部において命じられていない場合、基準となる特許権者の反論提出日はIPRの開始から3月である(規則42.120)。

 

12.特許の補正

  特許権者は審判部と協議した後に限り特許の補正を1回申請することができる(規則42.121)。

 (i)補正の時期

 審判部の命令において期限が設定されている場合を除き、補正の申請は特許権者の反論の提出前になさねばならない。

 (ii)補正の範囲

 補正がトライアルに係る非特許性の理由に対応するものでない場合、または、補正が特許クレームの拡大を求めている場合若しくは新規事項を追加している場合認められない。

 (iii)代替クレームの数

 補正の申請により、争点となっているクレームのキャンセル、または、合理的な数の代替クレームの提案を行うことができる。争点となっている各クレームを置き換えるために必要な代替クレームは一つのみであると推定される。なお、当該推定は必要性を示す事により反証することができる。

 (iv)補正の内容

 クレーム補正の申請はクレームのリストを含まなければならず、変更点を明確に示さなければならず、以下を説明しなければならない。:

 追加または補正される各クレームに対する元の特許の開示におけるサポート;及び

 先に出願された開示の出願日の利益を得ようとする各クレームに対する先に提出された開示におけるサポート

 (v)補正の追加申請。

 補正の追加申請は、米国特許法第317条(調停)に基づく手続の調停を実質的に促進するために申立人及び特許権者双方が共同で要求した場合、または、長官が規定し規則に基づき許される場合(正当な理由がある場合)に、認められる(316条(d)(2))。

 

13.IPRにおけるレビュー

 ディスカバリが行われる。ただし、当該ディスカバリは以下に限られる。(316条(a)(5))

  (A)宣誓供述書または宣言書を提出する証人のデポジション;及び

  (B)その他、司法手続上必要なもの

 審理はPTABがおこなう。審理において、申立人は、証拠の優越preponderance of the evidenceに基づき非特許性の主張を証明する義務を負う(316条(e))。これは裁判所で要求される証拠基準、「明確かつ説得力ある証拠clear and convincing evidence」よりは低い。

 なお、PGRにおけるトライアル手続の詳細については章を改めて説明する。

 

14. 調停

 IPRは申立人と特許権者との共同調停要求により、終了する。なお、調停の場合、米国特許法第315条(e)に基づく禁反言は、生じない(317条)。

 IPRの終結に関連して、またはIPRの終結を予期して、特許権者と申立人との間で交わされた契約または合意(契約または合意において言及された付随契約事項もすべて含む)は、書面によらなければならず、両当事者間においてIPRを打ち切る前に、契約または合意の真正な写しを特許庁に提出しなければならない(317条(b))。当該手続の当事者が要求すれば、上記契約または合意は事業機密情報として扱われ、関連特許書類とは別に保管される。また、連邦政府機関が書面で要求した場合のみ、または正当な理由を示した者にのみ、開示される。

 

15.IPRの結果

 PTABが書面によりクレームの特許性に関し決定をおこなう(318条(a))。IPRは審判部に継続してから原則として1年以内に結論が下される(規則42.100(c))。ただし、審判部により最大6月の延長が認められ、また審理併合の際には審判部により適宜期間が調整される。

 

16.IPRと中用権

 最終決定に基づく証明書発行前に、提案補正クレームまたは新規クレームにより特許された物を米国内で使用、製造もしくは購入し、または米国内に輸入する者、或いは、実質的にその準備をしている者には、中用権が発生する(318(c))。すなわち米国特許法第252条(再発行の効力)で認められているのと同様に、衡平法(Equity)の観点から認められるものである。

 

17.不服申し立て

 PTABの決定に対してはCAFCに控訴することができる(319条)。

 

18.施行時期

 2012年9月16日施行済みである。IPRは施行日前、施行日、及び施行日後に発行された特許に適用される。

 

(第2回へ続く)

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