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村田 英幸
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閲覧数順 2016年12月02日更新

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労働協約により従業員の退職金を減額できないとされた裁判例

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【コラム】判例研究(香港上海銀行事件 最判平成元・9・7労判546号6頁)

(ⅰ)事案

 XとY銀行に臨時従業員として雇用されました。XY間の労働契約においては,雇用期間が定められ,契約更新されることが定められていましたが,退職金については,昭和55年6月30日に退職したものとみなして同日支払う旨が定められていました。また,Y銀行の就業規則には,退職金に関し,「支給時の退職金協定による」と規定されていました。

ところが,Xの退職時に退職金協定が失効していました。その後,Y銀行は多数組合との間で新たな協定を締結し,この協定がXに遡及適用されることを主張しました。新協定は,旧協定に比べて,退職金が減額される内容となっています。

(ⅱ)争点

① 具体的権利としての退職金請求権は発生しているのか

② これを事後に締結された労働協約の遡及的適用により,処分,変更することができるか

(ⅲ)判旨及び解説

 まず,①について,XY間の労働契約においては,その退職日とされる昭和55年6月30日に退職金を支払うとの約定がされ,一方,就業規則には,退職金は「支給時の退職金協定による。」と定められているところ,労働契約上は,退職時に退職金の額が確定することが予定されているものというべきであるとしました。そして,就業規則の規定も,Y銀行が退職金の支払義務を負うことを前提として,もっぱらその額の算定を退職金協定に基づいて行おうとする趣旨のものであると解されるから,具体的な退職金請求権も発生しないと解するのは相当でないとしました。

 この判旨によれば,退職日および退職金を支払う旨の合意が会社との間で認められ,就業規則に,退職金は「支給時の退職金協定による。」と定められていれば,具体的権利としての退職金請求権が発生していると考えられます。

 次に,②については,既に発生した具体的権利としての退職金請求権を事後に締結された労働協約の遡及適用により処分,変更することは許されないとしました。

 なお,この判例は,後に「具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約や事後に変更された就業規則の遡及適用により処分又は変更することは許されない。」という形で引用されています(最判平成8・3・26労判691号16頁)から,退職金に限らず,具体的に発生した賃金請求権について,労働協約に限らず,就業規則によっても遡及的に処分,変更することは許されないと解釈されます。

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